長野講師のメッセージ

 

  現在、我々はさまざまな歌に接することができる。それは必ずしも聞きたくて聞くものとはかぎらず、繁華街を歩けば、洪水のように音が流れ込んでくる。それを拒否するかのように、ヘッドフォンを耳にあて、孤独に雑踏を通り過ぎるのは、今や若者だけにかぎらない。かつて、歌は生活の中にあって、儀礼や仕事や遊びなどの場で、集団に共有されているものであった。しかし、その一方で、歌は個人のものにもなっている現状があるのである。ITをはじめとするメディアが急速に発展し、技術的には地球上の数億、数十億の人びとが、同時に同じ歌を聞き、歌うことができる現在にあって、歌は必ずしも人と人とを結びつける力を発揮しているとは言えない。我々にとって、歌とはどのような存在となっているのだろうか。  
 そんなことを考えています。