柴田常恵は、明治後期から昭和後期にかけて活躍した考古学者で、文化財保護行政に深く関わった人物でもある。國學院大學には、柴田が残した写真と新聞の切り抜きが貼付された26冊のアルバム、調査の際に使用した82冊のフィールドノート、拓本、調査旅行日記のノートからなる資料が所蔵されており、学術フロンティア事業実行委員会では、昨年度からこの柴田常恵資料のデータ化作業を実施している。昨年度に行った作業は、この資料の全体像を把握し今後の方針を決定するための、試験的・予備的なものであった。今年度は昨年度の作業の結果に基づいて方針を決定し、実質的な作業に取り掛かった。ここでは、今年度の柴田資料整理作業の内容及び進行状況について報告する。
整理作業は、拓本と調査旅行日記については留保し写真資料(アルバム)とフィールドノートについて、平行して行った。
写真資料については、印刷やWeb公開といったさまざまな活用方法への対応を考慮し、情報化を図った。
まず、写真は全てスキャナーで取り込み、解像度600dpi・24bitRGBカラーのTIFF形式で保存した。アルバムには元々通し番号が付されていたが、パソコンに取り込むに当たっては扱いやすくするため、県ごとに独自のファイル名と通し番号をつけ整理した。また、写真の裏書きの読み取りも行った。これらの通し番号・写真の裏書きは、対照表を作成し、写真の検索・整理等の利便を図った。
次いで、Web公開のため、解像度600dpiで取り込んだ画像情報を、150dpi(長辺700ピクセル・JPEG形式)に圧縮する作業に取り掛かった。同時に、データのバックアップのため、DVD-RAMに焼き付ける作業も実施している。
フィールドノートについては、当初、昨年度の成果を引き継いで、記述内容のWeb公開に先駆けて目録の作成を目指した。しかし、ノートの性格上断片的なメモ書きや対象不明のスケッチなどが多く、目録の作成は延期せざるを得なかった。従って、現在はノートの内容を詳細に読み起こす作業に変えている。
次年度の展望・予定は以下の通りである。写真資料については、Web公開を目指している。これは次年度の早い段階で実現可能である。フィールドノートについては、解読作業を継続する。同時に、解読を終えたものについては内容を特定(調査地・日付等)させ、表を作成して情報をデータ化する。
(田中秀典)