平成22(2010)年度 第1回特別講義 李永植氏
          「韓国仁済大学校博物館の運営と社会教育プログラム」

講師:李永植(イ=ヨンシク)大韓民国仁済大学校博物館長・仁済大学校歴史考古学科教授
日時:平成22(2010)年05月20日(木)17:50~19:00
場所:國學院大學 学術メディアセンター(AMC棟)1階 博物館学実習室
受講者:35名

講義内容要旨:
 仁済大学校は医学系の大学であり、博物館としての性格も医学系の展示を大学側から求められていた。そこで、白病院(仁済大学校の前身機関)に残る近代医学発達史の研究に意義のある資料や、韓国で最も高名な画家の一人である金基昶(キム=ギチャン)画伯に処方された薬封筒などの歴史的資料に着目し、2007年に開館するに到った。
 現在仁済大学校博物館の総所蔵品数は451点(医学資料428点、考古資料23点)、書画130点(整理中)である。
 仁済大学校学物館主催の社会教育プログラムとして、近隣市民向けの公開講座(「成人講座」)を、2007年4月の開館以来継続して開講し、現在で5期目を数える。プログラム内容は、医学系大学博物館主催の公開講座ではあるが、付設の伽耶文化研究所の学問的特性を生かし、現在まで全て考古学や歴史学の視点から講座を開講した。
 当初は館長自らも宣伝活動を行ったが、思うように参加者が伸びず、試行錯誤した結果、現在開講中の5期目にして初めて大きく募集人員を上回る参加者に恵まれた。公開講座の現状は、参加者のニーズを取り入れる為に講座ごとに工夫した経験が蓄積され、口コミ等で公開講座に関する情報が広まったのではないかと考えられ、これからは安定した参加者数が見込まれる展望を述べた。また、このプログラムは、大学が公開講座の費用の大部分を負担することによって運営されており、広く大学自体の広報活動につながることも企図されている。
 その他に、地域の文化財をトピックとして、小学生親子を対象にしたものづくり体験講座(「我が家族文化財探検隊」)を、博物館主催にて開催している。教育に大変関心が高い韓国では、高等教育機関である大学が主催する当該講座にも高い関心が向けられており、毎回多数の親子が参加する。この講座も開催以来、伽耶文化を主な対象として計画していたが、直近の第6期講座では、初の試みとして、近代以前の医学を学ぶ(「伝統医学も人を治したよ!」)というテーマ設定を行い、薬封筒の体験工作を実施した。
 この講座は、日本の文科省に当たる政府教育科学技術部の助成公募に採択されたものであり、大学の予算だけではなく、外部資金を導入して博物館を主体とした社会教育プログラムが行われることは仁済大学校博物館の特筆すべき点である。

講義風景1

講義風景2講義風景

講義風景3


(文責・撮影:博物館学教育研究情報センター)


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