8 エピローグ〜経済ネットワーキングとは何だろう?【本書の目次へ戻る】

ここでは、*−経済的価値を持つもの/*ネットワーク、すなわち伝達・交換されるものが経済的価値を持つものであるネットワークの総称を経済ネットワーク(network on economy)、主体的には経済ネットワークを形成していくこと、客体的には経済ネットワークが形成される過程のことを経済ネットワーキング(networking on economy) と定義できよう。  ここで、経済的価値の意味を検討することにしよう。価値に「経済的」という形容詞が付くと、なんとなく貨幣価値に換算できるような先入観を持ちがちである。しかし、前述したような、ボランティア活動やフリーウェア・ソフトに示される互酬的報酬は、定価のような一定の貨幣価値には換算しにくい。つまり、互酬的報酬とはサービスを提供する人と提供される人の両方にとって報酬となることであり、その報酬の価値が評価する人によって異なっていたり評価する時点によって変化するために貨幣価値には換算しにくい。しかし、ボランティア活動に見られる互酬的報酬が今後の社会経済にとって重要な役割を果たしていくようになっていくことを考慮すると、むしろ、互酬的報酬のような貨幣価値に換算しにくい経済的価値の重要性を認めるべきであろう。  さて、ここまで見てきたネットワーキングやネットワーク型社会システムが経済ネットワーキングに該当するかどうか検討してみよう。まず、ネットワーク型企業は経済活動の主体であるため、言うまでもなく経済ネットワークであり、ネットワーク型企業における説得−納得コミュニケーションによる日常の業務は経済ネットワーキングである。つぎに、ボランティアついて、互酬的報酬が経済的価値であると考えるならば、ボランティア団体は経済ネットワークであり、ボランティア活動は経済ネットワーキングである。金銭的報酬を代償としないボランティア活動が経済ネットワーキングであることは、「常識」的に考えると意外に思えるかもしれない。しかし、このような古い「常識」を捨てることが激変期の現代を生き抜いていくため必要なのでないだろうか。

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