空間と時間との連続の中で、伝達と継承とを繰り返してきた民俗文化は、多様な日本文化を培った。それは急激な近代文化の中でも均管化されず、都市化社会の中で一層その多様性を際立たせているように見える。そうした状況化で、自らの存在を捉えきれないために我々の不安は募る。かつて柳田国男は都市人の不安の存在を指摘した。それは現代において更に増幅されている。自己内省の学としての民俗学の出番はあるのか。そんなことを考えることの多い昨今である。