【専任教員の紹介の目次】

ねぎし たけひろ

根岸 穀宏

 こうした政府の活動の規模は、時代に合よって、また同じ時代でも国によって異なります。なぜなら、それぞれの国ごとに歴史や文化が異なるだけでなく、社会環境、経済的豊かさ、ライフ・サイクル、価値観などが異なるからです。
 よく耳にすることですが、1990年代に、積極的な財政政策を行ったこともあって、日本は巨額の借金を抱えています。国と地方を合わせた長期債務残高は、773兆円(2007年度末)に達する見込みです。また、07年度の国の予算(一般会計)を見ると、景気拡大が続いているとはいえ、歳入総額82.9兆円のうち、25.4兆円(30.7%)を借入に頼る予定です。歳出のうち9.5兆円を利払いにあてますが、これを1日あたりに換算すると、261億円、1時間当たりでは11億円になります。ところが、租税や社会保障などの負担を示す国民負担率を、日・米・英・独・仏・スウェーデンの6カ国について比較すると、日本は米国に次いで低い方から2番目に位置します。
 急速に進む高齢社会の中で、私たちはどのくらい税や社会負担を受け入れ、どんな政府の活動を必要とするのでしょうか。これを考えるには、どういった社会をイメージするのかが重要になります。「小さな政府」?「大きな政府」?それとも....

 財政は政府の経済活動と言われます。公的部門と民間部門という呼び方があるように、政府(財政)は私たちの経済社会の中で大きな役割を担っています。政府は、役所での行政サービスだけでなく、第1に、個人では購入できないが、生活に必要なものや、生活をより便利にするもの、例えば、道路や橋、上下水道、公共施設、港や港湾施設、警察・消防の活動、義務教育などを提供します。これは財政の資源配分機能と呼ばれます。
 第2に、私たちが安心して暮らせるように、社会保険(年金・医療・介護・失業)や福祉(最低生活の保障)を提供します。これは財政の所得再配分機能と言われます。第3に、失業者が著しく増えたり、物価が大きく変動することを出来るだけ抑制するために財政・金融政策を実施します。これは、財政の経済安定化機能と呼ばれます。