柴田美優さんの言葉と詩

 




 
みゆさんは、熊本の小学5年生です。2002年8月18日、熊本で開かれた研究会でみゆさんと出会いました。担任の先生が自分のことを発表なさるということでお母さんといっしょに会場にお見えになっていたのです。ていねいな実践が積み重ねられていく実践を拝見して、私は、みゆさんには十分に文章を綴れる力が育っていると思い、研究会のあと、関わらせていただきました。そしてパソコンで書いた文章が次のものです。自分の名前を綴り、お母さんの名前を綴り、先生の名前を綴りました。もちろん私の知らない内容でしたので、みゆさんが自分で綴っていることが誰にもわかりました。そして、今いちばんやりたいことを書いてもらいました。

 

 

みゆ なおみ とみながさよこ たこやきをつくりたい (2002年8月18日

 

 

 

 2003年の夏、再びみゆさんとお会いすることができました。この1年の間に、みゆさんの表現手段には大きな変化が起こっていました。関わり手がみゆさんの手に手を重ねるように添えてペンを握らせてあげて、みゆさんの大きくなりすぎてしまう力を調整してあげると、自分で文字を綴ることができるようになっていたのです。

そのきっかけは、2003年の1月に山梨で開かれた研究会に熊本の先生方がいらっしゃって、あけぼの養護のゆうき君というお子さんが手にペン型マウスを使って文字を選ぶ姿をごらんになり、みゆさんにも使えないかということになったことでした。そして、夏、お会いした時には、鉛筆に手を添えて文字を書けるようになっていました。(その後、ゆうき君には、こんなふうにしてみんなつながりあっているんだねと伝えました。)

 そのときいただいたのが、次の詩と文章です。1年で大きく花開いたみゆさんの世界にとても感動しました。

 

 

「みんな大すき」

 

みゆは おかあさんが 大すきだよ

いつも おいしいごはんを つくってくれてありがとう

みゆはおとうさんも 大すきだよ ありがとう みゆのことをすきでいてね

いっぱい いっぱい すきでいてね

みゆはうまれてきてよかった  おとうさんとおかあさんのこどもでよかった

 

 

「わたしのおかあさん」

 

わたしのかぞくは4人です。おとうさんとおかあさんといもうとわたしです。わたしはかからだがふじゆうでひとりじゃうごけないしごはんもたべられないのでおかあさんがいつもいっしょです。いもうとのまりあは3さいなのでおかあさんのとりあいになります。わたしがおかあさんとじをかいたり、ごはんをたべているとじゃまをします。おかあさんはいつもまりあをおこるけど、わたしはしかたがないなとおもいます。まりあもおかあさんのことがすきだしいっしょにいたいんだと思います。わたしはみんなみたいにあそんだりはしったりできないけど、じぶんのきもちをみんなにわかってほしいからじをかいてきもちをつたえるのには、おかあさんがひつようです。いもうとはまだちいさいからおかあさんやわたしのきもちがわからないんだとおもいます。だからおかあさんはたいへんです。わたしのきもちもまりあのきもちもわかるからときどきなきそうになっています。そんなときわたしはおかあさんがかわいそうだとおもいます。わたしがじぶんでなんでもできる子だったらいいのにとおもうけれど、できないからくやしいです。でもおかあさんはいまのわたしがすきだといってくれます。わたしはおかあさんのこどもでよかったとおもいます。おかあさんありがとう。

 

 

 

 今年(2005年)の夏、また、みゆさんとお会いすることができました。みゆさんは、すてきな手作りの詩集をたずさえていました。

 そして、その中から、いくつかの詩を先日、担任の先生からメールで送っていただきました。それが以下の詩です。

 今年、みゆさんとは、ずいぶん大人の会話をさせていただきました。

「自分ひとりで文字を書く方法を教えて」という問いから始まって、将来のことにまで話が及びました。残念ながら、今の私には、まだ、みゆさんが誰の手も借りないで文字を綴るやり方を具体的に示すことができませんでしたが、どんどん大きくなっていくみゆさんの姿に、頼もしさを覚えました。

 

 

『ひみつのおはなし』  

              

いくみと いっしょに じがかけて

こころとこころで おはなしできて

みゆは ほんとうにうれしいです

いくみとみゆは

これから ひみつのおはなしをします

ひみつのおはなしは たのしいです

 

みゆは いくみとじがかけて

きょうは いい日です

とっても とっても                              

とっても とっても                                   

いい日でした                                       

 

*今年度から担任をしているせんせいと一緒に字が書けたことを、
もう一人の担任に
伝えてくれた詩です。

 

 

 

    『いっしょだよ』

 

みゆは いつかしんで 

どこにいくのかな

しんで

こころのなかに いくんだよ

しんでも みんなといっしょだよ

 

 

    『おそらにいるゆうだいくんへ』

 

ゆうだいくん さみしくないよ

みゆはいつも ゆうだいくんと いっしょにいるよ

いっしょにいて

いつも さみしくないようにしているからね

ゆうだいくん                                        

ひとりじゃないから                                    

だいじょうぶ                                          

 

*今年の6月に亡くなった小学部2年生の友達のことを思って書いた詩です。

 

 

      『てぶくろ』

 

こんどいっしょに あそぼう                        

いっしょに ごはんたべて                         

いっしょに かいものして

いっしょの てぶくろかう

 

 

         『ゆきは…』

 

ゆきが つめたくて しろいのは

こころのなかが しろいから

ゆきは つめたいけど

くちのなかに はいったら

あったかいよ

 

ゆき

いっぱいふって

みんなに

よろこんでもらってね

 

 

         『パパへ』

 

みんなが

みゆのパパは かっこいいっていうから

いっしょに しゃしんとったり

じをかいたり

もっとしようよ

 

 

       『おとうさん』

 

おとうさん

どうして てれるの

かっこいいと うれしいのに

みゆも おとうさんかっこいいとおもうよ

どうして てれるの

 

 

『おかあさんへのプレゼント』

 

わたしと おかあさんは

いつでも ひとつ

わたしは しょうがいがあって

ひとりで あるいたり

じをかいたり

たべたり

おふろにはいったりできない

だから 

おかあさんが

わたしのてとあしと

みんなひとつになっているみたい

 

わたしは

おかあさんに ごはんをつくってあげたい

おかあさんは いつもわたしとひとつだから

こんどは わたしがおりょうりして

ごちそうをつくろう

メニューは

ごはんと

ハンバーグと

ポテトサラダ

 

おかあさんは

わたしが つくるのまってて

わたしが ひとりでつくるから

テレビをみて

まっててね

 

そして

みんなで

いただきますをしようね

 

*この詩は今年度「子どものポエムコンクール」で優秀賞をいただきました。

 9月10日に表彰式があり、美優さんはとびきり嬉しそうな表情でした。