森 『われ逝くもののごとく』は、孔子の「逝クモノ斯クノ如キカ、昼夜ヲ舎カズ」から来ているんです。しかし、ぼくはそう言って人の世を大観できるような偉い人間じゃない。せめてはその川の川面に光が煌々とする、その煌きの一片にでもと、「われ逝くもののごとく」としたんです。
「マンダラの恍惚―仏教と日本文学―」対談者 瀬戸内晴美」(『一即一切、一切即一─『われ逝くものごとく』をめぐって/森敦対談集─』、法蔵館、昭和63年8月、47頁)