矢島文夫訳、『ギルガメシュ叙事詩』に基づく (ちくま学芸文庫、1997年) 第一書板 [029]「すべてのものを国の果て [源]まで見たという人、 すべてを味わい、すべてを知ったという人、 ギルガメシュ、国の源、その基礎を見たという人、 智恵をもって、すべてを知った人 秘密をかれは見、隠されたものを彼は得た 洪水の前のことはその知らせをもたらした、 彼は遥かに旅し、疲れ果てて帰り着いた 彼は碑石に骨折りのすべてを刻み込んだ。 かれは周壁もつウルクのを建てた 聖なるエアンナの神域の宝庫にしてもそうだ その外壁を見よ、その輝きは銅のようだ その内壁を見よ、何ものもこれには及ばない 敷居をつかんでみよ、それは古き昔からのものだ イシュタルの住むエアンナに近づいてみよ のちの王の誰にせよ、何ものもこれには及ばない ウルクの城壁をのぼり、歩み進め 礎石をしらべ、をあらためよ その煉瓦が火焼き煉瓦ではないかを 七人の賢人[師匠]がその基礎を置いてないかを ・・・・・・ [ギルガメシュの紹介] ギルガメシュが創られてより・・・ 力強き神はその姿を仕上げた 天なるシャマシュはかれに見目よさを授けた アダドはかれに雄々しさを授けた ギルガメシュの姿を大なる神々はものとした 彼のは十一、、かれの胸幅は九指尺・・・ かれの三分の二は神、彼の三分の一は人間 かれのからだの形は[誕生の女神により描かれ、 智恵の神により彼の姿を完璧なものにした] 〔  〕野牛のごとく、高く〔 彼の武器の扱いぶりは並びない 彼の<太鼓>によって、彼の仲間たちは立ちあがる ウルクの貴人たちは〔彼らの部〕屋にあって腹を立てた 「ギルガメシユは父親に息子を残さぬ 〔昼〕も〔夜〕も彼の横暴ぶりは収まらぬ 〔ギルガメシユは〕周壁もつウルクの守〔り手なのか〕 これが〔われらの〕守り手なのか、〔強く見目よく賢い〕 〔ギルガメシユは母親に娘を〕残さぬ 〔戦〕士の息女、〔貴人の奥方をも〕 彼らの訴えを〔神々は聴きたまわれた〕 天空の神々、ウルクの城の主、〔 〔アルルが〕この強き野牛を創ったのではなかったか 〔彼の武器の扱いぶりは〕並びない 彼の<太鼓>によって、彼の仲間は立ちあがる ギルガメシユは父親に息子を残さぬ 昼も夜も〔彼の横暴ぶりは収まらぬ〕 これが 〔周壁もつ〕ウルクの守り手なのか これが彼らの守り手〔 強く見目よく賢い (?) 〔 ギルガメシユは〔母親に〕娘を残さぬ 戦士の息女、貴人の奥方をも 〔アヌ〕は彼らの訴えを聴いたので 大なるアルルを呼んだ。「アルルよ、お前は〔人間を〕創った 今は、その似姿を創れ。その勇気〔ギルガメシュと〕競うものを [033] 彼らを戦わせよ、ウルクに平和がやってくるように」 アルルはそれを聴き、アヌの似姿を心のうちに描いた 〔ア〕ルルは手を洗い、泥を取って平地に投げつけた 〔土で〕彼女は雄々しきエンキドウを創った ニヌルタに力受けし者 その全身は毛に覆われ、女のような毛髪をもっていた その毛髪はニサバのように<波うっていた> 人も国も知らず、スムカンのような衣服をつけていた カモシカたちとともに彼は草を食べた 獣たちとともに彼は水飲場で肩を押しあった 家畜たちとともに彼の心は水を喜んだ ひとりの狩人、すなわちわなを仕掛ける男が 水飲場で彼と顔をあわせた 〔一〕日、二日、三日目に水飲場で(彼と顔をあわせた) 狩人が彼を見ると、その顔はこわばった 彼と獣たちは住みかへ帰って行った [34] 〔恐れ〕おののき、動かず、声もなく 彼の心は 〔乱され〕、その顔は曇った 恐怖が彼の腹わたにまで〔入りこんだ〕 彼の顔は遠く〔から帰った旅人の〕ようだった 狩人は口を開き〔父親にむかって〕言った 「父よ、〔山からやって来た〕人間が〔おります〕 〔国で(一番)〕強い力持ちです 〔アヌの精髄のように〕彼の力は強い 絶〔えず〕彼は山を歩きまわっている 〔絶えず〕彼は獣たちとともに〔草を食べている〕 〔絶えず〕彼は両足を水飲場に〔浸している〕 〔驚きおそれて〕私は彼に近よらない 〔私が(?)