ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」 沖縄・竹富島「種子取祭」調査 | |||
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沖縄・竹富島「種子取祭」調査 日 時 平成15年11月11日(火)〜17日(月) 場 所 沖縄県八重山郡竹富町 参加人員 野村純一(COE事業推進者) 小林基裕(瑞木書房社長) 長野隆之(COE奨励研究員) 大堀英二(國學院大學大学院博士課程後期) 内 容 本調査の目的は、竹富島種子取祭に見られる神観念の調査にあり、平成15年度の夏に行われた奄美のショチョガマ・平瀬マンカイ、竹富島のユーンカイ(世迎い)における神観念の調査と一連のものである。沖縄・石垣島から船で10分の竹富島では、11月7日(金)から15日(土)まで種子取祭が行われる。この行事は元来世持御嶽に豊作を祈願する祭りであり、竹富島を二分するハサマ集落とナカスジ集落から各1日ずつ芸能の奉納が行われる。 竹富島の種子取祭調査は、2003年11月11日(火)から17日(月)に行われた。13日(木)は奉納芸能初日で、この日はハサマ集落、翌14日(金)にナカスジ集落の芸能奉納が行われた。13日の初日は、まず朝5時前後に「ミルク起こし」、「干鯛の儀」が行われ、午前10時頃に庭の芸能が始まった。正午頃に舞台芸能が始まり、さまざまな芸能が奉納され、午後5時頃に終了となった。 奉納芸能の特色は、農耕の模擬的な所作、および武芸の披露にある。特に草を刈る様子、鍬で耕し種を蒔く様子等独特な所作は、明らかに農耕予祝儀礼の形式を踏んでいることが知られる。また、なかでも特徴的な行事として、「ミルク」と呼ばれる神が子供たちを引き連れて現れ、さまざまな穀物や草鞋を持ち来て目出度い歌をうたうという行事がある。このミルクは弥勒のことと思われ、穀物や子宝をもたらすと考えられているようである。 この奉納芸能が終わると、午後8時頃からユークイ(世乞い)の祭りに入る。集落の人たちは、各集落の本主の家に集まり、そこから、ツカサに導かれ道行きの歌をうたいながら、各家を廻り、酒とニンニクの漬け物でもてなされる。この行事が終了するのは集落により異なるが、深夜に及ぶ場合もある。 翌14日は、ナカスジ集落の芸能となり、午前5時から「イバン返し」が行われる。続いて「干鯛の儀」から始って、芸能の演目がいくつか異なっているほかは、前日と同様のスケジュールで行事が行われる。 上記の神事に関する研究は別途に報告する予定であるが、これらの神事を通して見られる特徴は、穀物に対する強い信仰である。本調査に先立って行われた奄美のショチョガマや平瀬マンカイ調査では、行事の中で稲霊を具体的に呼び迎えることが行われ、しかも、稲霊は海の彼方の常世から招いていたことが分かった。現在の奄美では稲作は限られた地域にしか残されていないが、それでも稲霊を招く神事が今日にも継承されているのは、稲がいかに重要な穀物であったかが知られるとともに、稲を耕作する民族の特別な信仰が存在しているように思われる。 一方、竹富島で行われる種子取祭もユーンカイ(世迎い)も五穀に対する信仰の表出された神事である。そこには、稲作以前の五穀に対する信仰が息づいており、海の彼方の常世から神がもたらす、神授のものとしての五穀にかかわる事が行われていることから、稲霊と同様に、五穀にも神の姿を認めていることが知られる。そこにもまた、五穀を耕作する民族の特別な信仰が生み出されているのである。 (文責:大堀英二) |
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