第28回・平成14(2002)年6月10日(月)

      細竹 「新聞の漢字表記について」

たしかこの3月に各新聞で漢字表記の方針に改訂が加えられました。これについてNHKのテレビ番組「あすを読む」(329)で取り上げられました。そのなかで小池保NHK解説委員が述べられたところによると、例えば「語い」(語彙)のような漢字かな混じりの表記は、「見た目が悪い」、「パソコン・ワープロで仮名を漢字に変換したときに(「語い」ではなく「語彙」のように常用漢字以外の漢字でも画面上に)でる」ことから、「実状にあわない」というものだったかと思われます。また、振り仮名の使用などについても述べられたように記憶しています。

 

 新聞などの漢字表記について、常用漢字以外の漢字は原則として平仮名を用いることになっていますが、そのために困ったことが起きているようです。高島俊男氏の「大学生らイタされる」(『お言葉ですが…』文春文庫)では、新聞記事の見出しに「大学生ら致される」とあるのを見て、「「大学生ら」とあれば「大学生ら」と読むよね。「致される」は「イタされる」だ。大学生が何をいたされたんですか。」と読む、と一時お考えになったようです(細竹注、新聞は「拉致(ラチ)」と読ませたいようです)

これは、林望氏の「漢字は意地悪()(『日本語へそまがり講義』PHP新書)では、「「語い」だの「落かん」だのと漢字仮名の混じった言葉がたくさん現れて、かえって語意を把握しにくくなった」このことを意味していると言えます。

 

 つまり、「語い」だの、「ら致」だのは日本語を使用するうえでの漢字・平仮名・片仮名を使い分けがある、その使い分けに合わない表記の仕方といえるでしょう。そうでなければ、「語意を把握しにくくな」ることもないでしょう。私、細竹は、「語い」などの表記の仕方は様々な表記が行われている「実状」によってではなく、発信者と受信者との意思の疎通という「実用」面で合わないことによって考えることが必要かと思います。その「実用」面に合わない部分を補うことが併せて必要になるでしょう。

 

ちなみに、明治の頃は「どんなに難しい漢語が出てきても、新聞や雑誌は、みな総振り仮名付きだった」(林氏、同上書)こともあり、それに従って読めばよかったそうです。上記のテレビ番組では、常用漢字以外の漢字を使用するときには振り仮名をつける、などの提案も述べられていました。以上のことは上で紹介した本以外でも、十分話し合われてきたことなのでしょうが、テレビ番組や新聞の記事を見たことで、今回取り上げてみました。

 

 

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