わかそよ ミュージカル 2005

 

生きてゆこう このまちで

    

 

 

 

 

 

 

 

 













『生きてゆこう、このまちで』

@ 街角


              上手でポラリス三人組がストリートライブの準備中。

              下手で署名活動をやっている作業所のメンバーたち。

    その前をまちの人たちが通り過ぎる。そのまま、ポラリスの前にすわる。


方波見「署名お願いしまーす」

阿部「お金がたりませーん」

山上「私たちのくらしを、まもるためでーす」

佐野「障害者自立支援法が法律になりそうでーす」

片山「費用のふたんがふえてしまいます。」

今田「これじゃあ、自立生活はもっとくるしくなってしまいます。」

藤原「わたしたちの作業所はどうなってしまうんでしょう」

水足「お名前を、お願いしまーす」

鉄平「(パソコン音声で)署名、お願いしまーす」

              と、下手袖から出てくる光生。

光生「何やってんだよ?」(黒子:井上)

中川「署名活動だよ」

光生「そんなことやったって、なんにも変わらないよ」

仲山「変わるか変わらないか、やってみなきゃわからないだろ」

光生「(鉄平に声をかける)それよりライブが始まるよ。いっしょに見ようぜ」

山上「おい、よせよ。鉄平君は行きたいなんて言ってないだろ」

光生「なにいってんだい。鉄平君とぼくは親友なんだぜ。なあ?」

              光生、とまどう鉄平の車椅子をごういんに押して上手の方へ。

仲山「どうする?」

藤原「しかたないわ。わたしたちだけでも続けましょう。」

方波見「署名お願いしまーす」

阿部「お願いしまーす」

長沢「ぼくらの声をきいてくださーい」

ポラリスのライブが始まる。

ポラリス北星「みなさん、ライブへようこそ。

私たちはポラリスです。」      

 

【歌 ポラリスのテーマ】

 探してごらん 北の夜空を 輝く星がある

 どんな時でも 君が進んでいく 道を指し示してる

 たとえ曲がりくねった道で 迷いそうになっても

 探してごらん 北の夜空を そこに希望がある

 

              拍手かっさい

通行人「かっこいいぞー!」

ポラリス北星「みなさん、どうもありがとうございます。」

    もう一度歓声があがる。

仲間たち「お願いしまーす。署名お願いしまーす」

              通行人が、署名のまえをとおりすぎる(下手へ)

暗転



A 鉄平の自宅前


              夕ぐれのなか、光生、鉄平の車椅子を押して来る(上手奥から)。

光生「よかったよなあ、あの歌。署名やってたよりずっとよかっただろ?なあ」

鉄平「……(困惑気味)」

光生「署名なんてさ、集めたってなんにも変わらないんだよ。そうだろう」

鉄平「……(ますます困惑気味)」

光生「お願いしまーす、で世の中変われば、警察はいらないよ、あはは…」

              自宅のチャイムを押し、母が出てくる(下手奥)。

母「はーい どなた?

