
神道と日本文化の形成と発展に関するパリ・ロンドン調査
| グループ Ⅱ 神道と日本文化の形成と発展に関する調査研究
1.調査テーマ a)パリ コレージュ・ド・フランスにおけるベルナール・フランク護符コレクション調査 b)イギリス ロンドンにおける神道関連文献調査
2.調査日 a)平成15(2003)年9月18日~26日 b)平成15(2003)年9月15日~17日・26日~28日
3.調査先 a)フランス パリ コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所 b)イギリス ロンドン ケンブリッジ大学図書館
4.調査参加者 a)千々和 到(國學院大學教授 事業推進担当者) 宮家 準(國學院大學教授 事業推進担当者) 太田 直之(COE研究員) b)宮家 準(國學院大學教授、事業推進担当者)
5.調査目的 a) 本調査は、パリのコレージュ・ド・フランスに寄託されているベルナール・フランク護符コレクションの調査・整理を主たる目的としている。 フランク氏はコレージュ・ド・フランスにおいて初代日本学講座教授を勤めた、ヨーロッパにおける日本学の第一人者であった。残念ながら1996年に亡くなったが、没後の著書『日本仏教曼荼羅』(藤原書店・平成14(2002)年)では、護符のイコノロジー的分析によって、日本における民衆信仰の諸相を、鮮やかに浮き上がらせている。 本コレクションは、フランク氏が生前自らの足で日本各地を巡って収集したもので、現在では入手不可能となった物も含まれており、大変貴重な宗教史料群である。さらに本コレクションは、外国人研究者の視点で興味深い護符を選択して収集した、というところに最大のメリットがある。 フランク氏没後、本コレクションはコレージュ・ド・フランスに寄託されたが、諸事情により未整理のままであり、別に調査をしている東京大学史料編纂所の調査グループなどと連絡をとりながら、コレクションの護符を調査、整理を行うこととなった。
b) ケンブリッジ大学図書館所蔵のアシュトンコレクションに、多くの神道関連文献が所蔵されていることは目録によりすでに知られていた。これらの中には日本国内に現存しない写本も多く含まれており、その内容はいまだ紹介されていない。本調査では、今後の本格的史料収集に先行する予備調査として、数点をピックアップしてコレクションの現状を調査する。
6.調査概要 a) フランクコレクションの総点数は概算で約1,000点。この内800点余は、1点毎に台紙に挟んだ状態で保存され、護符に描かれた尊像の種類別に箱に収められている。但しこの種類分けは仮作業の段階であり、完全なものではない。また、護符と共に収集した、護符発行寺社のパンフレットや略縁起の類が少なからぬ量存在しており、これらも護符と一緒に保管されている。 これらの一部には、フランク氏自身や氏没後の整理によって仮番号がつけられているが、大半はナンバリングされておらず、目録も作成されていない。 また、残り200点ほどは仮の分類も行われておらず、未整理分として一括して2箱に収められている。 そこで本調査ではまず1点目録の完成を目指し、①こちらで用意した護符調査カードを使って、全史料のカード取りを行う、②全点のフィルム・デジタル両方の写真撮影を行うこととした。 本調査ではカード350点余の採取を終え、写真に関してはフィルム写真470点余、デジタル写真800点余の撮影を終えた。デジタル写真撮影に関しては、仮分類済みの護符全ての撮影を終了しており、撮影と同時に仮番号も付けていったので、未整理の箱以外の護符には全て仮番号を付けることができた。 まだ調査の途中であるが、ここまでの段階で気付いた本コレクションの特徴を何点かあげてみると、まず第一に驚かされるのは、日本全国の寺社の護符が集められている点である。今後の精査によって地域的な偏差も見えてくるかもしれないが、それにしても、フランク氏の護符採取の足取りは日本全国に及んでいる。 また第二の特徴として、収集された護符は絵札がほとんどを占め、文字による札は全体の非常に少ない割合しか存在しないことがあげられる。これはフランク氏の研究の主眼がイコノロジー的分析にあったことと関係していると思われるが、他にもいくつか存在する海外に於ける護符コレクションと比較して特徴を明らかにする必要があるだろう。 以上が今回の調査における作業部分での成果であるが、この他現地の研究者との交流により、ジュネーブ市立民俗博物館に大規模な護符コレクションが存在するとの情報を得た。また、最終日にはコレージュ・ド・フランスのスタッフとのミニ・シンポジウムを行い、今後の調査方法や、データベースの作成、公開の方法などについて意見交換を行った。
 (和歌山県湯峯・東光寺の護符)
 (奈良県洞川・龍泉寺の牛玉宝印)
b) 「御流神道十六部書」や熊野信仰関連の史料など、日本国内に伝存していない写本30点余を調査。それぞれの詳しい内容については今後の分析となるが、これらの他にも多くの史料が同コレクションに収蔵されていることが確認できた。 以上のような海外流出史料に関しては、今後の再調査、あるいは写真・コピーの購入などによる収集が必要であると思われる。なお、コレージュ・ド・フランスの調査では、松崎碩子氏をはじめとするスタッフの方々にまことにお世話になった。感謝の意を表したい。また、同時に調査に入られた東京大学史料編纂所の方々のご協力にも深く感謝する。
文責:太田 直之(COE研究員)
日時: 2003/10/17 セクション: グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」 この記事のURLは: http://21coe.kokugakuin.ac.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=76
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