第17回 細竹「類聚名義抄という書名の読み」 私、細竹は『類聚名義抄』について研究していますが、この書名の読み方には二通りあるようです。この書名の読み方が二通りあることについて、気にされている方がほかにもいらっしゃるようです。 中田祝夫「類聚名義抄使用者のために」(『類聚名義抄 第二巻』風間書房)では「読み方」という項目が立てられています。長くはないので、全文を以下に引用します。 類聚名義抄は、ルイジュミョーギショーと読むのが適切で、「国語学書目解題」 (赤堀又次郎著 明治三十五年刊)などもルイジュのごとくなつているのに、近時これを 無視してルイジューと長音に読むことが多いが、不当であろう。「名」はミョーと呉音で読 むならば、「聚」もジユで呉音と読むのが適切で、「聚」は韻鏡十二転の文字、遇摂濁音 であるから、元来は長呼されず、本字書そのものを披覧しても、 聚 慈庾反……疾句反 禾シユ(細竹注。「シ」の片仮名の右上に「レ」と ある)とある。反切を見ても濁音であり、長音ではない。ちなみに、禾は和音の意、 我が国の伝来久しき音、シの右肩のレは、この字書特有の符号で濁音を示している。 なお耶蘇会版落葉集には聚(ジユ)と音を附している。天文十七年に成つた運歩色葉集に は、「類聚(ルイシユ)」と清音であるが、これは漢音である。
「ルイジュミョーギショー」と、「ルイジューミョーギショー」と二通り読まれることがあるけれども、前者が適切であるとして、その理由を挙げておられます。 ところで、この『類聚名義抄』の書名は、前掲の中田氏のものにも記述があるのですが、「類聚」は源順『倭名類聚抄』に、「名義」は空海『篆隷万象名義』に由来するものと述べられています。『類聚名義抄』を「ルイジュ〜」と読む方は「ワミョウルイジュショー」と、「ルイジュー〜」と読む方は「ワミョウルイジューショー」とそれぞれ読むのでしょうか? 『類聚名義抄』を、「ルイジュ〜」と「ルイジュー〜」という二通りに読むことは、中田氏ご指摘の通り、辞典や書名に付けられたルビなどを見たところそのようになっていて、二通り以外の読み方を見ることはありません。 最後に、書名中「名義」は空海『篆隷万象名義』に由来するものとしました。この『篆隷万象名義』は「テンレーバンショーメーギ」(「メーギ」は漢音)と読まれています。対して『類聚名義抄』の後半部分は「ミョーギ」(呉音)で揺れはなく、書名の一部の出典と読みは異なります。『類聚名義抄』をどう読めばいいのか、気になります。
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