あら光生君、どうもありがとう。いつもわるいわねえ。」

光生「わるいだなんて、そんなことないですよ。だって僕と鉄平君は親友ですから…」

母「……親友……そう… ありがとう。(涙ぐむ)」

光生「あれ、どうかしたんですか、おばさん?」

母「いいえ。ちょっと目にゴミが、はいっただけよ。ほんと、どうもありがとう

  母は車いすをおして、家にはいろうとする。

母「それじゃ、光生くんさようなら」

光生「じゃあ、またね」

              母、鉄平を連れて幕袖へ。

              一人残る光生。

光生「そう。僕と鉄平君は親友なんだぜーっ!」

暗転


B 公民館


片山「署名、なかなか集まらないねえ」

水足「どうしてなんだろう。いっしょうけんめいやってるのに…」

方波見「となりでやってたライブの方には、おおぜい人が集まってたのにねえ」

仲山「そりゃ、しかたないよ。ライブは楽しいけど、署名は楽しくないし…」

藤原「なにか署名が楽しくなる方法があればいいんだけどなあ」

              と、そこにポラリスの三人が来る。

ポラリス北星「ご協力しましょうか?」

藤原「あ、あなたたちは……」

ポラリス北星「はい、ポラリスです」

阿部「ポラリス?……」

中川「ポラリス?……」

              よく見ると、ポラリスのうしろに光生もいる。

佐野「あ、光生君じゃないか。」

方波見「いったい君はなにしにきたんだ?」

光生「そこでポラリスの人たちを見つけて、ついて来ただけさ。この前の歌に感動したから」

水足「なら、じゃま、じゃま。今、次の署名活動の相談中だから」

光生「わかったよ。じゃましないよ」

今田「でも、ポラリスさんに協力してもらうと言っても……」

片山「協力してください。あの、どうしたらお客さんが集まるんですか?」

ポラリス北星「お客さん?」

仲山「だってほら、この前のライブのとき……」

方波見「ああ、歌の方にお客さんいっぱいで、署名の方はガラガラだったよな」

ポラリス星来「歌いながら署名活動するっていうのはどうですか?」

水足「歌いながら?」

藤原「でも、わたしたち、歌なんて作れないし」

ポラリス北星「そんなことありません。声を出してごらん。きっと歌になります」

長沢「まさか……」

ポラリス北星「だいじょうぶですよ」

ポラリス星来「みなさんが、伝えたいことはなんですか?」

              ポラリスのギターに合わせて声を出すと、不思議と歌になっていく。

水足「みんなで、まちへ、くりだそう」

仲間たち「みんなで、まちへ、くりだそう」

水足「きょうは、きょうは署名活動日」

仲間たち「きょうは、きょうは署名活動日」

全員(ゆっくりと)「♪みんなでまちへくりだそう♪きょうは署名活動日♪」

阿部「いいねえ!」

 

【歌 署名活動の歌】

@みんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日

ちょっとどきどきするけれど 大きな声をだしてみよう

みんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日

Aみんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日

みんなのくらしをまもるため 勇気をだしてよびかけよう

 みんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日


             
歌い終え、大喜びの仲間たち。

中川「よし、じゃあ今度、署名活動のときに歌ってみようぜ」

仲間たち「おーっ!」

              と、そこへ息を切らせてかけこんでくる山上(下手)。

山上「大変だ大変だ!」

水足「遅いじゃないか」

藤原「いったい、どうしたの?」

山上「今ショートステイしている鉄平君、お母さんが病気なんだって」

光生「ええっ?」

山上「それで、これからずっとくらしていく施設を探しているところなんだってさ」

光生「そ、そんな!」

今田「鉄平君、僕たちと一緒に暮らしていけないのかなあ?」

方波見「そりゃ理想だけどさ、仕方ないのかもね」

藤原「彼が安心して暮らしていくためにはやっぱり施設なのかしら」

光生「なんだよ、みんな、ずいぶんと冷たいじゃないか」

片山「つめたいわけじゃないけどさ……」

光生「グループホームだってあるだろ」

仲山「グループホームって自分で身の回りのことができないと、はいれないんだよ」

山上「そうそう。だから僕は自分のことは自分でやるようにしている」

佐野「しょうがないんだよ、鉄平君にはできないことが多いから」

光生「そ、そんな……」

藤原「あなたは鉄平君の親友だって言ってたわよね。なにかできるっていうの?」

光生「そ、それは……」

水足「なにもできないくせに、えらそうに言うなよなよ!」

仲間たち「そうだよ」

              くやしくって、飛び出して行く光生。

光生「ちきしょう」

  心配そうにみおくる仲間

暗転


C 街角


              ポツンと光生。ポラリスが上手で遠くをみつめてたっている。

光生「鉄平君がこの町で暮らせないっていうのは、やっぱりおかしいと思う。なんでも自分でできた方がいいけど、できないことは手伝ってもらえばいい。できないことまで自分でやらないといけないなんて変だよ。それじゃ鉄平君はぜったいグループホームで暮らせないってことになっちゃうじゃないか!」

              と、そこへ現れるポラリス三人組。

ポラリス北星「おやおや、怒ってますね」

光生「怒ってるよ。当たり前じゃないか」

ポラリス北星「どうして怒るんですか?」

光生「それは……それは僕と鉄平君は親友だからさ」

ポラリス星来「親友ですか?」

光生「鉄平君にだってグループホームで暮らす権利があるはずだよ」

ポラリス星来「権利?」

光生「そう、権利さ」

ポラリス北星「だったら、うったえればいいんです」

光生「うったえる?」

ポラリス北星「みんなに声をかけてお願いするんです」

光生「どうやって?」

ポラリス3人「さあ?(そろって首をかしげる」

ポラリス星矢「どうすればいいんでしょうねえ」

                             仕方なく考える光生。

光生「そうだ、わかった! そうやればいいんだ。」

ポラリス北星「あらら、なんでだろう? 

