第29回・平成14(2002)年6月17日(月) スノーラビット「地名をめぐって 番外」 前回、予告として「次回に続けられたら続けたいと思います」と記しましたが、準備が間に合いませんでしたので、今回は地名に関わることですけれども「番外」として別の話を進めさせて頂きたいと思います。 私の毎日通学で使っている東武伊勢崎線に「西新井」という駅があります。東京都足立区西新井。真言宗のお寺で空海の開創と伝えられている「西新井大師(五智山遍照院総持寺)」が近所にあります。 西新井在住の知り合いに聞いたことなのですが、列車が西新井の駅に近づくと、車内の電光掲示板(LED表示)に「Soon Nisi−Arai」と表示される列車があるようなのです。これが事実だとするとこの表記はおかしいことになります。この表記では「新井の西」となり「東新井」「南新井」「北新井」「新井」という地名が想定されてしまうわけですけれども、そのような地名はこの辺りにはありません。このお寺には「西新井大師奇談」というのがありまして、概略を述べますと、 天長三年(西暦826年)、全国的な飢饉が発生し、なんとかしたいと諸国行脚に出ていた弘法大師(空海)が、西新井を通った際、休憩中に突然現れた十一面観音のお告げから木像を作り、枯れ井戸に投じ二十一日の間、昼夜にわたって祈願したところ、近隣の疫病がことごとく消え、民衆を救ったとの出来事から始まったと言い伝えられているそうです。そして、この枯れ井戸からこんこんと清水が湧き出てきた事から寺の西側に新しい井戸ができた。という意味で「西新井」と呼ばれるようになったとも言われています。 となっております。この話全体の真偽は別としても、「寺(もしくは何か集落の中心となるもの)の西側に新しい井戸ができて、そしてそのあたり一体の地名となった」と考えることに無理はないと思います。ですからローマ字で表記するなら「Nisiarai」がよいと思います。 話は変わりますが、埼玉県の「―浦和」という駅名は凄い。これでもかというくらい揃っているのです。まず「浦和」、おなじみの東西南北で「東浦和」「西浦和」「南浦和」「北浦和」、そして「中浦和」、苦しまぎれに「武蔵浦和」、番外編として「浦和美園」。既に「浦和市」はなくなり「さいたま市」になってしまっていますが、「浦和」は地域に根付いています。ローマ字で表記する時どうなっているのでしょうか。通勤・通学で通る方、実態を教えて頂けたらと思います。
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