第19回・スノーラビット「地名をめぐって その2」

                                                                              

予告の通り「九十九島」「千島列島」について話を進めますが、先に「千島列島」の方から話してみたいと思います。

前回に続き、今回も地名について気の向くままに追っていきます。

ちしまれっとう【千島列島】

北海道、根室海峡から、ロシア連邦カムチャッカ半島に至る列島群を指します。

元禄年間、松前藩が幕府に提出した『松前郷帳』に「蝦夷の千島」と出てきていて、どうもこの千島列島を指しているらしい。アイヌの人は「チュープカ」と呼び、西洋人は18Cには「クリール諸島」と呼んでいたようです。「日本国の土地」と意識され出した時期が、前回見てきた「千曲川」などの地名からはだいぶ降って、江戸時代になってからのことですから、「千曲川」などとは同じ次元で考える事ができません。

この「千島列島」は比較的新しい地名で、もちろん千丁度島があるわけではなく「千くらい多く列なる島々」という、誇張表現でした。

 

次は「九十九島」。これが思いのほか、厄介。

くじゅうくしま【九十九島】

長崎県、北松浦半島の西岸沿いに散在する島々です。大変美しい所で国立公園にも指定されています。島数は勿論 ( きゅう ) 十九島 ( じゅうきゅうとう ) ではありません。もっとあります。『日本国語大辞典』初版(昭和48年)で調べてみると「170余の小島からなる景勝地」とありました。念のため第二版(平成13年)を見てみると「200余の小島からなり、真珠、はまち養殖がさかん」。あれれ?島数が「約」でも30島も増えているし、景勝地は無視されて、養殖だけが取柄かのように書かれている!何ででしょう?そのまま想像すると恐い・・・。

それは置いといて、この「九十九島」読み方が過去には違ったらしい。「つくもじま」。なるほど「 九十九髪 ( つくもがみ ) 」などで『伊勢物語』に出てきますね。「 百年 ( ももとせ ) に 一とせ足らぬ九十九髪 我を恋ふらし おもかげに見ゆ」。地名としては群馬県松井田町に「 九十九村 ( つくもむら ) 」、石川県珠州市に「 九十九湾 ( つくもわん ) 」があります。

一見「 九十九島 ( くじゅうくしま ) 」は誇張表現。確かにそうなのかも知れません。でも少し考えてみましょう。先ほどの例の「 九十九村 ( つくもむら ) 」、そこは碓氷川の支流、村が九十九あるように感じる地形ではありません。もしかしたら「つくも」という音に、「九十九」という表記をあてた、とも考えられます。そうすると実は、前回出てきた「ちくま」「つかま」または、「筑紫」と表記する「ちくし」「つくし」などと関わってくるようなのです。次回に続けられたら続けたいと思います。

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