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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
日本文学平成14年度調査・研究会 
公開日: 2003/6/25
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1、『「神観念」形成における比較文化論的研究』班

 辰巳正明(COE事業推進担当者)
青木周平(COE事業推進担当者)
城崎陽子(COE研究員)
大館真晴(COE奨励研究員)
廣田律子(専門的知識の提供者)
  この研究は、日本における神観念の形成について、中国西南地域少数民族の儀礼文化・伝承文化との比較研究によって明らかにしていくことを目的としている。文学グループが取り組む「日本における神観念の形成とその比較文化論的研究」の「比較文化論的研究」を担う部分であり、アジア的視点での比較研究といえる。この意味においては将来的には日中基層文化の比較研究に拡大させ得る可能性を探る研究である。
 本課題の平成14年度事業としては、その研究目的の明確化、研究スタッフの組織化、研究方法についての検討と現地調査の準備を行った。

 以下その活動記録を記す。

(1)平成14年10月15日 午前10時〜午後1時 (辰巳・廣田・城崎)

21世紀COEプログラム推進にあたり研究計画に沿った中国西南地域少数民族の選択と現地における調査内容について打ち合わせ、平成15年度の調査対象をトン族とミャオ族に定めた。

(2)平成14年10月24日 午前10時〜午後3時 (辰巳・廣田・郎櫻・夏宇継・城崎)

中国社会科学院の郎櫻研究員他を交え、中国国内において調査をする際の交渉方法や手段、それに伴う社会科学院からの知識の提供について話し合いをし、覚書の下書きを作成した。

(3)平成14年11月7日 午前10時〜午後1時 (辰巳・廣田・城崎)

廣田氏が中国西南地域少数民族に関する資料を持参し、研究の現状についてレクチャーを受けた。中国社会科学院との研究協力覚書の作成を行った。

(4)平成14年11月10日 午後2時〜午後4時 (辰巳・廣田・青木)

先回協議した研究協力覚書について社会科学院からの回答書が送られてきたことにより、その内容を翻訳し、検討を加えた。

(5)平成14年12月10日 午前10時〜午後1時 (辰巳・廣田・城崎)

中国西南地域少数民族、特に「トン族」および「ミャオ族」についての行事や食習慣、祖先祭祀について廣田氏にレクチャーを受ける。

(6)平成15年1月9日 午後2時〜午後5時(辰巳・城崎)

中国西南地域における少数民族のなかでも、特に平成15年度の調査対象として選択したトン族についての文献資料の提供を廣田氏から受ける(郵送)。これらの資料は、百冊を越えるシリーズの一部で、国外への持ち出しが非常に難しく、日本国内では入手できない貴重な資料である。なお、本資料はデータベース化作業が進められている。

(7)平成15年1月14日 午後2時〜午後5時(辰巳・城崎・廣田)

3月に予定されている中国調査に先立ち、様々に予想される準備等の問い合わせが中国側から送られてきた(1月10日付)。この内容を検討し、国際電話によって中国側と折衝の後返書を作成した。

(8)平成15年1月31日 午後2時〜午後5時(辰巳・城崎)

ここまで廣田氏から提供された中国文献や、調査した中国少数民族に関する調査報告や論文等の一覧を作るに当たっての方針や形式について話し合いがもたれた。それぞれの文献は、書籍に関しては目次を拾い、かつサマリーを添付する形でデータベース化することが確認された。

(9)平成15年2月10日 午後2時〜5時(辰巳・城崎)

3月の中国調査に先立って、具体的な訪問先(中国社会科学院・北京師範大学に決定した)と訪問した際に催される講演についての打ち合わせ、資料の作成等行う。

(10)平成15年3月1日 午後1時〜4時 (辰巳・城崎・須永・大館・大堀)

中国調査に先立ち、最終的な打ち合わせを行った。具体的には、携帯機器や買い入れを予定している書籍・資料等の確認、訪問先の所在の確認と訪問順コースの確認等である。

(11)平成15年3月12日〜16日 (辰巳・廣田・城崎・須永・大館・大堀)

