第2回・細竹 「『品』は『ヒン』か『しな』か?」
料理番組を見ていたところ、料理の品数を数えるのに「ひん」と「しな」とを使っていて、本来はどちらか一方だけを使うのではないだろうか、同じ使い方をするものが二つあるのはおかしい、と思いました。 例えば、居酒屋の看板に「一品料理」とありますが、まさかそれを「一つの料理」だと理解する人はいないでしょう。「一品」は「逸品」で、「一級品」のことなのか、と考えました。また、時代劇を見ていたところ、風体のよろしくない町人が「このサンピンめ、やっちまえ」などというせりふを聞いたりしましたが、この「サンピン」は「(人間として)三級品」のことなのか、と考えました。 これらの考えから、料理の品数を数えるのには「しな」が適当なのだろう、と人に話したところ「それは…」と黙りこんでしまいました。どうも違うみたいです。 まず、料理の品数の数えかたですが、『日本国語大辞典(初版)』(小学館)によると、 ひん【品】(中略)〔接尾〕料理などの品数を数えるのに用いる。上にくる語によって「ぴん」となる。
と「ひん」の項には料理の品数を数える使い方がありますが、「しな」にはこの助数詞としての使い方はみられません。ですから、料理の品数を数えるには「ひん」(または「ぴん」)が使われるといえます。 また、「一品料理」の「一品」ですが、同辞典によると、 いっぴん【一品】〔名〕 1.一つのしな。ひとしな。(用例略)2.他の類のない、特別にすぐれた品。第一等の品。逸品。絶品。(以下略) とありますが、1.の「一つのしな。ひとしな。」とは考えにくいと思います。これは「一品料理」と看板に書いてあるところに行って、確かめなければならないようです。 また、「サンピン」はというと、同辞典によれば、 さん-ぴん【三一】〔名〕(「ぴん」はポルトガル語pinto(点の意)の変化した語か)1.さいころなどで三の目と一の目が出ること。(用例略)2.「さんぴんざむらい(三一侍)」または「さんぴんやっこ(三一奴)」の略。(用例略)3.「さんぴんながや(三一長屋)」の略。(以下略) これの2.があたると思うので、同辞典「さんぴんざむらい」「さんぴんやっこ」の項を見ると、 さんぴん-ざむらい【三一侍】〔名〕(一年の扶持が三両一分であったところから)江戸時代、身分の低い侍、若党を卑しんでいう語。さんぴん奴。さんぴん野郎。三両侍。さんぴん。(以下略) さんぴん-やっこ【三一奴】〔名〕「さんぴんざむらい(三一侍)」に同じ。(以下略) とあり、「サンピン」はもとはお金の単位をいって、「三級品」というのではないようです。
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