第23回・kiki 「『‐じゃん』の使い方    

    

私は方言研究会員としては恥ずかしいのですが、正直、方言に詳しくありません。

でも、「‐じゃん」はもともと、神奈川、横浜方言の特徴と言われてきたと思います。

幼稚園でも小学校(これは川崎市)でも先生は、

「これはみんなの方言なの。東京の人はジャンなんて言わないんだよ」

と言っていました。

しかも、小学校2年生のとき、母の実家(埼玉県行田市)で全く意識せずに「いいじゃーん!」と言ってすごく笑われたことがあります。

当時20代前半だった若い女性にまで「ジャンなんで焼肉のタレみたい」と笑われて、

「あー、ほんとだ。埼玉でも使わないんだ。でもそしたらどうやって言うんだろう…?

と、幼いながら悩んだことがあります。

大学に入ってたくさん県外の人と話すようになって、それを久しぶりに思い出しました。

勿論、みんなが「‐じゃん」って言わなかったからではありません。

みんな「‐じゃん」って使うから、そのころ私は「自分に方言はない」と思っていたくらいです。

ですが、大学でその「‐じゃん」の新しい用法(もちろん「私の中で」。)に出会いました。初めて聞いたのは東京の人からでした。

と言っても「方言ナシ」の自覚を持った私が都民と自分の言葉の違いに敏感であるはずがなく、この違いにも去年の夏まで全く気がつかなくて、気づいた時には自分もとっくに使うようになっていたのですが、それは

「‐じゃん?」という言い方で、

これを相手が既に知っていることに対しての確認の意味でではなくて、相手への返答や、提案などで使います。

…説明に自信がないので使用例を挙げます。

@Aは私がもともと使っていた意味、BCが大学に入ってから知り、使うようになった意味です。

 

@「今日ドームでアユのライブあるじゃん?バックでね、百瀬が踊るんだって。私自分のことのように自慢してんだけど」「うっそマジで!?そりゃ友達として自慢だよ。私も今日会う人全員に自慢しよー。超広めよーね」

 

A「明日花火大会じゃん?何時にどこに集合にする?」「駅でもいいけどさー、ほんっとみんな関内に溜まってんじゃん?しかもギリギリだと絶対立ち見じゃん?うちら部活終わったらダッシュで行くから横浜で待っててよ。時間あるし歩こうよ。」「横浜から!?遠いなー。でもまぁいっか、いっぱい食べるし、消費、消費!みんなで歩けば近いはず!

 

B「ねー聞いてー。ずっと皆勤だったのに最後の1回、遅刻したのーっ!しかも1!」「いいんじゃん?1回くらい。きっとそれで成績変わることはないと思うよ」

 

C「どうしましょう、小林さん怒らせちゃったかもですー。電話する勇気は無くてメールで謝ったんですけど返信来ないんですよ。なんかまたヘンなことやっちゃたんですかねー私」「平気だよ。だって謝ったんでしょ?だいたいそんなことで怒るほど小林さん子供じゃないし。メールも送ったんだし、由紀子の気持ちはわかってくれるんじゃん?

 

地域差なのか、私が知らなかっただけなのかはわかりませんが、「大学入学前まで一緒に育ち、今は他大」の数人に話したところ彼女たちはみんな私と一緒のようでした。

どちらにしても、私はそれまで、密かに「(自分が)どこの土地に行ってもそんな簡単にことばが変わるわけないじゃん」と思っていたので、こんなに簡単に影響を受けていたとは驚きでした。

ささやかな驚きでしたが、ことばってこうしてひろまるんだなぁと、初めて身をもって感じました。

 

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