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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
中国調査 2002年12月23日〜12月30日 
公開日: 2003/5/25
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「基層文化としての神道・文化に関する調査研究」に関する研究調査報告(2)

 中国調査報告

用 務
 中華人民共和国における農耕文化に於ける祭祀・儀礼の発生と展開に関わる考古学調査

用務地 中華人民共和国
期 間 2002年12月23日(月)〜12月30日(月)7泊8日間

出張者 吉田恵二(國學院大學教授)
   岩崎厚志(國學院大學助手)
   加藤里美(COE研究員)


調査経過報告

12月23日(月)
新東京国際空港→北京国際空港
 北京国際空港→鄭州空港→鄭州市内へ 積雪で大幅に遅れる。宿舎着は深夜となる。

12月24日(火)
河南省文物考古研究所訪問
 孫新民氏(所長)、秦文生氏(副所長)、潘偉斌氏(研究員)、袁広闊氏(副研究員)と会見
《会見内容》
 河南省は黄河中流域に位置しており初期農耕形態を示す文化が盛隆する地域として周知の地域である。特に、雑穀文化と稲作文化の接触する地域として注目すべき文化が裴李崗文化である。特に賈湖遺跡は雑穀文化である裴李崗文化に属しながらも「コメ」が出土しており、物質文化的にも精神文化的にも注目すべき遺跡であるため、当方も河南省文物考古研究所でも今回の訪問地として準備を進めていた。しかしながら、予定日前夜から断続的な雪に見舞われ、賈湖遺跡までの道路状況が非常に悪く、危険であると河南省文物考古研究所所長孫新民氏が判断したため、賈湖遺跡見学を断念した。代わりに、賈湖遺跡よりも近い裴李崗遺跡の見学とした。また、河南省文物考古研究所が所有する賈湖遺跡をはじめとした裴李崗文化の多くの遺跡の遺物の一部を見学させていただき、来年度訪問の際にはそれらを実見し観察する許可をいただいた。賈湖遺跡は悪天候による道路状況の悪化のため今回の踏査は断念し、次回以降の遺物調査と併せて行うことを決定した。

河南省博物館 参観
河南省博物館は河南省内における先史時代から現代までの資料を収集展示している。特に殷代の著名な遺跡が省内より確認されているため

河南省文物考古研究所
河南省文物考古研究所
会見風景
会見風景
収蔵庫見学
収蔵庫見学
出土遺物実見
出土遺物実見
出土遺物の解説
出土遺物の解説

河南省博物館



12月25日(水)
裴李崗遺跡 踏査

 今回、賈湖遺跡の踏査が天候上の理由で実施できなくなったが、河南省にて学史上重要な裴李崗遺跡の踏査が実施できた。当遺跡は磁山・裴李崗文化という中国新石器時代研究において先駆的に重要な遺跡であり、本研究において重要視する、日本の基層文化としての農耕文化としての稲作出現段階以前の遺跡であり、その後稲作を受容していく点で、基盤の変化と文化要素の変容の比較研究において重要な地域の遺跡である。また、遺跡の立地は実際に踏査して初めて明らかになるため、今回の踏査は非常に有意義であった。

裴李崗遺跡にて
裴李崗遺跡にて
裴李崗遺跡発掘区
裴李崗遺跡発掘区
裴李崗遺跡全景<br />
裴李崗遺跡全景



新鄭市へ

 新鄭市は河南省の省都鄭州の南方に位置し、研究所の工作站や博物館を独自に有する他、春秋戦国時代の鄭国の都としても栄えており、それに関する遺跡や実際の城跡が残されている。

工作站にて
工作站にて
新鄭市博物館
新鄭市博物館
車馬坑展示施設
車馬坑展示施設


12月26日(木)
鄭州→山東済南へ  国内線にて移動

山東大学 訪問
 欒豊実氏(教授)方輝氏(教授)蔡鳳書氏(元教授)らと会見

《会見内容》
 山東大学は昨年医科学系大学を統合してより大きな重点大学となり、50周年を迎えた考古学研究室は考古センターを別に設け、研究体制に力を注いでいる。精力的に省内の遺跡の発掘調査、研究活動を実施しており、その成果と、本プロジェクトの関連性は非常に強い。今回の会見で本プロジェクトの趣旨・計画を説明し、具体的な協力について快諾を得た。平成15年度に予定している現地調査と研究センター主催の学会への発表も含む参加について好意的な回答を得た。
 また、大学内に博物館を設置し、大学で現在までに調査した発掘・収蔵資料を公開しており、本プロジェクトに関係する資料も多数所蔵・展示しており、それらの実見・観察についての依頼についても検討いただけることになった。

山東大学
山東大学
山東大学文学院
山東大学文学院
会見風景
会見風景
収蔵庫にて解説を受ける
収蔵庫にて解説を受ける



山東省博物館 参観

山東省博物館
山東省博物館
 山東省の歴史を通史的に展示している。大学や研究所にてそれぞれ発掘調査出土資料が収蔵されているため、一番の目的である農耕発生段階に関する時期の遺物の展示量は必ずしも、豊富とはいえない量であった。しかし、漢代の画像石が豊富であり、日本の弥生時代併行段階における、様々な様相が描かれており、有用であった。


