国学院大学法学部横山実ゼミ


政治・経済的権力

次の文章は、『社会病理学講座第2巻 欲望社会--マクロ社会の病理--』(学文社、2003年、2,500円)の第1章に掲載されたものです。

第1章 権力社会 I: 政治・経済的権力

 グローバリゼーションが進んだ現代では、政治・経済的権力は国家の枠を越えつつある。経済の分野では、それが顕著である。世界的な規模の大企業が市場を独占するようになっており、たとえば、マクドナリゼーション(マクドナルドのハンバーガーが世界を席巻する現象)という言葉さえ生じている。とくに、ヨーロッパでは、EUの展開により、政治・経済的権力は統合へと向かっている。しかし、国際社会では、今でも国家主権が認められているので、ここでは、日本という国家を単位として政治・経済的権力を考察しておきたい。

 現代の日本は、個人の自由に基盤をおく資本主義社会である。そこでは、飽くなき欲望の追求が、特に、経済の分野においては、利潤の飽くなき追求がみられることになる。すでにデュルケム(Durkheim,E)が指摘したように、アノーミ(無規制状態)への傾斜が見られるのである。

 現代社会では、分業が高度化し、相互依存性が高まっている。そこで、マートン(Merton, R.K.)が指摘した個人的適応様式の一つである「革新」が、つまり、制度的手段を無視して欲望の追求をするという適応様式が生じ、アノミーに陥ると、精巧な相互依存性で成り立っている現代社会では、これまで以上に大きな弊害が生じることになる。そこで、政治・経済的権力の保持者は、弊害が起きたときの適切な対処にとどまらず、それへの予防を積極的に行うよう期待されている。つまり、権力者への役割期待は、増加しているのである。

 競争による淘汰で生き残った組織は、どんどん巨大化しているので、その頂点に立つ者は、一人の人間が担いきれないような重荷を負い、その組織の舵取りをするよう期待される。その地位にある者が、権力を乱用したり、無責任にそれを行使したりすると、その組織だけでなく、社会全体にも、大きな害悪をもたらすことになる。このように厳しい状況に置かれた、現代の政治・経済的権力の担い手について考察した後、彼らによる権力の乱用と無責任な行使を分析する。そして、それに対する制裁について検討する。

この文章の後には、次のような項目で、現代の政治・経済的権力が分析されています。

I 政治的権力の担い手としての政治家
II 政治的権力獲得過程の病理
III 政治的権力行使の病理
IV 政治家の金にまつわる病理
V 経済的権力の担い手
VI 経済的権力行使の病理
VII 政治的・経済的権力に対する国民の監視の強化

Mask in Poland

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