ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」 京都府調査 | |||
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1.実施目的 これまでの「神社と神道に関する基礎データの収集とその分析・研究」事業において明らかになったのは、神社が様々な社会的影響を受けつつ神祇信仰を維持し続けてきたという点である。神社祭祀についても、時代時代における社会的影響や、地域的な特徴を保ちつつ行われているものと考えられる。今回の調査は、比較的豊富な文献等史料がある賀茂御祖神社・賀茂別雷神社で行われ、平安時代以来、天皇からの幣帛が奉られ、かつ多くの人々に親しまれてきた賀茂祭を対象とし、祭祀及び神社の歴史的経緯を把握する上での基準を設定することを目的とする。 2.調査日 平成18(2006)年5月14日(日)〜15日(月) 3.調査地 賀茂御祖神社(京都府京都市左京区下鴨泉川町) 賀茂別雷神社(京都府京都市北区上賀茂本山) 4.調査参加者 岡田莊司(事業推進担当者) 加瀬直弥(研究開発推進センター講師・COE事務局) 5.調査の概要 5-1.祭祀斎行前日(14日) 賀茂御祖神社では、勅使臨席のもとで行われた社頭の儀の習礼を実見した。社頭の儀とは、天皇からの幣帛を神前に奉る賀茂祭の核心ともいうべき儀礼である。さらに、神社境内における準備状況、とりわけ神饌調理についての説明を受けた。その後、賀茂別雷神社に移動し、境内の準備状況を見学した。 5-2.祭祀斎行日(15日) 賀茂御祖神社・賀茂別雷神社両社において、祭礼の行列を見学の後、社頭の儀を実見、映像資料として記録した。なお、賀茂別雷神社では祭典終了後、実際に供進された神饌を調査する機会を得た。 6.調査で得られた成果と課題 賀茂祭は、天皇に近い内廷官衙が祭祀に関与するという、朝廷神社祭祀の新しい形態を有して、平安時代初期に勅祭となった。それ以来、現在も祭儀が行われ続けているが、不変の儀礼作法が変わらず行われ続けていた訳ではない。祭自体の中止といった事例の他にも、賀茂別雷神社所蔵『賀茂社嘉元年中行事』の記述にあるような、作法の違例、変化が史料上確認される。 冒頭にも記したように、今回の調査は、そうした中での変化を明確にするためのものであるが、一定の成果を得ることができた。例えば神饌一つとっても、両社とも、文献等から過去の事例を導きだし、それを参考にしつつ調理、配膳法を確立してきたことが明らかになった。しかしながら、配膳の別形態がある(例えば京都府総合資料館上賀茂神社文書の『賀茂社秘訣』に示された賀茂祭の時の配膳図は、今回調査したものと相違する)点等を踏まえると、現在に至るまでに複雑な経緯をたどっていることも理解できた。今後の拠点における研究においては、現行祭祀の作法の確立過程も当然把握すべきであるが、その際、別の作法が生じた原因や背景も、祭祀に関わった神職等関係者の動向や、時代時代の社会状況を踏まえた上で検討を重ね、その上で、維持継承されてきた祭祀の要素と変化点を明らかにする必要があろう。 末尾ながら、賀茂御祖神社、賀茂別雷神社の宮司以下神職のご厚誼に御礼申し上げたい。 文責 加瀬 直弥 |
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