第7章 第5節 創発的構造の測定方法【第7章の目次へ戻る】

 創発的構造とは、組織成員の相互行為を通じて形成される組織成員によって知覚された課業のパターンのことであり、「個人調査」において測定した個人レベルでの職務特性を部門単位でアグリゲートすることによって操作化した。
 創発的構造の指標は、回答者の仕事や職場の様子について記述した文章が回答者の仕事や職場にあてはまっているかどうか質問し、「そう思う」という回答に5点、「かなりあてはまる」に4点、「どちらともいえない」に3点、「あまりあてはまらない」に2点、「そうは思わない」に1点を与える5点尺度の計24項目である。これらの24項目のうちの12項目以上が有効回答である場合に、これらの単純平均により創発的構造の有機性(organic emergent structure)という全般的尺度を算出した。
 創発的構造は、それぞれ3項目の単純平均による八つの下位尺度を持つ。これらの下位尺度とその概念はつぎの通りである。1.(技能の)多様性(skill variety) とは、職務がさまざまな能力や作業を要求する程度、2.一貫性(identity)とは、一つの仕事の流れ全体を担当している程度、3.重要性(significance)とは、仕事が同僚や組織に与える影響の大きさ、4.自律性(autonomy)とは、職務の遂行に関する意思決定を自ら行える程度、5.フィードバック(feedback)とは、仕事の評価や成果を仕事自体や上司との垂直的なコミュニケーションを介して知ることができる程度、6.他者との接触(dealing with other)とは、職務の遂行のために水平的コミュニケーションを通じた他者との協力が要求される程度、7.柔軟性(flexibility) とは、状況に応じて仕事のやり方を変更できる程度、8.自発性(voluntariness)とは、強制されるからではなく自ら積極的に仕事に取り組んでいく程度、のことを示す。

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