丹青研究所インターンシップ実施報告

博物館学コース博士課程前期1年 多賀梢

丹青社本館丹青社本館

 私は、大学院GP 博物館専門・特殊実習の一環として8月23日~9月10日の15日間、「丹青研究所」にて国内インターンシップをさせていただきました。丹青研究所は株式会社丹青社がディスプレイ業界初のシンクタンクとして設立した文化空間の在り方を追求する専門研究機関です。創業当時(1984)は、「丹青総合研究所」という名称で商業施設から文化施設まで幅広い分野の研究機関として調査・研究・専門図書の出版を行っていましたが、1993年に文化施設に特化した研究所として「丹青研究所」と名称を変え、文化空間の在り方を追求する研究機関として基礎調査・コンサルティング・デザイン設計・情報サービスを行っています。

●丹青研究所について
 丹青研究所の組織構成について紹介したいと思います。丹青研究所は文化空間文化財環境研究部、文化空間企画開発研究部、文化空間情報開発研究部という3つの部門から成っています。今回、私は文化空間情報開発研究部という部門でお世話になりました。
 文化空間文化財環境研究部では、文化財保存活用事業や博物館の設計などを行っており、文化財を保存、公開、活用するために収蔵庫の設計や建築、環境調査、環境整備、文化財防犯・防災設備の整備などを提案しています。次に文化空間企画開発研究部では、博物館の基本計画・構想を行っており、博物館を作る上で最も重要なコンセプト作りの過程である基礎調査、基本構想、基本計画を提案しています。その他、エコミュージアム構想などまちづくりに関する提案も行っています。最後に文化空間情報開発研究部では、丹青研究所が設立以来蓄積してきた豊富な情報を元に「ミュージアム・データ・バンク」(以下、MDB)を構築しています。さらに、全国の博物館の動向を常に追い続け専門情報や知的情報の収集、発信を行っています。情報開発研究部ではMDBの情報をソフトビジネスの展開に活用し、具体的で実践的な提案をしています。また、全国の博物館の情報を丹青研究所で発行している『ミュージアム・データ』という冊子や研究報告書などにまとめて発表しています。

文化空間情報開発研究部文化空間情報開発研究部

●業務内容
 私が丹青研究所でさせて頂いた業務内容は主に2つあり、1つは丹青研究所で発行している「ミュージアム・データ」に載っているリニューアル博物館に関する情報を入力していく作業でした。入力作業を行って、「ミュージアム・データ」を読んで最初に思ったことは、思っていたよりもリニューアルを行う館が多いということでした。また一口にリニューアルといっても、その目的や内容、リニューアルの種類も様々でした。そして年度が新しくなるにつれて、その傾向にも変化を見ることができ、とても興味深い内容でした。
 ここで少しリニューアル博物館について紹介したいと思います。リニューアル博物館と言ってもその種類は多様です。まず、リニューアルの種類を大きく分類すると"増設"、"増築"、"改装"の3つになります。また、リニューアルを行う目的としては、建物・空調設備などの老朽化によるリニューアルや10周年などの記念事業的なリニューアル、展示内容の刷新のためのリニューアル、バリアフリー(来館者の視点にウェートを置いた)にするためのリニューアルなどが特に多く見られました。特に、2000年度を前後して展示やバリアフリーに関するリニューアルが顕著になってきており、そのリニューアル実施内容を見ていくと、展示の見やすさ・分かりやすさに重点を置き、映像展示などの電子機器や参加型展示を積極的に導入する館が目立ちました。また、バリアフリーについてはリニューアル館のほとんどが行っており、意識の高さが伺われました。その他、ミュージアムショップや休憩スペース、レストランといった場所のリニューアルも積極的に行われており、これらの情報から来館者にとって使いやすく、親しみやすい博物館を意図してリニューアルを行う館が多くなってきていると感じました。
 2つ目の業務は、全国の博物館に関する書籍資料を元に、登録・相当・類似施設の種類をMDBに入力していく作業でした。
 博物館を取り巻く諸課題のうちの1つに博物館の登録博物館制度が挙げられますが今回の経験を通じて、圧倒的な類似施設の多さに改めて登録制度の意義は何なのだろうかと考えました。現状では登録博物館にするメリットが少ないわりに、登録になるための条件が厳しく、手続きも煩雑であるためにその意義が薄れています。登録になっている博物館を見てみると、登録施設であるにも関わらず博物館としての役割を果たせているのかどうか疑問に思う館もあります。その反対に、類似施設であっても展示や教育等において充実しており博物館としての役割を果たしていると思う館もありました。

●インターンシップを通して感じたこと
 今回のインターンシップを通して多くの博物館の情報に触れることができました。例えば、博物館の名称について「~資料館」や「~センター」、「~園」など、その種類は多様であり、館の内容も様々で、ある事象の普及啓発(ガイダンス)を主体に行っている施設やアミューズメント性が強く感じられる施設などが存在し、博物館として機能(博物館の基本要件である人・物・場を満たしているのかどうか)しているのかという疑問点を持ちました。各館の内容が幅広く、博物館という括りには入っているものの博物館として位置づけて良いのかと思う点もあり、博物館の定義付けをどこまでにすべきなのかと思いました。博物館やその他の文化施設は現在、様々な問題を抱えており、今回のインターンシップで改めて考え直した問題や、今までは私の中で意識の低かった問題などを認識することができました。今回、認識できた博物館の諸問題や学んだことを活かして、今後の研究に役立てていきたいと思います。
 最後になりましたが、今回丹青研究所にて国内インターンシップをさせて頂くにあたり、お世話になりました丹青研究所の方々、また大学の先生方にこのような貴重な機会を与えて下さったことに感謝し、お礼を申し上げたいと思います。


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