中国調査日程およびスケジュールについては以下の通り。
3月12日(水)18:10発 21:10着 成田―北京 京倫飯店泊(以下全日程を通じて宿泊は京倫飯店)。
3月13日(木)9:00中国社会科学院訪問。14:00中国社会科学院にて講演会開催(辰巳正明氏、郎櫻氏による講演)。
3月14日(金)9:00北京師範大学訪問。14:00中央民族学院訪問。
3月15日(土)9:00北京図書城、琉璃廠古書店にて資料収集。14:00 白雲観(道教寺院)、法源寺(仏教)、天壇訪問。
3月16日9:00故宮博物院訪問。 15:10発 19:05着 北京―成田。


 なお、15年度の調査予定地としては、中国貴州省のトン族地区及びミャオ族地区が選ばれていて、如上の調査・収集が行われる。
 また、中国古代の儀礼研究については、「三礼研究会」として平成14年度に立ち上げられ、大学院生を含めた研究会が続けられている。

2、『日本人の「神観念」形成に関する調査研究』班

 野村純一(COE事業推進担当者)
倉石忠彦(COE事業推進担当者)      
小川直之(COE事業推進担当者)
須永 敬(COE研究員)
長野隆之(COE奨励研究員)
 この研究課題は日本文学専攻グループが取り組む「日本における神観念の形成とその比較文化論的研究」の、日本研究に該当するもので、まずその計画の第一歩として琉球諸島における神観念形成の研究を行うことを目的としている。
 本課題の平成14年度事業としては、研究目的の明確化、研究スタッフの組織化、研究方法の検討と現地調査を行った。
 以下では、沖縄本島ならびに八重山諸島における現地調査の経緯を研究活動の経過として示しておく。

(1) 研究活動の経過

<1>沖縄本島における調査研究

調査日程平成14年12月20日〜22日(2泊3日)
調査地沖縄県那覇市・本部町・糸満市など
調査者小川直之(COE事業推進担当者)・須永 敬(COE研究員)・長野隆之(COE奨励研究員)
調査の概要平成14年12月20日(金)那覇市 波上宮・三文殊公園御嶽の調査
12月21日(土)普天間宮・金武観音寺・座喜味城跡・今帰仁城跡・本部町備瀬地区調査
12月22日(日)玉陵・首里城・弁ヶ嶽・斎場御嶽・受水走水・南山城跡・糸満白銀堂・糸満門中墓調査
 以上の日程で現地調査を行い、次の三点の課題を析出しながら沖縄本島における神観念形成の実態とその特質の把握につとめた。
 (1)沖縄における宗教施設と聖地構成に関する現地調査〔波上宮・三文殊(サンモウジ)公園御嶽・普天間宮・金武(キン)観音寺・末吉宮・白銀堂〕、(2)琉球における王権と宗教に関する現地調査〔座喜味城跡・今帰仁城跡・首里城・玉陵・斎場御嶽・南山城跡〕、(3)沖縄の民間祭祀に関する現地調査〔本部町備瀬地区・弁ヶ嶽・受水走水(ウキンジュハインジュ)・糸満市門中墓〕の三点である。
 上記調査の実施内容とその成果については、日本文学専攻グループの研究会(平成15年2月14日実施)において報告を行なった。また、日本文学専攻グループ作成の研究報告書(平成15年3月作成)に調査の詳細を掲載した。
 沖縄本島における調査研究の総括と課題を述べておくと、本年度の如上の現地調査は、沖縄研究の開始にあたっての予備的調査の実施であり、本年度はこれと並行して文献調査も行った。蓄積ある沖縄研究文献を整理し、本研究課題に関わる諸議論の概要を把握するとともに、短期間ながらも沖縄本島における現地調査を実施したことにより、多様な民俗宗教のあり方、およびその重層性を効率的に把握することができた。さらに現地調査後に速やかに実施された研究会において調査の成果を公表し、研究会参加者との討議を行うことで、今後の方向性をより明確なものとすることができた。
 上記の現地調査・文献調査・研究会における研究活動の総括により、以下の3点を今後の本研究推進にあたっての沖縄本島調査の課題として設定した。

