ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」 九州多鈕鏡調査 | |||
|
  |
九州多鈕鏡調査報告
1 調査目的 本調査は、多鈕細文鏡の写真撮影、図面作成、細部観察を行ない、鏡信仰の初現期における製作技術や形態的特徴を抽出する事と、出土地や周辺の遺跡に赴き、調査担当者に教示を受ける事によって、当該地域における歴史的背景と地理的背景、さらには集団関係を抽出する事を目的とする。多鈕鏡とその信仰についての考察は、稲作文化の伝来とも関連し、神道の成立を考証するうえでも重要である。 2 調査日 平成15年8月25日〜平成15年8月30日 3 調査地および調査協力者 (福岡県) 福岡市博物館 宮井善朗氏、小郡市埋蔵文化財調査センター 杉本岳史氏、伊都歴史資料館 角浩行氏、志摩歴史資料館 楢崎直子氏、春日市奴国の丘歴史資料館 境 靖紀氏 元九州歴史資料館副館長 柳田康雄氏 (佐賀県) 佐賀県立博物館 家田淳一氏、佐賀市文化財資料館 西田 巌氏、唐津市末廬館、唐津市古代の森会館、佐賀県立九州陶磁文化館 (長崎県) 田平町立里田原歴史民俗資料館 馬場聖美氏 4 調査実施者
杉山林継(國學院大學教授・事業推進担当者) 加藤里美(國學院大學日本文化研究所兼任講師・COE研究員) 村松洋介(國學院大學大学院博士課程後期) 山添奈苗(國學院大學大学院博士課程後期) 高野晶文(國學院大學大学院博士課程前期) 武田芳雅(國學院大學大学院博士課程前期) 5 調査の概要 調査は資料を対象とした熟覧と観察およびデジタルカメラ、4×5インチカメラ、35mmフィルムによる記録写真撮影と出土遺跡の実地踏査を中心に行った。
6 調査成果 最大の調査成果は、多鈕細文鏡に加えて前漢鏡の細部を観察する事によって製作地・製作時期の異なる2つの鏡の特徴をいくつか抽出することができ、それを比較する事ができたことである。 多鈕細文鏡・前漢鏡の鋳型は土型と考えられており、板状の挽き型の軸棒を中心に回転させる第1行段階での形態にいくつかのタイプを抽出する事ができた。また、鋳造時にできた笵傷(鋳型にできた傷・ヒビ)に湯が流れ込んでできる突出した部分や鋳造後の磨滅状況を実際に観察し、磨滅状況の激しい部位などを確認できた。その他に文様部分の比較や鈕(孔)の形態と各部における調整状況を観察した。磨滅がほとんど確認できない鋳造当初の状態に近い遺物を実見できたことは、日本における青銅器の第一の需要地である九州ならではであり、良質の情報を収集することができたといえる。 また、調査前の計画とは若干異なるが、柳田康雄氏のご配慮により実見困難な資料なども観察でき、計画以上の調査となったことは確実である。 今回の調査では、我が国出土の多鈕細文鏡のうち、7面の調査を行なうことができたが、今後の検討のためにも日本国内で出土している他の5面についても実地に調査・検討を行なう必要があると考えている。柳田康雄氏を始め各研究機関の方々にも、九州の出土遺物についての知識や朝鮮半島との関係についての知識や青銅器研究の視点について数々のご教示をいただき、予想以上の成果を得ることができた。 文責:加藤里美COE研究員・村松洋介(本学大学院博士課程後期) 撮影:高野晶文・武田芳雅(本学大学院博士課程前期) |
  |
このセクションの目次に戻る | 総目次に戻る |