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「ネットワーキングの基礎」講義ノートの一部〜ネットワーク・ビジネス
(テキスト:小木曽道夫(1998)『ネットワーキングとは何か?』「5-2-3 ヒエラルキー型社会システムの定義」の補足)

 日常語としてのネットワークという言葉の用法としては、「ネットワーク・ビジネス」という言葉がある。訪販ニュース社 MLM取材班(2000:16)は「メーカーまたは販売事業者(卸業者)が商品を販売するにあたって、消費者を直接ビジネスに参加させ、その友人・知人に商品を販売してもらうと同時に、それら友人・知人にもビジネスに加わってもらう。こうして人と人との「輪=ネットワーク」をつくり上げ、それを拡大させながら商品を販売する手法がネットワークビジネス(消費者参加型ダイレクトセリング)である」と定義し、さらに「この販売方法は、昭和四〇年代の後半にマルチ・レベル・マーケティング・プラン(MLM)として米国から日本に持ち込まれたもの」と位置づけている。そして、訪販ニュース社 MLM取材班(2000:19)は、ネットワークビジネスの健全発展を遅らせた要因として、「消費者を儲け話で強引にビジネスに誘って、高額商品を売りつける、品質・性能面で多くの問題ある商品を高価格で売りつける、あるいは商品の優位性をことさら強調して一度に大量の商品を購入させる」といった消費者トラブルが多発し、「悪徳商法といった意味合いを持った゛マルチ商法゜という言葉が生まれて、日本の社会に浸透していった」と指摘した。
 このようなマルチ・レベル・マーケティング・プランは、より上位のレベル、というよりはより上位のヒエラルキーに位置していればより高額の「特定利益」を収受し得る点において、ネットワーク・ビジネスというよりはむしろヒエラルキー・ビジネスと呼ぶ方が適切であろう。さらに、小木曽(1998:30-1)の強制の定義に準拠すれば、マルチ・レベル・マーケティング・プランとは、この取引へと勧誘する人が勧誘される人を騙したり洗脳して強制した場合には、説得−納得型コミュニケーションであるネットワーキングとは正反対の強制−服従型コミュニケーションに他ならない。
 なお、「マルチ商法」という用語には明確な定義はないが、連鎖販売取引のことを指すと考えられる。連鎖販売取引とは、つぎの「特定商取引に関する法律」 第三章 連鎖販売取引 第三十三条に定義された4つの条件すべてを満たす取引のことである。

したがって、連鎖販売取引ではないネットワーク・ビジネスとは、前述した訪販ニュース社 MLM取材班(2000:16)の定義に加えて「特定利益」をもたらさず、かつ、「特定負担」を課さない取引ということになる。

【Reference】


※講義ノートの一部をWebサイト上にて公表する理由

 國學院大學・経済学会ホームページ委員会宛へ2002年2月19日に「つい先日、とあるマルチ商法のセミナーに騙されて参加してしまったのですが、プレゼンターの勧誘文句の中に、貴学の経済ネットワーク学科にて、マルチ商法が必修単位となっていて、経済界でも注目されていると明言していました」という記述が含まれたメールが寄せられたことがあった。2000年度までの入学者向けの経済ネットワーキング学科・学科基幹科目・必修科目であった「ネットワーキング原理」、2001年度からの入学者向けの経済ネットワーキング学科・学科基礎科目・選択必修科目である「ネットワーキングの基礎」(の【シラバス】を開く)を担当している小木曽は、2001年度までの「ネットワーキング原理」において、第5回「4 (一般)ネットワークの概念定義と表記法」の導入部、(テキスト【『ネットワーキングとは何か?』】を開くでは「4-2-1 日常語としてのネットワーク」の補足)として、(時間としては1分かかってないと思うが)つぎのような趣旨の発言をしてきた。

 日常語としてのネットワークという言葉の用法としては、「ネットワーク・ビジネス」という言葉があります。この「ネットワーク・ビジネス」のなかには、マルチ商法やネズミ講まがいのものもあるそうですので、騙されないように気をつけましょう。

 以上の話を聞いて「マルチ商法が必修単位となっていて、経済界でも注目されている」と解釈する受講者はいなかったと思うが、2002年度からは受講者および学外者に対して誤解がないようにより明確な内容の講義にし、「ネットワーク・ビジネス」についての講義ノートの部分をWebサイト上にて公表することにした。

Copyright, 2002-3 Michio Ogiso, 2002/5/7 初出→2003/5/26 更新

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