ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」 和歌山県調査 | |||
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1 調査目的 今回の調査は、「神道の形成と発展に関する研究」グループの推進事業「神社と神道に関する基礎データの収集とその分析・研究」の一環であり、真言宗の聖地高野山との関わりが深く、神道と仏教の関係を探る上での一典型となりうる丹生都比売神社(和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野)における、歴史的な境内状況の把握を行うために実施した。 具体的には、報告書の刊行がなされていない、神社本殿付近の発掘調査の資料収集を行い、かつ実際の現場に携わった方より調査の詳細に関する説明を受けることで、当該神社の歴史的発展の過程を、多角的な視野から解明することを目的とする。 2 調査日 平成17(2005)年11月4日(金)〜5日(土) 3 調査先 和歌山県立紀伊風土記の丘(和歌山県和歌山市岩橋) 4 調査実施者 加瀬 直弥(21世紀研究教育計画嘱託研究員) なお、この調査は藤井弘章(日本文化研究所専任講師)とともに実施した。 5 調査の概要 今回は、財団法人和歌山県文化財センターによる『平成6年度丹生都比売神社防災工事に伴う丹生都比売神社境内遺跡発掘調査』の概要に関する資料を、紀伊風土記の丘で閲覧する機会を得た。その上で、当時発掘調査に携わった土井孝之氏(和歌山県文化財センター)から、発掘当時の状況を確認した。 6 調査で得られた成果と課題 今回の出張調査によって、特に中世における丹生都比売神社の境内整備の状況と、信仰形態の一端を把握することができた。すなわち、そこから出土した土壇や、確認される大規模な盛土が、(1)嘉元年間(1303〜1306)に作成された『天野宮造営日記』に見られる造営の時期とほぼ一致し、(2)それより以前の整地が確認できないこと、また、(3)鎌倉前中期のものと見られる経筒が複数出土していること、などの状況を確認することができた。 ただし、当該発掘調査は表題にもあるように、火災対策のための火災報知機や消火装置の設置に伴って実施されたきわめて範囲の限られた調査であり、そもそも、14世紀初頭における神社造営の具体像や、神社における経筒の出土状況などは、全国的なデータの蓄積が十分なされているとは言い難い面もある。したがって、丹生都比売神社における神仏関係の特徴等を把握するためには、今回の出張調査で得られた成果を参考にしつつ、文献史料の分析など、さらなる検討が必要であろう。 なお、調査日程中、丹生都比売神社が刊行を計画している『丹生都比売神社史』編纂に携わる方々と今回得られた情報などをもとにした意見交換を行い、また、丹生都比売神社と山岳修験との関係などに関する資料収集も実施した。 文責 加瀬直弥(21世紀研究教育計画嘱託研究員) |
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