山東省文物考古研究所 訪問
 李傅榮氏(所長)、読佩華氏(副所長)、劉延常氏(副研究員)および趙輝氏(北京大学教授)らと会見

《会見内容》
 本研究所は山東省における発掘調査を古くから手掛けてきている機関であり、過去調査において得られた収蔵資料は膨大であり、現在まで整理作業が及ぶものも含まれている。特に本プロジェクトにおいて農耕の発生から稲作を受容していく段階の理解は重要であり、本地域の場合、日本との関係が過去の研究成果や実際の位置関係上無視することができず、当該期の遺跡の発掘調査のほとんどを、本機関で実施しているため、遺跡の踏査をはじめ、遺物の実見、意見交換といった面で、その関係を築いていくことは重要案件であった。会見により、本プロジェクトの趣旨・研究内容を説明し、具体的な協力を得られることを確認できた。また、平成15年度に現地調査を予定していることに対しても概ね理解を頂いた。

山東省文物考古研究所
山東省文物考古研究所
会見風景
会見風景
収蔵資料実見
収蔵資料実見



12月27日(金)

 山東省は黄河下流域に位置しており、中流域の裴李崗文化との接触点でもあり大きく影響をうけている。山東にはそのころ後李文化が栄えていたことが1980年代ころから指摘されるようになった。当該地域は黄河中流域よりも雑穀文化と稲作文化の接触が遅いものの、やはり2つの文化の接触する様相を捉えることができる。後李文化の遺跡である西河遺跡と後李遺跡はいずれも河川から程近い小高い地点に立地している。また、後李遺跡は複合遺跡で戦国時代の車馬坑が検出されており現在ではそこに車馬坑博物館が建設されている。西河遺跡も著名な龍山文化の名称ともなった城子崖遺跡が隣接しており、連綿と同様の立地が使用されていたことが明らかにされつつある。城子崖遺跡には博物館が建設されておりそこには西河遺跡出土の遺物が収蔵されている。ただし、遺物の大部分は済南の山東省文物考古研究所に所蔵してあり、現在も整理中であることから、当方との共同研究は方法をよく考えて行うことができるという協議結果となった。

山東省後李遺跡 踏査

後李遺跡
後李遺跡
臨シ中国馬車博物館
臨シ中国馬車博物館
車馬坑の真上を走る高速道路
車馬坑の真上を走る高速道路



山東省城子崖遺跡 踏査

城子崖遺跡
城子崖遺跡
城子崖遺跡
城子崖遺跡
城子崖遺跡博物館
城子崖遺跡博物館



山東省西河遺跡 踏査

西河遺跡
西河遺跡
西河遺跡遠景
西河遺跡遠景



12月28日(土)

済南→北京へ

会見風景
会見風景
北京大学 訪問
 高崇文氏(教授)、徐天進氏(教授)、斉東方氏(教授)、孫華氏(教授)らと会見

《会見内容》
 北京大学考古文博院は中国考古学界を常にリードしてきており、また、多くの研究者を輩出している。また、中国全土の各時代の調査研究の成果が集約されており、本プロジェクトに関して各方面で協力を得ることは成功のための必要条件である。今回訪問し、本プロジェクトの趣旨・計画を説明し了承していただき、具体的な調査に関して協力頂くことに内諾を得ることができた。



12月29日(日)

中国農業史博物館
中国農業史博物館
中国農業史博物館 参観

 北京市西北部に位置する本博物館は、中国の農業関係資料を多数所蔵展示している。農業発生期の出土品、検出された植物遺存体のデータに始まり、各種農具の変遷や農業技術の発展について、展示してあった。今回は参観するのみであったが、出土品で実見すべきものもあったため、今後機会を改め交渉する必要性がある。

資料収集と文献収集
 中国国内で発行されている関係文献は北京に集中しており、余裕を持って北京を訪問する予定は今回に限られるため、日本国内では入手困難な文献について調査し、必要なものについてはリスト化、コピーを図った。



12月30日(月)

会見風景
会見風景
中国社会科学院考古研究所 訪問

 王巍氏(副所長)王正慶氏、朱岩石氏、朱延平氏および李伯謙氏(北京大学教授)らと会見
《会見内容》
 社会科学院は中国の国家的なプロジェクトを司る機関であり、協力を得ること無しに調査研究を実施することは不可能である。今回訪問し、本プロジェクトの趣旨・計画を説明し了承していただき、具体的な調査に関して協力頂くことに内諾を得ることができた。



北京国際空港→新東京国際空港 帰国


本調査の成果

 今回の各地訪問は来年度以降の農耕文化に於ける祭祀・儀礼に関する研究活動を進めるための協議が主な目的であり、概ね達成された。加えて各地における遺物の実見および遺跡の踏査、現地研究者の見解から当該地域の研究動向が明らかになった。2月末から予定している中国華南・華中地方の研究調査とあわせることで具体的な研究計画の遂行が可能となり、より多くの成果が期待できる。

 
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