【専任教員の紹介の目次】

ちの のぶゆき

茅野 信行

四輪車事業に乗り出しました。しかし、二輪車とは違い四輪車は失敗の連続でした。ホンダは軽四輪市場の成長力に賭け67年N360を発売しました。このホンダ版モーリスミニは大人気となり売れに売れました。ことろがこのN360は、欠陥車騒ぎで訴訟を起こされ販売はガタ落ちになりました。加えて、新開発のH1300セダンとクーペの販売不振が続いており、社内では「もう四輪車から手を引くべきだ」との声があがりました。「今度だめなら四輪車は諦めよう。しかし最後に1台だけ作らせてやろう」。
 こうして誕生したのがシビックでした。シビックは低燃費と最低限の居住空間を備えた小型車として人気を博しました。その後、ホンダは当時、世界一厳しい排ガス規制であったマスキー法を、複合渦流調速燃焼エンジンで見事にクリアし、その技術力の高さを米国市場に印象づけました。シビックの後継車アコードがワールドカーとして認知され、ホンダの四輪車事業はようやく軌道に乗ったのです。
 本来、自動車事業はリスキーであり、また3万点に及ぶ部品からなっています。組立作業の一部がロボット化されても「分業に基づく協働という」自動車製造の基本は不変です。
 この事例からも経営学の基礎である顧客創出、マーケティング、イノベーション、モチベーション、それに社会的責任等について知ることができます。経営学は体系的に研究し、学び、教えることのできる実践的な学問であると言えます。

 経営学の対象である企業は、つねに消費者ニーズの変化に迅速対応しなければなりません。消費者ニーズの変化を生み出すものに経済的・政治的・技術的・社会的・人口統計的、の5つの要因があります。これらの要因が変化すると、消費者ニーズが一変します。そのニーズの変化を先取りし競争に勝ち残るためには企業は何をすればよいか。それを考えることが経営学を学ぶ出発点です。
 ホンダを例に引いて説明しましょう。ホンダは世界最大の二輪車メーカーであり、最も個性的な四輪車メーカーの一つで、年間325万台の四輪車と1048万台の二輪車を世界中で販売しています。ホンダは「人間尊重と三つの喜び」:「作って喜び」「売って喜び」「買って喜ぶ」をモットーに二輪車メーカーとして出発し、小型・軽量・高性能のエンジンを武器に国内の二輪車市場を席巻しました。
 そしてホンダは1962年1月、積年の夢であった