〕掘った穴を彼は〔埋めてしまった〕 私が〔仕掛けた〕わなを彼は〔引きちぎった〕 獣や野の動物たちを〔彼は私の手から逃がしてやった〕 [35] 〔彼は〕私が野の仕事をするのを〔さえぎった〕。」 〔彼の父は口を開き〕狩〔人〕にむかって言った 「〔わが子よ」〕ウルク〔には〕ギルガメシユが〔住んでいる〕 〔何者も〕彼の強さに〔まさる者はいない〕 〔アヌの精髄のように〕彼の力は〔強い〕 〔行け、ウルクヘ〕お前の顔を向けよ 〔そして〕男の力の〔ことを語り告げよ〕  彼から宮仕えの遊び女をもらって〕連れて来い 〔もっと強い〕力で〔彼に打ちかたせよう〕 〔彼が獣に〕水飲場で〔水をやるとき〕 〔女は〕着物を〔脱ぎ〕、女の魅力を〔開き示せ〕 女を〔見ると〕、彼は女〔に〕近づくだろう 野〔で育った〕獣たちは彼を見捨てるだろう。」 父親の意見に〔耳を傾けてから〕 狩人は〔ギルガメシュのところへ〕出かけた 彼は出発し、ウルクヘと顔を向けた 「〔   〕ギルガメシユよ〔 [36] 〔山からやって来た〕人間がおります 国で(一番)強い力持ちです アヌの精髄のように〔彼の力は〕強く 〔絶えず〕彼は山を歩きまわっている 絶えず彼は獣たちとともに〔草を食べている〕 絶えず彼は両足を水飲場に〔浸している〕 驚きおそれて、私は彼に近よらない 〔私が(?〕掘った穴を彼は埋めてしまった 〔私が仕掛けた〕わなを彼は引きちぎった 獣や〔野の〕動物たちを彼は私の手から逃がしてやった 彼は私が野の仕事をするのをさえぎった」 ギルガメシユは狩人にむかって言った 「行け、わが狩人よ、宮仕えの遊び女を連れていけ 〔彼が〕獣に水飲場で水をやるとき 女は着物を脱ぎ、女の魅力を開き〔示〕せ 女を見ると彼は女の方へ近づくだろう 野で育った獣たちは彼を見捨てるだろう」 [37] 狩人は行って宮仕えの遊び女を連れて釆た 彼らは出発し、道をまっすぐに進んだ 三日目に彼らは約束の場所に着いた 狩人と遊び女はそれぞれの隠れ場にひそんだ 一日、二日、水飲場に彼らは坐っていた 獣たちは水を飲みに水飲場へやって来た 動物は近づき、その心は水に喜んだ そして彼、すなわち山から来たエンキドゥは カモシカとともに草を食べ 獣たちとともに水飲場で水を飲み 動物たちとともに、その心は水に喜んだ ところで遊び女は、(この) 山男を見た 野原の奥からやって来た (この) 野蛮な男を 「彼がいる、遊び女よ、胸元をゆるめよ 奥処を開き、彼にお前の魅力をとらえさせよ [38] ためらうな、彼の心を受けとめよ お前を見ると彼はお前に近づくだろう お前のうえに横たわれるように着物を脱ぎすてよ 野で育った獣たちは彼を見捨てるだろう 彼の気持はお前に惹かれてゆくだろう」 遊び女は胸元をゆるめ、奥処を開き、彼は女の魅力をとらえた 彼女はためらわず、彼の心を受けとめた 彼女が着物を脱ぐと彼は女のうえに横たわった 山男を女のなすことへと惹きよせた 彼の気持は彼女の方へと惹きつけられた 六日と七晩、エンキドゥは遊び女とまじわった 彼女の豊かさに満足してしまうと 彼は顔を野の動物へと向けた エンキドゥを見て、カモシカたちは逃げまどった 野の動物たちは彼の体からしりぞいた エンキドゥが驚いたことに、彼の体はこわばった [39] 獣が行ってしまうのに彼の膝はきかなくなった エンキドゥは弱くなり、彼の速さは以前のようでなくなった だが彼には(今や)知〔恵〕があり、考えも広くなった 彼はもどり〔  〕遊び女の足許に坐〔って〕 遊び女の顔を眺めた そして遊び女が語ることに耳をかたむけた 遊び女はエンキドゥにむかって言った 「あなたは〔賢〕い人、エンキドウよ、神のように