第38回 こけし“うみゃ〜ずらヨ!”
私の母は静岡県沼津市の出身である。母の実家に帰ると、なぜかみんなして沼津弁(と母は言う)で話し出す。とは言っても、生まれも育ちも神奈川県の私は、普段「〜でしょ?」と言うところを、「〜ずら?」とか、「〜だら?」と言ったりする程度なのだが。
この方言、初めて聞く人には大抵笑われる。言語に全く関心の無い友人に「こんな感じで話すんだよ」と真似して話したところ、「何それ!」と大笑いされたこともある。失礼な…。とはいえ、聞き慣れない言葉遣いというのは、人の興味を引くものである。
以前、母の実家から帰る途中の干物屋(か、もしかしたら魚屋だったかもしれない)で、「うみゃ〜ずらヨ!」と書かれた看板を見かけた。おじさんが魚を抱えているちょっとかわいい絵に、大きく書かれた「うみゃ〜ずらヨ!」。意味は、「うまいだろうよ」。もう少し勢いをつけて、「うまいぞ!」という感じか。だが、「うまいぞ!」は、なんだかありがちな気がする。やはり「うみゃ〜ずらヨ!」の方が、地元でとれたおいしい魚、という感じがするし、印象的ではないだろうか。私たちは車の中から見かけたのだが、この看板には家族全員が興味を持ち、「そんなにうまいのか」と笑いながら話していた。単純な我が家の人々、まんまとはめられている。
とはいえ看板に使う言葉は、印象が強いもの勝ち。笑われたって、人を引きつけられれば良いのだ。
HOME