『平成13年度 國學院大學学術フロンティア構想「劣化画像の再生活用と資料化に関する基礎的研究」事業報告』

柴田常恵氏資料について


 國學院大學では、明治後半から昭和前期にかけて活躍した考古学・文化財保護行政の専門家である柴田常恵氏の調査関係資料を保管している。この資料は氏と交流の深かった大場磐雄博士が、國學院大學文学部教授時代に柴田氏の遺族から購入されたもので、プリント写真を貼付したアルバムと、B6版サイズを中心としたフィールドノートから構成されている。現在、学術フロンティア事業実行委員会ではこの資料のデータ化を実施しており、ここではその進行状況について概説する。

フィールドノート フィールドノートのデータ化について
 フィールドノートは総数82冊が数えられる。これらは現在、Excelによって記述内容の表化作業を実施している。フィールドノートはその性格上、本人のみが理解可能なメモ書きが多かったりするために、コンテクストを共有しない第三者にはその内容を把握しにくいケースが多い。柴田資料もその例に漏れず、読解作業は困難を極めている。
 作業内容は、まずフィールドノートに記載された日付と調査地を読み取り、柴田氏の足跡を年代別に辿れる表を作成する事にある。ノートの表紙端部分には、ノートの整理番号と考えられる番号を記載したシールが貼付されており、さらに部分的ではあるが、中表紙にノートが使用されたと考えられる年代を記した附箋を挿んでいた。このため作業はある程度順調に進行すると考えられた。ところが、実際に読解作業に取りかかってみると日付が記載されていない例が多く、調査地も村名・字名程度しか書かれていない場合もあり、これらを特定する事が難しい。過去、この資料が大場博士ないしはそれ以外の人物によって整理されていた形跡があり、挿まれている附箋もこれに関わるものと考えられた。だがフィールドノートの内容と照らし合わせると、この附箋は柴田氏が実際に調査でこのノートを使用した年代を表している訳ではなく、ノートによっては別の整理者によって後から整理された年代が記載されているなど、附箋のメモについての信頼性が必ずしも高い訳ではなかった。
 このような理由から整理作業方針を若干転換し、ノートを一度に年代順に並べるのではなく、まず記載されている「記述内容」、「日付」、「調査地」、「備考」の4項目について、解釈を加える事なしに表に記載する事とした。「記述内容」の項目には、ノートに記載された内容の要点を抜き出し、纏めた。「日付」、「調査地」の項目は明確に記載されていない場合も多く、ノートに日付が記載されている場合もそれが意味する事についての判断が極めて難しい。
 ノートには文化財を対象とした多くのスケッチが残されているが、「記述」と関連して描かれている場合には「備考」にこの事をチェックし、スケッチのみの場合には「記述内容」の項目にこの事を記してある。このように別けたのは、セル内の項目の煩雑化を避けるためである。しかし問題点として、「記述内容」の項目の定義付けが今のところ難しいために、内容が「備考」と重複してしまう事が挙げられる。

撮影された文化財 撮影された文化財
撮影された文化財

写真資料のデータ化について
 フィールドノートの整理作業と併行して、写真資料のデジタル化を実施している。すでにフォトファイル3冊分についてスキャナーで取り込み、CD-ROMに保存を完了している。
 写真資料はスキャナーを用いて600dpi、24bitRGBカラーのTIFF形式で取り込んでいる。また、このデータをWeb上で公開するために、長辺600ピクセルに解像度を落とし、JPEG形式に変換した別データも作成している。後者について、資料の退色等劣化によって画像内容の判別がそのままでは難しいものについては、JPEG形式に変換する際補正作業を施した。前者のTIFFファイルについては補正化作業を実施していない。これは作業量の大きいTIFFファイルに関しては、データをスキャニングする際に1点づつ補正作業を行うよりも、まず劣化が進行しつつあるオリジナルの資料を早くデジタル化し、全体のデータ量を把握する事が先決と考えたからである。実際、この方が効率的である。
 写真画像を取り込む範囲は、画像が映っている部分のみをスキャニングするのではなく、写真の縁の部分までを含めてデータ化している。これは資料の持つ情報を少しでも損なわないようにするために他ならない。
 写真の裏面には撮影期日ないしは調査期日と考えられる日付や、ロケーションについての記載が少なからずあり、これらは別に表化した。フィールドノートとの比較を実施する必要があろう。

まとめ
 これらの作業は継続的に実施される計画であり、また柴田氏記述した文献や東京大学総合研究博物館等に残されている写真資料等とも比較作業を実施する必要がある。柴田氏は考古学のみならず、旧法制下における文化財保護行政の担当者であったが、その仕事は残されたフィールドノートの記述や写真資料からもうかがい知る事ができる。広汎な分野に及ぶ氏の足跡についてはかつて大場磐雄博士が注目しているが、その全体像に迫るのはこれからの課題であろう。
(野口敦己・山内利秋)



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