すなわち、この身みずからを以って輪廻を悟ることができるといわれ、芭蕉もまた「木綿しめ身に引きかけ、宝冠に頭を包み、強力といふものに導かれて、雲霧山気の中に氷雪を踏んで登ること八里、更に日月行道の雲関に入るかとあやしまれ、息絶え身こごえて、頂上に至れば、日没して月顕る。笹を敷き篠を枕として、臥して明くるを待つ。日出て雲消ゆれば湯殿に下る」と記している。
「義母の声」(『森敦全集』第七巻、406頁)