(1)聖地に関する伝承文化の調査

琉球八社、グスク、御嶽などの分析から、聖地をめぐる神観念を検討。

(2)祭礼・儀礼における伝承文化の調査

国頭地方におけるシヌグ祭、歌謡などを通じて、芸能のなかの神観念を検討。

(3)ムラ社会における伝承文化の調査

本部町備瀬地区など、具体的な調査地の生活世界における神観念の検討。


 平成15年度の沖縄本島調査においては、上記の研究教育課題に基づきつつ、現地調査・文献調査を実施するとともに、他地域との比較考察も積極的に推進していきたい。また、その研究成果については、順次これを公表していく予定である。

<2>八重山諸島における調査研究
 直接現地に赴く。フィールド調査を試みる。今回の設定時日とそれに伴う具体的な内容は次の通りである。
調査日程平成15年3月23日(日)〜3月27日(木)(4泊5日)
調査地沖縄県八重山郡与那国島、石垣島、竹富島
調査者野村純一(COE事業推進担当者)
調査協力者小林基裕
調査概要3月23日・24日与那国島にて調査
25日・26日・27日石垣島、竹富島にて調査
 以上の調査をおこなったが、今回の調査の総括として今後に向けての課題を示しておくと、
 (1)竹富島における「ホンジャー」役、国吉家の家筋の究明。
 (2)いつの時代から、いかなる理由にもとづいての役能か。そのいわれ。
 (3)村落共同体内における国吉家の位置。
 (4)祭祀儀礼とのかかわり。
 (5)服飾品、その他の管理、保存、伝承の実態。
 (6)「ホンジャー」の唱える文言の実態究明。
 かくして最終的に「ホンジャー」とは何者か。“まれびと”ホンジャー”の素姓解明に至ると考える。

3、『大学所蔵の諸資料に関する調査研究』班

 青木周平(COE事業推進担当者)
小川直之(COE事業推進担当者)
城崎陽子(COE研究員)
大館真晴(COE奨励研究員)
 この研究課題は、本学図書館内に設置されている武田文庫、河野文庫、文学部付置である折口博士記念古代研究所に所蔵されている諸資料の整理分析を通じて日本における神観念の形成に関する諸資料の整備と公開をはかるもので、さしあたってはこれら資料の確認と分析研究を行うことにした。
 本年度は以下に示す通り、4回の調査を行った。調査過程で判明したことも含めて記しておく。

第1回 平成15年1月23日 13時〜16時 常磐松4号館 図書館収蔵庫3階武田文庫

『國學院大學図書館武田祐吉博士旧蔵善本解題』(1985年12月角川書店刊)を基にした、武田祐吉文庫の収蔵本の調査確認作業を行った。調査の基礎資料としては、『國學院大學図書館武田祐吉博士旧蔵善本解題』を用いた。武田祐吉文庫収蔵本には、すでに武田祐吉文庫所蔵の目録があるが、利便性を考慮して『國學院大學図書館武田祐吉博士旧蔵善本解題』を使用した。但し、その目録には、蔵書書籍の内容についての解説はなく、その確認も含めた調査であった。今回の調査では、『國學院大學図書館武田祐吉博士旧蔵善本解題』「第一部」を中心とした、武田祐吉博士旧蔵本の書名・著者名・番号・出版社・発行年月日、頁数を確認した(49冊分)。その作業にあたっては、武田祐吉博士の書き込みの有無をチェックした。また、神観念の形成に関わる記述についての内容確認も行った。今回は『古事記』に関する武田祐吉博士の講義録(『古事記講話』古事記研究会編 謄写印刷)をはじめ、12件の書き入れを確認することができた。以下調査は同様の手順によって進めることを作業者間で確認した。

