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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
國學院大學・国立極東大学ロシア沿海地方国際共同学術発掘調査の概要 
公開日: 2003/10/3
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1.調査の概要
調査地:ロシア連邦沿海地方ミハイロフスキー地区オシノフカ村およびゴルバトカ村
調査遺跡:オシノフカ遺跡およびゴルバトカ3遺跡
調査期間:2003年8月3日〜8月24日(20泊21日間)
調査参加者(日本側):小林達雄・藤本強・伊藤慎二・坂梨夏代・高橋毅・石崎悠文・加藤元康・橋口豊・薮下詩乃・手塚美穂・中島里佳(以上自主参加者を含む)
調査参加者(ロシア側):A.M.クズネツォフ、A.A.クルピヤンコ、A.B.タバレフ、B.K.スタロスチン、M.A.ヤクポフ、V.グルヂノフ、Yu.クロトワ、E.エルモラエヴァ、M.マタソフ、V.ガピチ、V.フルリェト、A.ゴルゥビャエフ、O.フェドルツェワ、E.バラホンツェフ、A.ヴァシニェフ、I.カバノワ、M.コロヴニク、A.メリェシコ、S.セルゲィエフ、D.ツィガンコフ、N.シャピナ、I.ルシュロベイコ、A.ラヴェトコ、G.コニェフスキー、T.メドフスカヤ、M.ブリュハノフ、A.コジェミャキン、A.クリェシュニェヴァ、B.クラフチェンコ、A.リェノン、E.フェドロフ、N.リパトニコワ、M.ツァポヴィッチ、N.ツィルリニコワ (以上自主参加者を含む)
調査の目的:21世紀COEプログラム「基層文化としての神道・日本文化の研究グループ」の研究課題「東アジアにおける狩猟採集社会の文化と縄文文化研究班」の一環として、おもに縄文時代の日本列島とロシア沿海地方の先史文化を比較研究し、日本の基層文化としての縄文文化の成立背景などを探るために、上記両遺跡等の調査研究を行う。

2.調査対象遺跡とその周辺
調査遺跡の所在するミハイロフスキー地区は、ロシア沿海地方南西内陸部に位置する。中国との国境からも比較的近い一角にあたる。総面積は約2,789km2、総人口は 約41,900人、なだらかな丘陵部にひろがるのどかな農村地帯である。


ロシア8月1
オシノフカ遺跡遠景


同地区は、ハンカ(興凱)湖に注ぐイリスタヤ川水系の上流部にあたり、沿海地方でも有数の遺跡密集地域として知られる。なかでも、オシノフカ遺跡とゴルバトカ3遺跡は、A.P.オクラドニコフやA.M.クズネツォフらにより発見・調査が行われ、ロシア沿海地方を代表する旧石器時代から新石器時代にかけての遺跡として学史上大変著名である。ともに調査面積はごく限られ、調査成果の公表は部分的なものにとどまっていたため、依然として多くの研究課題を今日まで残していた。

3.調査成果
今年度の調査では、オシノフカ遺跡の調査におもに日本側が参加し、ゴルバトカ3遺跡の調査はロシア側が主導して調査を実施した。なお、以下に述べる調査成果の概要は、本格的整理作業に着手していない現時点での暫定的な所見であることを、あらかじめ留意されたい。


ロシア8月−2
オシノフカ遺跡の調査状況


ロシア8月−3
オシノフカ遺跡の調査状況

オシノフカ遺跡の調査では、出土遺物数は必ずしも多くはなかったものの、ロシア沿海地方では非常に希な良好な層位的堆積のもとに、各時期の文化層を確認することができた。現時点での暫定的所見では、上位から順に述べると、中世:渤海?(第2層)、青銅器・鉄器時代(第3層から4層上半部)、新石器時代:ルドナヤ文化(第4層下半部)、旧石器時代後期:細石刃文化(第5層)、旧石器時代:オシノフカ文化?(第6〜7層)となっている。このうち、今回の本学COEプログラム事業との関連でもっとも注目されるのは、新石器時代(第4層下半部)から旧石器時代後期(第5層)にかけてである。新石器時代では、アムール編目文などを特徴とするいわゆるルドナヤ文化に属するある程度器形を推定復元できる土器が数個体出土したほかに、凹基無茎石鏃、特殊な有溝砥石、そして非常に出土例の希な玉製品などが得られた。いずれも、沿海地方南部内陸部では、依然として不足していた情報を補う大変重要な資料として評価されるものと思われる。特に玉製品などは、当該期の精神文化の一端に触れる興味深い資料で、公表されている限りではまだ数遺跡で知られている程度の貴重な遺物でもある。一方、旧石器時代後期に関しては、資料数が充分ではないが、すでに述べた新石器時代の一連の資料に対しておおむね直下にあたる位置から細石刃系石器群を層位的に確認できたことが重要な成果の一つである。今後の様々な分析によっては、沿海地方南部での旧石器時代後期から新石器時代への移行過程解明の一端につながる成果や、日本列島の縄文文化形成過程などを考えるうえで有意義な比較研究が可能になることが考えられる。なお、やはり資料数はごくわずかであるが、第6層から見つかった旧石器時代の石器群は、これまで不明確なままにとどまっている沿海地方最古段階の人類文化を考察する上で一石を投じる貴重な資料であり、今後充分に慎重な検討・分析が必要とされる。

ロシア8月−4
オシノフカ遺跡:ルドナヤ文化土器出土状況


ロシア8月−5
オシノフカ遺跡:新石器時代石鏃出土状況


以上に述べた今回の調査成果を総括すると、出土遺物数はいずれも多くはないものの、沿海地方では他に例を見ないほど良好な層位的堆積のもとに各時期の文化を確認し、しかも出土位置の垂直・平面分布を正確詳細に記録できたことで、今後ロシア沿海地方の考古学的諸文化の編年的関係を探る一つの基準となる情報を提供できるものと考えられる。加えて、ロシア側が主体となって行ったゴルバトカ3遺跡の調査では、層位的には分別不可能なあまり良好ではない混在した出土状況ではあるが、旧石器時代後期の細石刃系石器群の石器素材加工から製品完成にいたる一連の工程をうかがいうる多数の資料や、青銅器時代のこれまでに類例のない土器や石器、中世靺鞨期の土器などが出土しており、オシノフカ遺跡出土資料と今後比較分析することで、さらに多数の成果が得られることが期待される。

本年9月14日から28日かけては、これらの資料の整理・記録・分析等を主目的にウラジオストク市国立極東大学において調査を実施し、今年度中に今回の調査の詳細な研究分析成果をまとめる予定である。

(文責:伊藤慎二、写真撮影:高橋毅・加藤元康)

ロシア8月−6
日ロ共同調査団


 
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