しきしまのやまとのくにに人ふたり有りとし念はばなにかなげかむ これは和歌ですね。どういう意味でしょう?漢字を当てると、こうなります。 敷島の日本の国に人二人有りとし思はば何か 歎かむ
「敷島の」は枕詞。ヤマトにかかる。「とし」の「し」は強めの助詞。「人二人ありと」を強調したい。「何か」は反語。「む」は推量・意思の助動詞。ここまではすらすらわかりましたね。 |
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「おもはば」のところを文法的に説明してみましょう。「思は」は「思ふ」(「もふ」と読みます)の未然形、「ば」は助詞、そう、順接仮定条件を表すのでしたね。未然形+ば は、古文では、〜ならば、とか、〜だったら、と訳します。ではあの作家は何を間違えたのでしょう。「人二人有りとし思へば」と混同しているのです。 |
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それでは、「思はば」を仮定条件で訳したら、どんな恋の歌になるのでしょうか? |
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恋の和歌では、「人」は、ほかならぬあのひと、という意味になる場合が多い。また得恋の歌はほとんどなくて、いくら慕っても実らない、たとえ一晩一緒に過ごした後でも、あなたから愛されている確信がない、と歌うのが常道なのです。 |
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古典はきらいじゃないけど、文法がめんどうくさくて、と思っているあなた、文法はもっと豊かな世界をひらいてくれるためにあると思って下さい。古典の時代の言葉は現代の我々が使っている言葉よりももっと論理的で、もっとこまかくニュアンスを言い分けることができました。大学で読む古典の世界は、多分、はてしなく広く、思いがけないものになるでしょう。ちなみに、この歌は万葉集には長歌の反歌として載せられています。長歌にはつぎのように歌われています(この場合は「人」は人間という意味です)。
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