小林俊宏君の言葉
小林俊宏君は現在小学校6年生。私は彼が小学校4年の5月に会いました。気管切開をしてあけたのどの穴から出る息で受け答えをしていた小林君は、ほとんど全身が動きませんが、私の問いかけに答えようとする強い意志に、言葉への大きな可能性を感じました。そして、最初の日にさっそく彼は文章を綴りました。その後、ゆっくり関わる機会を持つことを十分にはできないながらも、会うたびに、わずかに動く手を使ってスイッチを操作し、文章を綴ってきました。
こばやしとしひろ。ひこーきでくまらさす(2004年5月24日)
くまらさすの意味はよくわかりませんでしたが、ひこーきというはっきりとした表現が最初の彼の言葉となりました。
なぜあるけないの。(2004年6月22日)
2度目の言葉は、私たちには重い言葉でしたが、彼の心からの問いだったと思います。
としひろ。つぎよきなかまのしやしんなけ(2004年10月21日)
これは、仲間の写真のことを何か言おうとしたのだと思うのですが途中で終わってしまいました。
はさつしみてそちかさねてはえさせてください。ぬいなおるの。しからいしゅういかないの。(2004年12月16日)
これは、歯科での治療に関連した文章です。治療がしみたこと、うまく生えたらいいなということ、縫えばなおるのかなということ、来週の治療は?ということを綴ったものです。
としひろくまさんかってぷれぜんといかれなかったともだちにあげねばゆけえす(2005年8月10日)
この日の直前にみんなでディズニーランドに行ったのですが、そのとき行けなかった友達へのプレゼントのことを気遣って書いたものです。俊宏君のやさしさがにじみ出ているような文章でした。
としひろ。りかいしゃがすこしなんでこまってます。まねとはおもわれたくないよくやしいいいたいことはいっぱいあるのにだれすぎいまのせいかつ。なんとかならないかなあすきなことさがしたい。すこしむずかしいのがいいの。(2006年4月4日)
今の生活の中での切実な思いの吐露でした。もっとももっといろんなことを学びたいという思いがひしひしと伝わってきました。
としひろなつやすみまいにちたのしむことができなくてたいくつすぎた。しなかったのそんしたきもちする。がっこうがはじまるのがたのしみでしかたありません。おきなわにいきたい。うみがみたいから。このままどこにもいかないでおわるのはいやだ。うみがみたい。(2006年8月29日)
夏休みの思いです。海が好きだという気持ちがひしひしと伝わってきました。
としひろ2007.1.5たいくつあきあきこれではことしははじめからさびしいよ。ちゅうがくぶにいったらいっしょうけんめいがんばりたいよ。のんきににはしていられないよ。たくさんべんきょうしてあたまがよくなりたいんだ。おとなになるさようならこどもじだい。(2007年1月5日)
中学部に向けての抱負が語られました。冬休みは、ちょっと退屈だったそうです。
としひろなかなかりかいしゃがふえないでこれまでこんわくしていましたせんせいがなにもしてはくれないしつまらないせんせいがよくしごとをしたらうまくいくしきいてもらいたいからとてもまいにちがしんぱいです (2007年4月3日)
いよいよ中学部を直前に控えた春休みの思いです。いい出会いがあるといいですね。