第2回 平成15年2月7日 13時〜17時 常磐松4号館 図書館収蔵庫3階武田文庫

第1回の調査に引き続いて、武田祐吉文庫の収蔵本の確認作業を行った。今回の調査では、『國學院大學図書館武田勇吉博士旧蔵善本解題』「第三部」(武田祐吉氏の著作以外のもの)を中心とした(120冊分)。
 第2回の調査では、武田祐吉博士の書き入れを3件程確認できた。第1回、第2回の調査結果によると、武田祐吉博士の書き入れは、武田祐吉博士自身の著作物に多いといえる。この武田祐吉博士の書き込みは、武田祐吉博士の考察過程を知る上で、貴重な資料と成りうる可能性を持つものといえる。これは武田祐吉博士旧蔵本における、武田祐吉博士の著作物の資料的価値を示すものといえよう。

第3回 平成15年2月17日 13時〜16時 常磐松4号館 図書館収蔵庫3階武田文庫

第3回の調査では、第2回の調査に引き続いて、『國學院大學図書館武田祐吉博士旧蔵善本解題』「第三部」(武田祐吉氏の著作以外のもの)を中心とした確認作業を行った(93冊分)。
 第3回の調査では、武田祐吉博士の書き入れを確認することができなかった。第1回〜第3回の調査結果から、武田祐吉博士の書き入れは武田祐吉博士以外の著作物よりも、資料類と武田祐吉博士自身の著作物に多いという傾向を確認できた。次の第四回の調査は、古事記・日本書紀関係の書物と、武田祐吉博士の著作物を中心とする調査であるので、かなりの書き込みの数を発見できるものと思われる。

第4回 平成15年2月21日 13時〜16時 常磐松4号館 図書館収蔵庫3階武田文庫

第4回の予備調査では、第1回〜第3回の調査に引き続いて、武田祐吉文庫の収蔵本の確認作業を行った(89冊分)。
 今回の調査では、大日本古文書・国史大系・六国史を中心とする史料類で25冊の書き入れ本を確認でき、古事記伝・古事記序文講義・日本書紀私鈔などの記紀関係で14冊の書き入れ本を確認することができた。この計39冊にもおよぶ書き入れは、これまでの調査と比較して格段に多い数字といえ、特に記紀関係の書き入れは、神話の部分に多く、武田博士の神観念に対する問題意識を知る上で貴重な資料となるものである。
 今後の調査では、「第三部」(武田祐吉氏の著作以外のもの)の調査を引き続いて行い、武田祐吉博士の書き入れの内容調査も併せて行っていく。
 「神観念」の検討のためには、祝詞関係の蔵書の調査も徹底して行わねばなるまい。武田博士の「神概念」を考える際に「祝詞」が重要になることは、先にあげた『神と神を祭る者との文学』から見ても明らかである。そしてこの「祝詞」の調査は、(1)「神観念」形成に関する比較文化論的調査研究、(2)日本人の「神観念」形成に関する調査研究、とも連携して行わねばなるまい。民族・民俗における「祝詞」(神語)との比較研究が、今後の大きな課題である。



研究会

4、「日本における神観念の形成とその比較文化論的研究」(COE「神観念形成」研究会)の開催

 大学院文学研究科日本文学専攻グループが行っている「日本における神観念の形成とその比較文化論的研究」の総括を行う研究会であり、研究経過や課題、成果などを公開し、討論を行うことで事業推進を行うことを目的としている。
 今年度は下記のとおり2回の研究会を公開で行い、それぞれにおいて参加者からの助言や討論などを踏まえて、研究が進展した。
 研究会の内容については、事後、COE事業のホームページに掲載するとともに、平成15年度当初には研究会の一部を本研究プログラムの研究報告書に収録して公刊していくことを予定している。

(1) 第1回研究会

期日平成14年12月26日 午後2時〜午後5時
会場常磐松1号館 大学院会議室
内容COE事業推進担当者・辰巳正明「トン族の大歌について」
参加者野村純一・辰巳正明・廣田律子・青木周平・城崎陽子・大館真晴ほか10名
概要
 今回は中国西南地域の少数民族を中心とした内容の研究報告がなされた。まず、席上野村からCOEの主旨とその概要が説明され、続いて辰巳によるトン族・ミャオ族のVTRを用いたレクチャーとトン族の「大歌」についての研究報告が行われた。その後のフリートークにおいてはトン族・ミャオ族の習俗や行事に対する質疑応答のみならず、日中学術交流史の位置づけなど今後の活動に示唆的な内容も話し合われた。