なぜ、獣たちと野原をうろつきまわるのですか さあ、あなたを周壁もつウルクヘお連れしましょう アヌとイシュタルの住まわれる神殿ヘ ギルガメシュが力を振るいまくり 野牛のように人びとを支配しているあそこへ」 彼女がこう言うと、彼女の言葉はききめがあった 彼の心は喜び、彼は仲間をほしがった エンキドゥは遊び女にむかって言った 「さあ、遊び女よ、私を連れていけ [40]アヌとイシュタルの住まわれる神殿へ ギルガメシュが力を振るいまくり 野牛のように人びとを支配しているあそこへ 私はかれにいどみかかり力〔強く〕語〔りかけよう〕 ・・・ 「ウルクで私は叫〔ぼう〕、『私は強い』(と) 〔私〕は運命をも変えてしまう 野原〔で〕生まれた〔者は強〕く力がある」。。。 第二の書板 (ギルガメシュが前兆の夢を見、彼の母がそれを解く。 野原生まれの者の霊夢だと。彼がギルガメシュの親友 となり、妻のようになる、と。そのあいだエンキドゥと遊び女は。。。) [044] ギルガメシュが夢を解いているとき エンキドゥは宮仕えの遊び女とともに坐っていた 二人はたがいに愛撫した エン〔キ〕ドウは生まれたところを忘れ去った 六日と七晩、エンキドゥは 遊び女とまじわった それから宮仕えの遊び女は口を開き エンキドゥにむかって言った 「あなたを見るに、エンキドゥよ、あなたは神のようです なぜ動物たちと野原をうろつくのですか さあ、私はあなたを広場あるウルクヘお連れしましょう アヌの住まわれる神殿ヘ エンキドゥよ、お立ちなさい、私はあなたを アヌの住まわれるエアンナヘお連れしましょう そこには武勇に〔すぐれたギルガメシュが〕 います そしてあなたは〔   〕 のように〔 あなた自身〔のように彼をいとおし〕むでしょう 起きあがり、地面から、羊飼の〔寝床〕から立ちなさい」 彼は彼女の言葉をきき、彼女の言うことをみとめた 女の教えは彼の心にとどめられた 彼女は着物を引き裂き その一方を彼に着せ 他の着物を彼女は自分で着た 彼女は彼の手をとり [46] 母親のように彼を連れて行った 羊をかこう場所、羊飼の食卓へむけて 彼のまわりには羊飼たちが集った ・・・ 野獣の乳を彼は飲んでいた 彼らは彼のまえに食物を置いた 彼はびっくりして眺めわたし そしてじろじろみつめた エンキドゥはなにも知らない 食物を食べることも 飲物を飲むことも 彼はならわなかった 宮仕えの遊び女は口を開き、 エンキドゥにむかって言った 「食物を食べなさい、エンキドゥよ (それが)人生のきまりなのです 飲物を飲みなさい、(それが) 国のならいなのです」 エンキドゥは飽きるまで食物を食べた 飲物をさかずきに七はいも飲んだ 気持が浮き立ち、彼は愉快になった そして彼の心は喜びにみちた 彼の顔はほてり、彼は 〔毛深い身体に水〕をこすった 彼は毛髪に油をぬりつけ 人間らしくなった 着物を着て花婿のようになった 彼はライオンを狩るために武器を取った 羊飼たちが夜休めるように 彼は狼をとらえ、ライオンを打ちとった 牧者の長たちは横になることができた エンキドゥは彼らの見張りであった 勇敢な男、ただひとりの英雄 〔    〕 にむかって彼は言った・・・ [048] ・・・ 彼は楽しんだ そして目を上げると、彼は男を見た 彼は遊び女にむかって言った 「宮仕えの遊び女よ、男を(ここへ)連れて来い なぜ(ここへ)やって来たのだろうか 彼の名を私にきかせてくれ」 遊び女は男を呼んだ 彼のところへ行き、彼に言いかけるには 「貴人よ、どちらへいそぐのですか なんのため骨折り歩むのですか」 男は口を開き、エン〔キドゥ〕にむかって言った 「お〔前を〕役所へ連れて行こう 〔私は結婚式に誘われた〕 妻を選ぶことは人びとの定めだ 町(の人びと)に彼は泥の籠を負わせ 〔式のために食物を泥の皿に一杯にした〕 町(の人びと)の食糧は女たちに課す 