昨年末から騒がれていた電力危機が本格化し、ついに大規模な計画停電(Black
Out)、ステージ3の緊急事態の毎日にやっと慣れてきた今日この頃です。それ以上
に深刻なのは、電気代とガス代です(規制緩和、市場連動効果!?)。日々寒さを我
慢して節約に努めても、請求書を見てがっかり、古くてエネルギー効率が悪い高家賃
の借家の転居を検討しているところです。
計画停電とはいっても、予告なしの抜き撃ちですから、信じられない話です。予告
すると、セキュリティーの切れた建物に泥棒が入る危険があるといったような理由な
のですから、あきれてしまいます。
さて、1月から始まったバークレー校の春学期では、「エネルギー経済」と「アグ
ロエコロジー」・「アグロフォレストリー」の授業とゼミに参加しています。
とくに電力危機は、昨年の大統領選挙と同様、まさしく米国での生きた体験的勉強
の機会だと感じています。規制緩和(デレギュレーション)の先頭を切っていたカリ
フォルニア州が体現した大きな社会実験であり、さまざまな角度から分析できる興味
深いテーマです。幸運なことに、環境NGOに積極的に関わり国際環境経済学会
(Ecological Economics)
の会長も務めたことのあるノルガード
( Richard Norgaard )
先生のゼミに参加させてもらうことができました。(当大学でも、主流
派は新古典派のビジネススクールの教授陣で規制緩和論者が多いのですが、反主流派
の筆頭の方です)
米国のエネルギー政策の歴史やさまざまな勢力の動向、新エネルギーから原発まで
さまざまな社会実験の状況・評価について多角的に学べるよい機会になりそうです。
ただし、電力市場の仕組み、エネルギーや電力のインフラ(基盤)の知識、州の関連
法の成立の解読・背景分析、他州や諸外国との比較まで幅広くテーマとしますので、
どこまでついていけるか不安なところです。
<参考>
*ノルガード先生の紹介:
http://socrates.berkeley.edu/~erg/Pages/norgaard.html
*アグロエコロジーのサイト:
http://www.cnr.berkeley.edu/~agroeco3/
<電力危機の真相は?>
すでに報道されているように、電力危機は電力の市場形成と自由競争により価格低
下をねらった規制緩和政策が、途上段階で裏目に出たものとされています。カリフォ
ルニア経済の好況と電力需要の増大(需給の逼迫)、環境規制や目先の利益優先によ
り州内の発電設備投資の後退、送電設備の弱体化、いろいろと理由づけられていま
す。
米国で起きている事態は、当初かかげられた市民のための「デレギュレーション」
(規制緩和)ではなく、実際上は企業のための「アンレギュレーション」でしかな
かったのが実体と言ってよいでしょう。実感から言えば、時間毎に電力価格を入札す
るネット市場の開設、需給バランスの究極の姿を電力市場でも達成しようとした夢の
実現が、まさしく裏をかかれて投機と儲けのカジノと化した、との悪評をぶつけたい
ところです。
2大電力(配電)会社
(PG&E、S.C.E.)
は、卸価格が暴騰する一方で移行期間制約
で消費者価格への転嫁が押さえられていた結果、デフォルト(事実上の倒産)に追い
込まれ、州政府が介入して綱渡り状態が続いています。その一方で、発電会社やエネ
ルギー供給会社、その背後にいるエネルギー関連巨大資本は、巨額の利益を計上する
といった状況です。
現ブッシュ政権に巨額献金を続けてきたエンロン
(Enron:本社、テキサス州)
は、その筆頭にあげられます(中南米やインドなどでも発電事業に取り組み、地元住
民から告発されている有名な多国籍資本)。この件に関しては、スキャンダル的な暴
露情報はまだまだありますが、冷静に多角的に分析していくことが重要ですので、今
回はこの辺にとどめます。詳しいレポートと分析は、後日の宿題とさせていたいただ
きます。
<参考> 日本での記事情報は、あまり参考になるものはありませんが、幾分は多角
的に分析されているものに、「カリフォルニア電力危機を考える」(田中 宇、1/
29)がネット上で見られますので、アドレスを載せておきます。
米国での情報は山のように積み上がっていますが、緑の党から大統領選に対抗馬で
出たラルフ・ネーダーの活動グループの一つ「パブリック・シチズン」の批判レポー
トを紹介しておきましょう(英語)。
*(田中宇の国際ニュース解説):
http://tanakanews.com/
*(パブリック・シチズン):
http://www.citizen.org/cmep/restructuring/utilityderegulation1.html
(*一言付言すれば、日本との安易な対比は禁物でしょう。学ぶべき点は多々あるに
しても、米国の1930年代にちかい統制・独占体制にある日本の状況については別
の視点からの検討が必要です。)