平成19年度科学研究費補助金基盤研究(B)
課題番号 19320104

日本における護符文化の解明─科研研究の方向性とその方針─



研究の目的
 平成14〜18年度の21世紀COEプログラム「神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成」の事業と、平成15〜17年度に実施した「護符の文化的・社会的意味に関する基礎的研究」の調査研究により、護符の有した意味についての共通理解が深まった。そして寺社が過去に発行した護符の版木が各地にまだ大量に保存される一方、それが急速に失われつつあることも明らかになった。また起請文の料紙に用いられた牛玉宝印の調査も、飛躍的にその精度をあげることに成功した。本研究はこれらの成果を受け、
 (1)アンケート調査や実地調査を通じた護符および版木に関する網羅的な資料収集とその分析
 (2)起請文料紙牛玉宝印に関するさらに多くの情報の収集とその分析
 (3)日本の護符のコレクションを有する外国の機関・研究者との研究上の連携をより一層強くし、日本の護符に関する国際的研究基盤を確立すること
 の3点を主要な柱として研究を進める。それにより、護符研究の基盤を一層確かなものとすることを目的とする。





平成23年度科学研究費補助金基盤研究(C)
課題番号 23520830

中・近世起請文の様式についての研究



研究の目的
 平成21年度(2009年度)まで続けられた「日本における護符文化の解明」では、様々な調査・研究を行い、その研究成果の主要部分は、『日本の護符文化』(千々和到編、2010年7月、弘文堂)で明らかにした。また、その研究の成果は、2011年3月にパリのコレージュ・ド・フランスで開催された国際シンポジウム「おふだーー日本の神仏の御影」の中でも重要な話題として提供された。
 ところで、そもそも私たちがなぜ日本の護符に着目したかといえば、それは、前近代における日本の護符の中で、もっとも多く残るものが、起請文という誓約の文書の料紙に用いられる牛玉宝印だったからであった。牛玉宝印を包む豊かな護符文化の様相については、これまでの研究の中で一応の議論ができたと思う。  そこで、これからは、起請文の研究を中心に据えて検討を加えたいと考える。

 平安時代末に発生した起請文という誓約の文書は、「誓約文言+罰文」の形で明治維新まで連綿として作り続けられていたように考えられているのではないか。だが当然のことながら、起請文にも生成から消滅までの間には、何段階もの様式の変化があり、その様式の違いには書き手の信仰や意識の違いが籠められているものと考えられる。
 そこで本研究では、従来ほとんど顧みられることのなかった起請文の様式の変化を、歴史の中で具体的に跡づける作業をおこなうことにしたいと考えている。そうした作業、研究の中で、たとえば貞永式目末尾の起請文から始まるとされる「式目型神文」の広がりや、「霊社上巻起請文」という特異な起請文様式の意味も、明確にすることが出来るのではないかと考えている。