広場あるウルクの王にとって 人びとの<新床の幕>は開かれている 広場あるウルクの王ギルガメシュ にとって人びとの<新床の幕>は開かれている 結婚した女とさえも彼はまじわる 彼は第一であり、<夫>はそのあとだ 神々のすすめにより、(そのように)決められた へその緒が切られるとともに 彼にそう命ぜられたのだ」 男の言葉をきいて 彼の顔はあおざめた   (以下破損) ・・・・・・ 〔エンキドゥはまえを〕歩き、遊び女はあとを歩いた (これからエンキドゥがギルガメシュに相撲とりをチャレンジし、 ギルガメシュに負けるが、その結果二人が親友となる。 ギルガメシュはエンキドゥに「フンババ」(またはフハハ) という恐ろしい怪物(悪霊)が守番をする遠い山へ行き、 フンババを殺し、門を作るための大きな杉を倒そうと企てる。 しかしエンキドゥが前兆の悪夢を見、その危険にためらう。 「なぜお前は望むのか、そのようなことをすることを?」と) 第三書板  (行方を心配したエンキドゥとギルガメシュの対話がつづく。) 〔エンキドゥの〕眼は涙で満ちた 彼は心のうち〔に苦しみを感〕じた 〔そしてはげしく(?〕ためいきをついた 〔エン〕キドゥ〔の眼〕は涙で満ちた 彼は心のうちに〔苦しみを感じた〕 〔そしてはげしく(?〕ためいきをついた 〔ギルガメシュは〕彼の顔を向〔け〕 エンキドゥにむかって〔言った〕 「〔なぜ〕お前の眼は 涙で満ちているのか お前の〔心は苦しみを感じるのか〕 〔そしてはげしく(?〕ためいきをするのか 〔エンキドゥは口を開〕き ギルガメシュにむかって語〔っ〕た 「わが友よ、〔   〕 〔         〕 わが両腕は動かず わが力は抜け去った」 ギルガメシュは口を開き エンキドゥにむかって言った ・・・・・・(ギルガメシュがエンキドゥを励ます) エンキドゥは口を開き ギルガメシュにむかって言った 「わが友よ、野原で私は学んだのだ 獣たちとともにうろつき歩いていたときに 一ベールの広さにわたって森は広がっている 〔だれが〕そのなかへ行こうとするだろう [056] 〔フン〕ババの叫び声は洪水だ その口は火だ その息は死だ なぜお前は望むのか そのようなことをすることを」 ・・・・・・ 「杉の〔森〕を守るために エンリルは彼(フンババ)を人間たちへの恐れとして任命した フンパパの叫び声は洪水、その口は火、その息は死 森の〔六十ベールにわたって野牛の雄叫びを〕彼は聴く だれが森のなかに行こうとするだろう 杉の森を守るためにエンリルは彼を人間たちへの恐れとして  任命した 森へ行こうとする者を弱気がつかまえる」 [058] ギルガメシュは口を開き エンキドゥにむかって言った 「だれが、わが友よ、天〔上〕まで上ることができようか 太陽のもとに永遠に〔生きるは〕神々のみ 人間というものは、その(生きる)日数に限りがある 彼らのなすことはすべて風にすぎない お前はここでさえ死を恐れている お前の英雄たる力強さはどうしてしまったのだ 私をお前より先に行かせてくれ お前の口に呼ばわせよ、『進め、恐れるな』と 私が倒れれば、私は名をあげるのだ 『ギルガメシュは恐ろしきフンパパとの 戦いに倒れたのだ』と わが家の子孫ののちのちまでも」 (こうしてギルガメシュは自分の決意を述べてから、武器 職人に武器を造らせたあと、町の長老たちはかれに助言する) [060-061] ウルクの長老たち、広場(の者たち)は ギルガメシュに答えて言った 「お前は若い、ギルガメシュよ、お前の心ははやっている お前のなそうとすることをお前は知らぬ われらは聴く、フンパパの姿はなみではないと 彼の武器にはだれが〔かな〕うであろう 一〔ベール(の広さ)にわたって〕森は広がっている だれがそのなかへ行こうとするだろう フンパパの叫び声は洪水だ その口は火、その息は死だ なぜお前は望むのか、そのようなことをすることを フンパパの<  こそ恐るべき攻撃)」 助言者の言葉をきいたギルガメシユは 〔彼の〕友を眺め、笑った。 (第四と第五書板では、出たちの儀式のあと、ギルガメシュと エンキドゥはフンババの森へ進む。フンババとの戦いのあと、 フンババが征服される。ギルガメシュとエンキドゥは杉と フンババの生首をもって、ウルクに戻る。そこで、イシュタル という愛の女神がギルガメシュに求愛するが彼に退けられる。 第六書板では、イシュタルは激怒して、「天の牛」をウルクを 荒廃させるために送るが、最後にギルガメシュとエンキドゥが 天の牛を殺し、その死体をイシュタルに投げ返す。 第七書板では、神々が会議し、フンババや天の牛を殺したものの 一人が死ななければならないと決断する。争論の結果、エンキドゥが 死ぬようになる。その告げを受けるエンキドゥは門の前で嘆く。) [089]エンキドゥはギルガメシュのまえで病みたおれた 涙が滝のように流れ落ちて(言うには) 「兄弟よ、愛する兄弟よ、なぜわが兄弟をさしおき私は無実だと言うのか。。。 そのうえ私は死霊のもとに 座り、死霊の〔門のもとに座らねばならぬのか〕 [090]エンキドゥは〔 彼の限を〕あげた あたかも〔人間〕であるかのように門と話した 「森の門などに何が(納得ゆく)ものか もの分かりするはずがない 二十ベールのところで私は〔好ましいお〕前の木を見た 私が丈高い杉の木を見る(はるか)まえのことだ 〔国中で〕お前の木にかなうものはない お前の高さは六ガル、お前の幅は二ガル〔 お前の支柱、お前の柱受け、そしてお前の柱つまみ〔 お前の<職人>がニップルでお前を作った おお門よ、これが〔お前の目的(?)だと〕知っていたら そしてお前の好ましさがこの〔災厄をもたらすのなら(?)〕 私は斧を持ち上げて〔お前をばらばらに〕してしまい [091]に組み込んでしまったのだが。。。 (次にエンキドゥは彼を採られた狩人とその遊び女に 呪いをかけるがシャマシュ[太陽の神]がそれに答える)。 [092]シヤマシユは彼の口〔からこの言葉を〕聞いた 彼はすぐさま天から彼に呼びかけた 「エンキドゥよ、なぜお前は遊び女を呪うのか あれがお前に教えたのは、神にふさわしいパンを食べること 王者にふさわしい酒を飲むことだった あれはお前に立派な衣服を着けさせたではないか そしてお前によき友ギルガメシュをあたえたではないか さていまは、お前の親友なるわが友ギルガメシュが お前を立派な寝台に横たえさせている 誉れのにお前を横たえさせている 彼はお前を左なる席、安楽の席に坐らせている 地上の〔公〕子たちよ、お前の両足に接吻せよ 〔彼は〕ウルクの人びとがお前を嘆き悲しむようにさせる 〔彼は喜び満てる〕人びとをお前への想いで満たしてやる 〔そしてお〕前が行ってしまうと、体を長い毛髪で覆い 犬の皮を着て私は野〔原〕をさまようだろう」 エンキドウは力強いシヤマシュのこの言葉を〔聞いて〕 〔 〕彼の悩める心は落着いた 〔 〕落着い〔た〕 ・・・・・・ (エンキドゥは何日間の病の末、やがって死ぬ。 第八書板では、ギルガメシュはエンキドゥの死を嘆く。) [098] 〔夜明けの光〕 とともに ギルガメシュは友に〔むかって言った〕 「エンキドゥよ、〔お前の母なる〕カモシカと 〔お前の父なるロバが〕お前を生み出した 〔(野生のロバがその乳でお)前を育てた そして〔野獣がお前にすべての〕牧場〔を教えた〕 道〔路、そしてエンキドゥが進み行く(?)〕杉の森 (杉の森へとエンキドゥが進んだ道路) 夜も昼も〔みながお前のために泣くだろう〕 周壁もつウルクの〔長老たちはお前のために泣くだろう〕 〔みなが〕<われらの死のために祈る>だろう ・・・・・・ [099]「聴きたまえ、年寄たちよ、〔そして〕私に〔耳を傾けよ〕 私はわが友エンキドウにむかってすすり泣く 泣き女のように烈しく泣き叫ぶ 斧をわがかたわらに、〔弓を(?)