『平成11年度 國學院大學学術フロンティア構想「劣化画像の再生活用と資料化に関する基礎的研究」事業報告』
平成11年度事業概要
経緯・経過
文部省学術フロンティア事業の一環として、國學院大學学術フロンティア構想を企画、表記研究を実施した。この事に伴い、國學院大學学術フロンティア運営委員会を組織し、運営方法・組織編成等の決定を実施、さらには同実行委員会において運営内規の評議とコンピュータシステム構成・資料化についての検討を行った。
大場磐雄関連写真資料の数量的把握
学内に存在する大場資料についての実態が不明であり、この事は今後のデジタル化作業に不可欠と考えられたので、数量的把握を行った。その結果、乾板計3704枚(うち手札版3152枚、キャビネ版551枚、四切版1枚)、フィルム計573枚が確認された。また、これらの資料については、整理用ナンバーを添付した。
大場磐雄関連写真資料の劣化状況調査
ガラス製写真乾板は物理的(われ、かけ)・化学的(結晶化・酸化)・生物学的(かび)な影響によって劣化するケースがあり、この事は大場資料に関しても今後のデジタル化作業や資料の保存環境を整備していく上で極めて重要な問題であった。平成11年度では基本的な保存状況を調査し、基本認識を打ち立てた上で今後の保存・修復作業へつなげていく必要性があった。当資料はガラス面に水分が付着した事によるアルカリ分の抽出(結晶)や、この事がさらに進んで乳剤層を軟化、剥離させたりといった事例が確認された。また、ほとんどの資料で画像を形成する銀粒子が酸性の雰囲気や湿度によって局部的に酸化した事による銀化(ミラーリングが)が確認された。
大場磐雄関連写真資料のデジタル化
劣化していく状況にある写真資料を現状の状態で記録化し、学内に留まって過去に公開されていなかった状況から、広く一般へ公開され、活用される事を目的として資料のデジタル化を実施した。方法としては乾板をスキャナーから読み込み画像情報化し、さらにこれを文字情報も含めて検索可能なデータベースとして構築し、DVD-RAMに登録した。このデータベースはキーワードや地形図上からも検索できるものであり、将来的に外部からアクセス可能なものとして活用される。また、保存・修復上のカルテとなる管理情報も含まれている。全体数のうち、およそ800枚の画像データを登録した。
講演会等の開催
当事業に関連して、講演会・座談会を企画した。平成11年11月18日には大場磐雄を中心に昭和25年から行われた、長野県平出遺跡調査を中心に、同調査に参加した稲生典太郎・林陸朗・小出義治の各氏を招き、『大場磐雄先生の思い出−平出遺跡を中心に−』と題した座談会を開催した。平成12年3月25日には静岡県登呂遺跡と大場磐雄との関係をテーマに、大塚初重氏を迎えて『大場磐雄博士と登呂遺跡』と題した講演会を実施した。