ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> c. 国際会議・シンポジウム >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」 「国学的方法」とは何か−神道と日本文化研究の方法的視座−(シンポジウム・共催:神道宗教学会) | |||
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1.開催目的 國學院大學21世紀COEプログラムのテーマに掲げられた「国学的研究発信」に関わって、学問の方法としての「国学」とは何かという問題について、学外の、国学を研究テーマとする研究者と意見を交換することによる理解の深化を目的とした。 最新の研究動向を踏まえた国学の学的性格等についての議論は、すでに「国学研究会」が2回開催されており、そこでは学内の事業推進担当者・COE研究員をはじめ、教員・大学院生等も加わり、より専門的な議論が行われている。特に11月8日に行われた第2回国学研究会では、シンポジウムの発題者である鈴木暎一氏と前田勉氏によって国学研究の論点の把握がなされた。 今回のシンポジウムではこの「国学研究会」の成果を踏まえつつも、神道宗教学会と共催という形態を取ることによって、学内のみならず学会や神社関係者にも対象を広げ、国学研究の現状と問題を喚起することにより、本学COEプログラムの理念・目的の周知をも目指した。 2.開催日時 平成15年12月6日(土)13:00〜17:30 3.開催場所 國學院大學120周年記念1号館1105教室 4.発題者・コメンテーター・司会(敬称略) 発題者 鈴木 暎一(茨城大学教育学部教授) 前田 勉(愛知教育大学教育学部教授) 青木 周平(國學院大學文学部教授・事業推進担当者) コメンテーター 遠藤 潤(國學院大學日本文化研究所助手) 浅山 雅司(國學院大學日本文化研究所助手) 松本 久史(國學院大學日本文化研究所助手) 司会 阪本 是丸(國學院大學神道文化学部教授・事業推進担当者) 5.シンポジウムの詳細 「国学的」な研究方法と何かというCOEプログラムの根幹にかかわる問題に関し、3人の発題者から提起された。 まず、鈴木暎一氏による自身の国学研究を回顧しつつ、史的立場による研究アプローチの方法と課題が提示された。尾藤正英氏や勝俣鎮夫氏の近世社会論を踏まえ、近世社会が中世とは異なり、社会構造が安定化し、「イエ」意識の成長が見られ、そこに立脚した職分論が成立したことを述べ、その中で国学が成立していったことの重要性や近代との関連性を指摘した。そのうえで、国学の現代の意義については社会の不安定化の中での人心の動揺による諸問題に対して、解決のヒントになりうるのではと総括した。 次に前田勉氏から、近年の思想史研究の動向をふまえつつ、自身の国学研究の方法、および今後の展望について実例を挙げ、報告があった。天皇制イデオロギーの国家編成に寄与したという従来の国学に関する観点や近年の近代国民国家論における国学の役割についての議論を踏まえながらも、批判にとどまらない新しい視点が必要であるとし、別の角度からの考察を試みるとした。具体的には中世以降流布した「心だに 誠の道に叶いなば 祈らずとても 神や守らん」の歌を取り上げ、「心」と「神」の一体意識が、近世社会の経済的発展の中で階層が分離していく社会・経済動向の中で、両者の分離が認識されていったことを指摘し、その状況下で中世的な「心」「神」一体観を否定した宣長の思想が理解できるとした。 青木周平氏は本プログラムにより行われている本学図書館所蔵の武田祐吉文庫の調査をふまえて、『古事記』研究における武田祐吉の神観念を抽出し、それが本居宣長から武田、さらには折口信夫に至るまで継承されていくという国学の学問上の問題・意義を提起した。また、日本文化研究所所長でもあった内野吾郎が、昭和50年代に提起した「日本文化学としての新国学」の再検討も必要であると論じた。 暫時休憩を挟み、遠藤潤・浅山雅司両氏と松本による、発題に対するコメント・質問等を行った。引き続き、コメンテーターの質問に対する3氏の応答、および質疑が行われた。それらの討議によって、国学の成立した近世社会の捉え方、および、「イエ」意識の成長および系譜意識の発達と国学との関係に関して議論された。また、研究方法としての国学とは何かという問題にまで意見が及んだ。 文責:松本 久史(日本文化研究所助手) |
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