〕わが手に 短刀をわが腰帯に、〔楯を(?)〕わがまえに わが晴れの衣服、わが豊か〔なる(衣)〕 悪鬼が立ち上り、私から奪い去ってしまった 〔わが友よ、お前は〕山のラバ、野の豹を猟した エンキドゥ、わが友よ、お前は山のラバ、野の豹を猟した われらはすべてを〔征服し、山々を〕わたり歩いた 都城を奪い、〔『天の牛』を殺した〕 [100] 『杉の森』に住むフンババを苦しめた だがいまや、お前にのしかかるこの眠りはいったい何だ お前は闇につつまれ、〔私の言うことが〕聴こえない」 そして彼は〔まなこを〕上げもせず 彼の心臓にさわったが、それは動いていなかった そこで彼は友に花嫁であるかのように薄布をかけた ライオンのように声を張り上げた 子供を奪われた雌ライオンであるかのように 彼は〔友の〕まえを行ったり来たりした 毛髪を引き抜き、まきちらしながら 体につけたよき品を引裂き投げつけながら夜明けの光とともにギルガメシュは〔    〕 ・・・・ (第九書板では、ギルガメシュはエンキドゥを悲しみながら、 野原をさまよい、ウトナピシュティムという昔の大洪水の 唯一の生存者を探し、永遠の命の秘密を求めようとする。 かれの第二の大旅がはじまる。。。) [102] ギルガメシュは、彼の友エンキドゥにむかって 烈しく涙を流し、野原をさまよい歩いた 「私が死ぬのも、エンキドゥのごとくではあるまいか 悲しみが私のうちに入りこんだ 死を恐れ、私は野原をさまよう ウバラ・トゥトゥの息子ウトナピシュティムにむかって 私は道をとり、いそぎ進んだ 夜になり、山の狭間にさしかかると 私はライオンどもを見てふるえあがった 私はシン(月の神)にむけ頭をあげて祈った ......... (ある書板によると、道の途中でシャマシュ(太陽の神)が ギルガメシュに話しかける。話のどこに入るかよく 分からないがこの辺に一応挿入しよう) [110]「シヤマシュは困惑し、彼の方に向きなおった 彼はギルガメシュにむかって言った 「ギルガメシュよ、お前はどこまでさまよい行くのか お前の求める生命は見つかることがないだろう」 ギルガメシュは力強きシヤマシュにむかって言った 「野原を進みさまよってのちに大地のまんなかにわが頭を横たえるべきか すべての年々をずっと眠りつづけるがために わが眼をして太陽を見させよ、私が光に満つるように 光あるところ暗黒は引き下がる 死を死せる者、太陽神シヤマシュの輝きを仰ぎ見んことを」 (つづけてギルガメシュはマシュ(またはマシュム)という 太陽が通る双山を横切らなければならないが、その入り口は サソリ人間に門番されている。それを通り過ぎると地下の トンネル(冥界)を通り、向こうがわの海辺に着く。 その浜に酒屋があって、その女主人がシドゥリと呼ばれる。) 第十書板:海辺の酒屋 〔意訳:「海辺に住む、酒屋の主人シドゥリ 〔     〕のいすに座り、 。。。ギルガメシュが近づくと。。。 彼は獣の皮を身にまとい、恐ろしい面をし 〔彼の身体に〕神の身があって、 彼の内には悲哀があった 彼の顔は遠くからの旅人のようで 酒屋主人は自分にささやいた、 彼が確かに野牛の殺し屋だ、 なぜ私の戸へとくる。。。〕 [112] 女主人よ、お前の顔を見たからには 私の恐れる死を見ないようにさせてくれ」 女主人はギルガメシュにむかって言った ・・・・ 「ギルガメシュよ、あなたはどこまでさまよい行くのです あなたの求める生命は見つかることがないでしょう 神々が人間を創られたとき 人間には死を割りふられたのです 生命は自分たちの手のうちに留めおいて ギルガメシュよ、あなたはあなたの腹を満たしなさい 昼も夜もあなたは楽しむがよい 日ごとに饗宴を開きなさい あなたの衣服をきれいになさい あなたの頭を洗い、水を浴びなさい あなたの手につかまる子供たちをかわいがり あなたの胸に抱かれた妻を喜ばせなさい それが〔人間の〕なすべきことだからです」 (ギルガメシュはシドゥリにウトナピシュティムの所在を 尋ねると、それは海のかなたにあって、だれでも渡った人が いない。