大韓民国江原道地方における考古資料調査


1.調査の概要
調査地:大韓民国江原道江陵市・春川市、ソウル特別市、大田広域市
調査先:江陵大学校、江原文化財研究所、国立春川博物館、国立ソウル大学校、国立文化財研究所、国立中央博物館
調査期間:2005年10月31日〜11月5日(5泊6日)
調査参加者:小林達雄、伊藤慎二、加藤元康、土屋健作、宮下数史、古澤義久、金恩瑩(以上:自主同行参加者を含む)
調査の目的:21世紀COEプログラム・グループ気慮Φ羃歛蝓峇霑慂顕修箸靴討凌斉察ζ本文化の研究」の一環として、縄文文化の成立と展開の背景を東アジア史的観点から探ることを目的に、大韓民国における新石器時代関連資料の調査および研究交流を実施した。昨年度までの國學院大學とロシア国立極東大学との共同調査成果を踏まえ、ロシア沿海地方と日本列島との中間地域にあたる大韓民国江原道地方を中心とする韓(朝鮮)半島東海岸の新石器時代主要資料の観察記録調査を今回行なった。また、訪問先各研究機関において、国際学術研究交流に取り組んだ。

2.調査の経過
10月31日 羽田空港よりソウル金浦空港へ、江陵市へ移動。江陵大学校イ=ソンジュ助教授らと翌日の調査に関して協議。
11月1日 江陵大学校博物館においてチギョンニ遺跡出土資料調査実施、また江陵大学校構内に所在するチピョンニ遺跡発掘調査現場・江陵市関東大学校博物館展示資料を見学。
11月2日 午前:江原文化財研究所所蔵チョダンドン遺跡出土資料調査実施、午後:江陵市より春川市へ移動し国立春川博物館所蔵展示資料見学、調査終了後春川市よりソウル特別市へ移動。
11月3日 ソウル大学校博物館において終日オサンニ遺跡出土資料調査実施。ソウル大学校イム=サンテク研究員らと意見交換ならびに今後の研究協力に関して協議。
11月4日 ソウル特別市から大田広域市へ移動、国立文化財研究所遺跡調査室において終日ムナムニ遺跡およびモイド遺跡出土資料調査実施、大田広域市からソウル特別市へ移動。
11月5日 国立中央博物館所蔵展示資料見学、韓国考古学会大会参加見学、ソウル金浦空港より羽田空港へ、所期の調査課題をすべて終了し帰国。

3.成果の概要
 今回の調査の結果、韓国江原道地方を中心とする東海岸地域の主要な新石器時代遺跡出土資料を詳細に観察できた。これまでも、当該地域の新石器時代に関して、ロシア沿海地方方面や日本の縄文文化との関連性が指摘されていたが、それらの実際の状況を今回直接検討することができた。なかでも、今回の調査の結果、ムナムニ遺跡出土資料中に、ロシア沿海地方の新石器時代前期の土器とまったく同様の資料が含まれることを初めて確認できた。同遺跡からは、縄文文化にみられる玦状耳飾が出土していることも注目される。また、チピョンニ遺跡の発掘現場では、沿岸潟湖に面した低丘陵部に新石器時代遺跡が立地する状況を確かめることができた。こうした遺跡立地は、ロシア沿海地方南西沿岸部の新石器時代遺跡や日本海沿岸部における縄文時代の遺跡の立地傾向と類似する点で重要である。今後、環日本海地域一帯の新石器文化という観点から具体的な比較研究を進めることで、さらに大きな成果が期待できる。
 現在整理分析中の大韓民国における調査成果は、関連する北海道調査成果・ロシア調査成果とあわせて、今年度の調査研究報告としてまとめる予定である。

(監修:小林達雄、文責:伊藤慎二・加藤元康・宮下数史・土屋健作、写真撮影:加藤元康・土屋健作)



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韓国2005−3
韓国2005−4


(写真:上段左・チピョンニ遺跡における調査状況、上段右・ソウル大学校における調査状況、下段左・江陵大学校における調査状況、下段右・調査隊)













日時:  2005/11/30
セクション: グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
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