平川寛之君の文章

 

平川君は、現在中学3年生。最初にパソコンで文字を綴ったのは小学校5年のことです。3回目の関わり合いの時、いきなり、空梅雨のことを語りました。生まれて初めてかたちになった自分の言葉が、「にほん」を問題にしていたことにおどろかされました。そして、次の関わり合いの時、もっと驚く文章が綴られました。この年の9月11日に同時多発テロが起こったのですが、その11日後に彼が綴った文章は、今読めば、なおさら、重く感じられます。

その後、彼が綴り続けた文章は、いつもその時期の世の中のできごとが反映しています。アフガニスタンからイラクへと向かっていった世の中の流れの中で、彼はずっと胸を痛め続けてきました。

平川君は、緊張がたいへん強く、体を反り返らせてしまうことが多いのですが、2スイッチワープロを使用し、指先で軽いスイッチを押してカーソルを進め、その動きを止めることで、その行や文字を決定するというやり方をしています。

 

小学5年生

 

つゆぬいてなつがきた。にほんはさあどうなってしまうのかな。しんぱい。

(2001年7月28日)

すべてにさそってくにせんそうしたらなおのこととめられなくなるよね。

(2001年9月22日)

わたしおてつだいばあちゃんせんたくたたんでわらってはなしかけてくれた

(おばあちゃんが九州からこられていたことについてです。)

(2001年10月27日)

なごやのおばさんちにばあちゃんつれていったの。

(同じく、九州からこられていたおばあちゃんのことです。)

   (2001年11月24日)

けいきがとつぜんいじょうにわるくてさんぎょうせんそうがはじまってしまった。

(長引く不況のことについてです。)

(2001年12月22日)

しぬはなくつるぎをひきすずをならそう

(アフガニスタンの情勢が緊迫していたときのものです。)

           (2002年1月26日)

 

小学6年生

 

うにをたべすぎてしまいおなかばいきんになってしまったらしんぱいなんだ。じぶんがたくさんたべるときです。

(これから来る夏の食中毒のことが心配で書いたとのことでした。うには例えばという意味です。「誰が食べることなの」とたずねたら「じぶんが」と書いてくれました。)               

(2002年5月25日)

 

じゆうつかみたいきもちがつうじてもらいたいとおもいなきたかった。

(大人にわかってもらえなかったことを綴りました。)

(2002年6月22日)

むいしきがいけないほんしつをあかしたのでいやだ。じんるい

(テロの問題がイラクへと移る中で、人間の中に潜む「いけないほんしつ」に気づいたということを表現したものです。「誰のむいしきなの」とたずねると「じんるい」とこたえてくれました。)

(2002年11月2日)

ししへかつならてきいるまでつきすすむこと

(これも、イラクをめぐることですが、ていねいに内容を聞くことができませんでした。もちろん彼の願いは一つです。)

にぃいうゅあゃひかれすずのおときこえへいわがきた。

(2003年1月)

いけないころしてはにんげんいたみをわけあっていきていかなければいけない。

(2003年2月22日)

にくしみがあらそうしかないせきにんのれきしのはんせいをせまる。

(2003年3月22日)

(以上の3つの文章も、イラクをめぐる話です。)

 

 

中学1

 

そとうおかあさんくろうかけてありがとう

(2003年10月26日)

けいさつかしこいほしぜがひでものがさないといった

(夏休みに見た映画「踊る大捜査線」のことでした。)

(2003年9月20日)

あきとてもぐあいがわるいみたいだあきはてにてぶくろをはめてやりたい

(不順な天候のことを、秋を人に見立てて書いた詩です。)

(2003年10月25日)

にほんをみうしなってつくりわすれてなにをしているのかな

(2003年11月22日)

まちかねたちいさいあいのひをつけてよい。あすがたのしめるひがきたことゆめはのぞむさえむずかしい

(2003年12月27日)

じぶんじしんしらないことたくさんあるありがとおしえて。

(私に対して、教えてくれてありがとうと書いてくれたものです。)

(2004年1月31日)

たようさりかいすん

(多様さを理解するということです。)

(2004年2月28日)

 

 

中学2年

 

ちいさいへいわでくらすひとしあわせきょうむずかしいということがかなしい。

(イラクの民衆のことを思ったものです。この頃、日本人人質問題が世間では話題になっていました。)

(2004年4月24日)

 

のぞむことはまけてしまったあきらめからうまくたちなおってもらえたらとおもう

(2004年1学期)

ずっとのぞみてをさせえにっきをだきせかいかくちからじらいせいふのなきわるえげあ(2004年1学期)

とうきょうにいがたしぜんのちからちる

(中越地震のことを文章にしたものです。)

(2004年秋)

かなしみのこころつよくなみだこぼれいかされる

(同級生の友達がなくなりました。)

(2004年)

せんそうやいくさにさみてしこころ

(2004年)

 

(平成16年度後半の文章、日付があいまいで、申し訳ありません。)