途中にも「死の海」があって、それをさわるだけで 人は死ぬという。しかしギルガメシュは推し進めて ウトナピシュティムの舟人ウルシャナビに攻撃して海を 運ぶように命令する。その戦いでウルシャナビが持つ 「石のもの」を砕く。おそらく守り神と思われる。。。 やがって海を渡ったギルガメシュがウトナピシュティムと 会って、昔の大洪水と人間の絶滅の話を聞く。) [114-115] ギルガメシュはウトナピシュティムにむかって言った 「遥かなりというウトナピシュティムの許に来てお会いするまでに 私はすべての国々をさまよい歩いた 私は険しい山々を越えて来た 私はすべての海を横切った 私の顔面はうまき眠りに満ち足りてはいない 眠らぬためにわが身を苦しめ、手足を嘆きで満たした 女主人の家〔に〕着かぬうちに、わが衣服はすり切れた 〔私が殺〕したものは熊、ハイエナ、ライオン、豹、虎、 鹿、大山羊、野の獣と生き物たち それらの〔肉を私は食べ〕それらの皮を私は〔わが身につけた(?)〕 (ウトナピシュティムが長い演説を返すが意味不明な ところが多いようだ。) 「古き日々このかた〔変らぬもの(?)〕はない <眠れるもの>と死者はいかに似ていることか 彼らは死の絵図を表わすのではなかろうか 野の人も〔エンリルが〕祝福すれば人並の人となる [116] 大なる神々アヌンナキは集まり 運命を作る女神マムメ(テ)ウムは彼らの運命を割りあてる、 彼らは死と生命を定める(が) 死については、その日を知ることはできぬ」 (最後の第十一書板は大洪水の話とギルガメシュの帰還です。 ウトナピシュティムが洪水のわけを話したあと、ギルガメシュに 永遠の命のチャンスを与える。もしギルガメシュが六日六晩を 寝られずに起きれば。。。しかし座ってすぐ、ギルガメシュが 居眠りする。。。。) ウトナピシュティムが云わく: [130]「生命を求めるこの英雄を見よ 眠りが雲のように彼のうえにただよっている」 彼の妻は遥かなるウトナピシュティムにむかって言った 「その人が目を覚ますように触れてやりなさい やって来た道を無事に帰って行くように 出発した市門を目指して彼の国へ帰るように」 ウトナピシュティムは彼の妻にむかって言った 「ずるいのが人間だから、彼はお前をだますだろう さあ、彼にパンを作ってやり、枕許に置くがよい そして彼の眠った日々を壁にしるしづけよ」 彼女は彼にパンを作ってやり、それを枕許に置いた そして彼の眠った日々を壁にしるしづけた 彼の最初のパンは干からびてしまった 第二のは悪くなり、第三のは湿り、第四のは皮が白くなり 第五のは色が変り、第六のは焼きたてであった 第七のがまだ炭火のうえにあるとき、彼が触れると男は目を 覚ました ギルガメシユは遥かなるウトナピシユティムにむかって言った 「眠りが私をおそったと<思ったら> あなたは私に触れて私を起こしたのですか」 ウトナピシュティムはギルガメシユにむかって〔言った〕 「ギルガメシユよ、〔行って〕パンを数えなさい 〔お前が眠った日の数が〕お前に分かるだろう」 彼の最初のパンは違うものになってしまった 第二のは悪くなり、第三のは湿り、第四のは皮が白くなり 第五のは色が変り、第六のは焼きたてであった 第七のがまだ炭火のうえにあるとき、彼が触れると男は目を覚ました ギルガメシユは遥かなるウトナピシュティムにむかって言った 「〔なにを〕しよう、ウトナピシユティムよ、私はどこへ行こう 私の〔体を〕死神がかたくつかんだ [132]私の寝室〔には〕死が坐っている そして〔私が腰を下して〕坐るところにはどこにも死がいる」 ウトナピシュティムは船頭のウルシヤナビにむかって言った 「ウルシヤナビよ、船着場がお前を〔喜ばず〕渡り場がお前 を侮るように 岸伝いに行く者は、その岸から追放せよ お前がここへ連れて来た人間は体中垢だらけだ その体の立派さが表皮のおかげで台無しだ ウルシヤナビよ、彼を洗い場へ連れて行け 水で彼の垢を雪のように洗わせろ 表皮を投げ捨て海に運び去らせよ、彼の体の立派さが現われ 出るように 彼の頭のパルシグ〔鉢巻のようなもの〕を 新しいものとかえよ 彼の裸身を覆うように外衣をつけさせよ 彼が彼の町へたどりつかんことを 彼が彼の旅を成し遂げんことを [133] 彼の外衣の古びず、まったく新しきことを」 ウルシヤナビは彼を洗い場へ連れて行った 彼は水で垢を雪のように洗った 彼は表皮を投げ捨て、海がそれを運び去った 彼の体の立派さが現われ出るように 彼は頭のパルシグを新しくした 彼は裸身を覆うように外衣をつけた 彼の町へたどりつかんことを 彼が彼の旅を成し遂げんことを 〔彼の外衣は古びず、まったく〕新しかった ギルガメシュとウルシヤナビは船に乗った 船〔は波にのり〕、彼らは進み出た 彼の妻は遥かなるウトナピシユティムに言った 「ギルガメシユは骨折り労してやって来ました 何を彼にあたえるのですか、彼の国へと帰るために」 [134] ウトナピシュティムはギルガメシュにむかって言った 「ギルガメシュよ、お前は骨折り労してやって来た 何をお前にあたえようか、お前の国へと帰るために ギルガメシュよ、隠された事柄をお前に示してやろう そして〔神の秘密を〕お前に話してあげよう この草は〔   〕のようで〔 そのとげが<バラ>のように〔お前の手をさ〕すだろう お前の手がこの事を得るならば、お前は生命を得るのだ」 ギルガメシュはこれを聴くやいなや<水〔取口〕)を開き 重い石を彼の両脚に結びつけた 彼が深淵へとびこみ、〔その草を見た〕 彼は草を取ったが、〔それは彼の手をさ〕した 彼は重い石を両脚から解き放した 〔海〕は彼をへと押しかえした ギルガメシュは船頭ウルシヤナビにむかって言った 「ウルシヤナビよ、この事は<特別な>草だ 人間はこれでもって生命を新しくするのだ [135] 私はこれをウルクの城へ持ち帰り、〔ある老人に」草を食べさせよう その名はシーブ・イッサヒル・アメルという [訳:若者となった老人] 私も食べて若かったころにもどるとしよう」 二十ベール行って彼らは食事をした 三十ベール行って彼らは夜の準備をした するとギルガメシェは水が冷たい泉を見た 彼は水のなかへ降りて行って水浴をした 蛇が草の香に惹きよせられた 〔それは水から〕出て来て、革を取った もどって来ると抜殻を生み出した そこでギルガメシュは坐って泣いた 彼の頬を伝って涙が流れた 〔彼は〕船頭ウルシヤナビの〔手を取って言った〕 「だれの〔ために〕、ウルシヤナビよ、わが手は骨折ったのだ だれのために、わが心の血は使われたのだ 私自身には恵みが得られなかった [136] 大地のライオンに恵みをやってしまった もう二十ベールも流れが(それを)運び去ってしまった 私が<水取口)を開き〔 私への合図として置かれたものを見たからには私は退こう そして小舟を岸に残そう」。二十ベール行って彼らは食事を した 三十ベール行って彼らは夜の準備をしたウルクの城に着いたとき ギルガメシユは船頭ウルシヤナビにむかって言った 「ウルシヤナビよ、ウルクの周壁を登り歩み進め 基礎をしらべ、煉瓦をあらためよ、煉瓦が火焼き煉瓦でないかを また七人の賢人[師匠]がその基礎を置いてないかを 一シヤルが都、一シヤルが果樹園、一シヤルが周辺とイシュタル神殿の<境内>だ 三シヤルと<境内>がウルクをつつみこむ」