【専任教員の紹介の目次】

なかいずみ まき

中泉 真樹

 「命は地球よりも重い!」
 昔、あるハイジャック事件の折に、首相であった福田赳夫という人が言った言葉です。これには象徴的な意味もあるけれど、意地悪く解釈すれば次のようになります。「この世の中のためにぜひ必要な人が病気になった。さあ大変。地球上の優秀な医師や医療機器などを全部集めてこの人の命を救おう!」でも、そんなことをしたら、他にもいるかけがいのない人の命はどうなるのでしょうか? ここにも命の選択の問題が登場します。

 経済学は選択の学問
 経済学はお金(儲け)に関する学問だと思っていませんか? それは少し勘違い。経済学は人間の選択、そして社会の選択に関わる学問です。何かを選択することは何かを犠牲にすることです。この事実の究明こそ経済学の中心的な課題であり、健康や医療をめぐる問題もその大事なテーマのひとつなのです。

 「皆さんは病院に行くと健康保険証を出しますよね。そうすると安くなりますね。よく医療費の自己負担率のことが問題になりますが、これが上がると私たちの負担が大きくなるだけなのでしょうか。保険医療って本当に正しく機能しているのでしょうか。この授業では保険医療の仕組みに関する身近なテーマを討論形式で学びます。」
(『医療の経済』)

 『世界の中心で愛を叫ぶ』
 片山恭一原作の小説です。少し前だけど映画化され、テレビドラマにもなりました。お話は10代のピュアな恋愛物語といったところだけど、ここでとりあげたいのは、命の選択の問題。主人公のサクは重い白血病になってしまった恋人のアキを病院から連れ出すという究極の選択をします。もし、そのまま病院にいればもう少し生きたかもしれないし、その間にもっと効き目のある薬が開発されたかもしれない。それらの可能性をすべて犠牲にするのです。もちろん、このお話はフィクション。病気や怪我との闘いの現場では、切実な命の選択の問題が絶えず起こっていると考えるべきです。