(2)第2回研究会

期日平成15年2月14日 午後2時〜午後6時
会場常磐松2号館第1会議室
内容COE研究員・須永 敬「沖縄調査報告―沖縄本島の聖地とその研究に向けて―」
COE事業推進担当者・野村純一「竹富島・種子取祭とまれびと」
参加者野村純一・辰巳正明・青木周平・小川直之・城崎陽子・須永敬・大館真晴・長野隆之・宮家準・廣田律子など48名。
概要
 今回は沖縄研究班の活動報告として須永敬、野村純一両名による発表が行われた。また、報告会終了後、日本文学専攻全体として、平成14年度の報告書作成について打ち合わせが行われた。
 須永の発表は、平成14年12月に行った沖縄本島調査の概要報告であり、沖縄本島における神観念研究の方向性を、(1)沖縄における宗教施設と聖地構成に関するもの、(2)琉球における王権と宗教に関するもの、(3)沖縄の民間祭祀に関するもの、の3つを示しての発表であった。詳細は別冊の研究報告書に掲載されているが、発表後の討論においては、COE事業推進担当者の宮家準教授からも有益な助言があり、今後の研究の展望をひらくことができた。
 野村純一の発表は、竹富島の種子取祭に登場する「ホンジャー」の位置づけを巡るもので、それを「まれびと」と位置づけることの可能性を示した発表であった。野村の発表内容についても別冊の研究報告書に掲載される予定である。

奨励研究員の活動

5、COE奨励研究員活動報告

(1)神話伝承からみる古代日本の神観念の研究

COE奨励研究員・大館真晴

<1>研究課題と目的
「日本における神観念の形成とその比較文化論的研究」という研究教育テーマに向けて、「神話伝承からみる古代日本の神観念の研究」という研究課題を設定し研究活動を行った。以上のような研究課題を設定した目的は、記紀などの上代文献に見られる神話伝承を中国の神話伝承と比較することによって、古代日本の神観念の特質を明らかにしていくことにある。

<2>研究方法と実施状況
 上記の研究課題にむけての方法としては、以下の三つの研究の柱を立て活動を行った。

(1)古代日本の神観念や中国の神観念に関わる資料や研究文献の調査・データベース化

(2) (1)の調査作業の成果を用いた考察

上記(1)の調査作業を行う中で、古代日本人の祖先祭祀に着目し考察をおこなった。また、この考察は、平成14年9月に提出した学位申請論文の一部をCOE奨励研究員の研究活動を通してさらに発展させたものである。上記の考察の内容は、「神武紀四年二月条にみる皇祖天神祭祀の記載意図―「大孝」・「郊祀」という表現を手掛りに―」という題目で、『野州國文學 71号』(平成15年3月発行)に掲載された。

(3)各種研究会への参加

「神話伝承からみる古代日本の神観念の研究」という研究課題の追求のために以下のような研究会に参加した。この研究会で得た、資料や情報は(1)のデータベース化の作業に活用した。
・21世紀COEプログラム「神観念」研究会(第1回「トン族の大歌について」発表者・辰巳正明本学教授)平成14年12月26日 於・國學院大學大學
・21世紀COEプログラム「神観念」研究会(第2回「沖縄調査報告 I」報告者・須永敬COE研究員、「竹富島・種取祭とまれびと」発表者・野村純一本学教授 於・國學院大學


 本年度における研究活動は、日中の神観念に関わる研究文献を調査しデータベース化することが、その中心となった。しかし、研究活動期間が5ヶ月と短かったため充分なデータを収集したとは言い難い点が残る。今後は、日中の比較神話に関わるより多くのデータを集め、そのデータを有効に活用することが課題となってこよう。

