有機農業についてのメッセージ


久保田裕子は、有機農業についての映画会とトークショーを実施しましたが、今回の催し物の意義などについて次のようなメッセージを書いております。

* * * * *

2008年1月10日に上映した映画「津南高原生産組合と辻堂団地食品の会・記録」の解説は、以下の通りです。

 日本の有機農業は、農家と消費者がじかにつながり、協力してすすめる「提携」(産直・共同購入方式)で発展してきました。1970年代初頭、各地でこうした活動が立ち上がった。なかでも、この津南高原生産組合辻同団地食品の会の産直は、その後の有機農業運動を切り拓く大きな原動力となりました。加えて、この記録映画が果たした役割も少なくありません。当時、記録映画として絶賛されましたた。消費者運動が華やかだった頃で、73年に朝日新聞社が開いた上映会には主な消費者団体の活動家たちが集まり、「安全な食べもの」と有機農業との関連、産直・提携という流通方法について大きな示唆を与え、その後の運動を方向づけることになりました。

* * * * *

1月17日に開催したトークショー趣旨は、以下の通りです。

 日本の有機農業運動は、1970年代に始まりました。そのキーワードは「自給」と「提携」です。有機農業の基礎ともいえる農場内での堆肥づくりは、堆肥の自給であり、自家採種は、作物の生命を次代へつなぐ種子の自給です。農家の食卓の自給は、生産者と消費者の「提携」活動を通して、都市の消費者の食卓につながっています。有機農業の意義や課題について、おふたりの実践者からお話をうかがいます。

 1月10日には、1972年に制作されて当時話題になった、有機農業の生産者と消費者の「提携」(産直・共同購入方式)の記録映画の上映、1月17日には、「環境と有機農業」と題するトークショーで、栃木で実際に5ヘクタールの有機米づくりをっている有機農業生産者舘野廣幸さんと、70年代から食の運動を実践してきた提団体の白根節子さんに現場の話を話していただきました。対象は、主題講座「環境と人間07」(久保田担当)を受講している4学部の1〜4年生約200人です。

 その感想文を読んで、「ひじょうによかった」というものが多く、「じかに農家の人の話が聴けて新鮮だった」、「70年代から消費者運動をやってきた人の話は先週みた70年代の映画の世界から抜け出てきたようで迫力があった」、「これまでの授業のまとめとして生の話がよかった」・・・・など、熱心に聴いていた感想が書かれていて、ほっとしたと同時に、今後もこのような企画を続けたほうがよいのでは、と思いました。

 実際、有機農業の実践農家が話すことには、説得力があります。「農薬(殺虫剤)では、害虫だけでなく益虫であるクモが真っ先に死んでしまう」「虫が死んでしまうので、それをえさにしている鳥が少なくなってしまう(鳥は害虫も食べる)」という話は、そう言われればそうだ、という話ですが、「クモは、触ってみると、ぷよぷよして体がやわらかいですよね」とかと言われると、そういえば、クモなど触ったことがない、ということに気づきます。

 また、消費者サイドからの話で、「提携」では、農家からじかに農産物を運んだり、それを料理したりという食生活をしているということが話されました。現代は、食料品も弁当も、スーパーや店で買うものとなっていて、今の学生たち若い人は、そうした食生活から遠ざかっているのが実情です。・・・ゼミ合宿で自炊したら、「おにぎりを、初めてつくった」という男子学生がいて、びっくりしました。・・・農家から話をきいたり、さらには、実際に田畑・農村を訪問して土に触れてみることが大切だと思います。

 農政が依然として大規模農業志向であるために、伝統的な家族農業や中小規模農家がどんどんなくなっていっています。田んぼを守るにはお米を食べる食事をしないと守れないし、地域・国内の農林水産業の盛衰食のあり方と密接につながっています。そのことを認識して食料品を買ったり、食べたりしないと、”のどかな農村風景”も残らないということです。現代は、そういうことを意識にのぼらせていく機会をつくっていかねばならない時代になっているともいえます。

 05年には食育基本法ができ、06年12月には有機農業推進法ができて、行政サイドからも関心が高まってきていますが、より総合的な、そして歴史文化をふまえた内容からのアプローチが望まれます。

2007年後期に戻る1月の活動報告に戻る