こんなところに署名用紙を持ってました。」

光生「それ、なんだよ。」

ポラリス北星「なになにー。 鉄平君のような仲間でも はいることのできるグループホームを 作るための署名?」

              その用紙を強引にうばいとる光生。

光生「それ、よこせよ。」

ポラリス星来「それをどうするんです?」

光生「きまってるだろ、署名を集めるのさ」

ポラリス北星「お願いしまーす、で世の中が変われば、警察はいらないのでは?」

光生「うるさいなあ。じゃまするんならどっかいけよ」

              一人署名活動を始める光生。

光生「お願いしまーす。署名お願いしまーす。障害の重い仲間も入れるグループホームづくりのための署名でーす。僕の友たちに鉄平君という仲間がいて、お母さんが病気で、施設に入らなければならないと言われています。僕は反対です。遠くの施設なんかに行かなくったって、この町に鉄平君のような仲間も入れるグループホームができれば、そうすれば鉄平君も僕たちと一緒にこの町で暮らしていけるんです。だから、だからグループホームづくりの署名に協力してください。お願いしまーす」

              最初は誰も聞いてくれなかったものの……。

              途中からポラリス三人組が演奏を始めると光生のセリフの内容が歌となっていく。


【歌 生きてゆこうこのまちで】(ポラリスだけで)

♪あたりまえに生きてゆこう 一度しかない人生だから

あたりまえにくらしていこう もっと勇気をだしてみよう

もしそこに道がなければ  新しい道を切り開けばいい

あたりまえに生きてゆこう 一度しかない人生だから

 あたりまえに生きてゆこう 一度しかない人生だから♪

      
       
署名をしてくれる人が一人二人


光生「おねがいしまーす。グループホームづくりの署名に協力してくださーい。」

 

              そこへ、仲間たちがやって来る。

阿部「光生」

山上「署名集めてるんだね、鉄平君のために……」

方波見「わかった。僕たちも手伝うよ。なあみんな?」

仲間たち「おーっ!」


【歌 生きてゆこうこのまちで】

              一緒に歌い出す仲間たち。

              歌いながらの署名活動が続く。


♪このまちで生きてゆこう ともに育ってきたまちだから

グループホームさえあれば とおい施設にいかなくていい

ひとりではできないことでも ささえあいながら やりとげればいい

このまちで生きてゆこう ゆめをかたりあったまちだから♪

 

そこへショートステイ職員に車椅子を押され、鉄平が来る。

佐野「あれーっ!  鉄平君じゃないか」

藤原「あなた、ショートステイだっていってたじゃない……」

職員「それが、今日みんなの集まりがもあるからってどうして聞かないんですよ」

水足「あはは、鉄平君らしいや」

職員「それで、光生君というのは?」

光生「え? 僕だけど……」

職員「鉄平君がどうしても言いたいことがあるそうなんです」

光生「なに?」

鉄平「(機械でしゃべる)ありがとう。君と僕とは親友だ」

光生「そうだよなあ。」

 

              ガッツポーズする光生。

方波見「よーし、署名活動、がんばるぞ!」

仲間たち「おーっ!」

              ミュージカルじたての署名活動が続いて……。


【歌 署名活動の歌】

@みんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日

ちょっとどきどきするけれど 大きな声をだしてみよう

みんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日

Aみんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日

みんなのくらしをまもるため 勇気をだしてよびかけよう

 みんなでまちへくりだそう きょうは署名活動日


   歌のとちゅうでポラリスが上手にきえる。


光生「あれ?ポラリスは?」

仲間たち「どこへいったんだろう?」「どうしたんだろう?」

   流れ星がながれる。

光生「M87星雲にでも、帰ったんじゃないか?」

仲間たち「なにいってんだい」「ハハハ…」

   影から「ポラリスのテーマ」が聞こえてくる。

UFOがとんでゆく。


【歌 ポラリスのテーマ】


♪ 探してごらん 北の夜空を 輝く星がある

  どんな時でも 君が進んでいく 道を指し示してる

(全員)たとえ曲がりくねった道で 迷いそうになっても

  探してごらん 北の夜空を そこに希望がある

 

  探してごらん 北の夜空を 輝く星がある

  どんな時でも 君が抱いている 夢を指し示してる

  でこぼこだらけの道で つまずきそうになっても

  探してごらん 北の夜空を そこに未来がある♪


カーテンコール


  【署名活動のうた】の曲にあわせてカーテンコール