(2) 民俗歌謡に見られる神の検証

COE奨励研究員・長野隆之

<1>研究課題と目的 
 本年度における研究活動の課題は「民俗歌謡に見られる神の検証」であった。以下、研究計画とその経過を報告する。

<2>研究方法と実施状況
 文献調査とフィールド調査による資料の収集、ならびにそれら資料のデータベース化を研究の計画として立てた。以下、現在までの作業進行状況を述べる。
(1)資料の収集
 文献調査は、民俗誌・民俗調査報告書と随筆類の調査であり、フィールド調査は現在では稀少となった民俗歌謡の場である祭礼や民俗芸能の場を調査の契機として、聞き書き、並びに秘伝書等の文献調査を行うという計画を立てた。
 文献調査は、國學院大學図書館所蔵の市町村史誌のうち、東北6県分の民俗歌謡関連資料のコピーを済ませ、現在はそれ以前に収集した資料とともにデータベースの作成を完了した。作業は平成15年度以降も継続する予定である。
 フィールド調査については、次の調査を現地で行った。
・平成14年12月から平成15年1月にかけて、札幌市の中心部に位置し、住宅街→商店街→オフィス街と変貌を遂げた地域にある三吉神社での調査を行った。今後この調査を基に、いままで行われてこなかった北海道の民俗歌謡の調査をすすめる予定である。
・2月23日に宮城県仙台市で「仙台市民俗芸能のつどい」を見学した後、2月24・
25日に宮城県唐桑町の七福神舞の調査、および、唐桑町周辺の民俗歌謡を中心とした民俗調査を行った。
・3月1日には青森県八戸市で「民俗芸能の夕べ」を見学の後、2日に八戸市周辺の
民俗歌謡を中心とした民俗調査を行い、同日午後より青森県むつ市「下北地区の郷土芸能発表会」見学の後、3日にむつ市周辺の民俗歌謡を中心とした民俗調査を行った。
(2)資料のデータベース化
これは(1)によって収集した資料がその中心になり、以下のように進めている。
A:民俗歌謡のデータの整理のために、オトナの歌(仕事歌・儀礼歌・遊び歌)、コドモの歌(遊び歌)、コドモ・オトナがうたう歌という分類案、ならびに民俗芸能のデータ整理のために、祠に祀られるカミに対しての芸能・田の神に対しての芸能・外から訪れる神に対しての芸能という視点から分類し、コンピュータによってデータベースを作成している。
B:歌の場が記述された随筆類のデータベース化は現段階で着手したばかりである。
C:これまで収集してきた民俗歌謡の音源は、最終的にはコンピュータによって音源をクリアーにする予定であるが、音源のデジタル化は早急に行われなければならないため、今のところMDへのダビングを進めている。
D:今まで収集した岩手県江刺市の奴踊りの資料や民俗歌謡の覚え書きなど、コピーの状態のいいものをスキャナによって画像のデジタル化を進め、また、同時に鹿踊り・剣舞などの伝授書の翻字も行い、両者ともにコンピュータによって保存している。
以後の課題としては、引き続き民俗誌・民俗調査報告書と、随筆類といった文献調査と資料のデータベース化を行う予定である。

公刊物等

6、COEプログラムによる成果

 「日本における神観念の形成とその比較文化論的研究」における平成14年度の研究成果としては、まず全体を総括する研究報告書をあげることができる。平成14年度末において、別添のようにその原稿はまとまっている。予算の関係で年度内に刊行することはできなかったので、平成15年度当初には印刷所へ入稿、刊行の予定となっている。
 当該プログラム関係者による個別成果を列記すると次のようになる。

(1) 学位の授与

COE奨励研究員・大館真晴はその論文「『日本書紀』の作品論的研究―人物造形のあり方を中心に―」により、平成15年2月13日に國學院大學から博士(文学)の授与が決定した。

(2) 論文の公刊

平成14年度は以下の2編が公刊された。

城崎陽子「万葉の時代―元正即位詔を視点として―」
『國學院雑誌』第103巻第11号所収 平成14年11月15日

大館真晴「神武紀四年二月条にみる皇祖天神祭祀の記載意図―「大孝」・「郊祀」という表現を手掛かりに―」『野州國文學』71号 平成15年3月

 
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