9 自己生産【本書の目次へ戻る】
Maturana and Varela(訳1991)が提唱したオートポイエシスを自己生産と訳出する。生命現象および社会現象における自己組織化と自己生産との相違点は、第一に両者の概念が目的論もしくはテレオノミーを前提としているのか否か、第二にプログラムまたは構造という概念を前提としているのか否か、という視点の相違である。本書では、システムの構成素や単位体という内容を創り出すことを指して自己生産、目的論およびプログラムや構造という概念が必要であるという前提に立った場合でのシステムがシステムの構造を創り出すことを指して自己組織化、と両者を区別することにした。この視点における自己組織化は目的論およびプログラムや構造という概念を前提として再定義した自己生産と位置づけることができ、自己組織化は構造自己生産という自己生産の下位類型として位置づけることができよう。組織は組織目標に志向しての統制とこれに対する応答行為から構成されるコミュニケーションを自己生産する。集合行動は、集合行動に動員させる価値およびその下位類型に共鳴したコミュニケーションを自己生産する。ヒエラルキー型組織は強制−服従型コミュニケーションを自己生産する。ネットワーク型組織は説得−納得型コミュニケーションを自己生産する。
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