池内教授のメッセージ

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 高校生のころ、眼前の風物はみなウソ、仮象ではないかと、ひそかに思ったことがあります。そして、その見えないものに向かって、ひたすら眼を凝らしました。むろん、むなしい試みでした。やがて、小説を読む行為がいくらかそれに似ていることに気づきました。こちらは言葉を手がかりに、もの・ことのイメージをふくらませます。すると、それらのイメージがより合い、重なりあい、何かがふいに立ち上がります。見えた、と感じる瞬間です。そんな経験を大事にしながら、諸君と小説を読んでいきたいと思います。