第6回・あつし 「『すごい』について」

 『ZIP ZAP讀賣新聞 2001年7月12日(木曜日)1面』に載っていた、某ジャニーズアイドル。もうすぐ18歳だそうだが、紙面にある彼のコメントに、こんな言葉があった。

 『すごい頑張ってた。』

 『すごく苦手なんです。』

 思わず、「あれ?」と言いたくなる。用言に対して連体形(終止形)が、体言に対して連用形が用いられている。そう、文法が間違っているのだ。

 他には、このような例があった。

 『すごい力になると思う』(会話文末なので、あえて『。』は記さない)

 『すごく楽しい』(同様)

 『すごい力になると思う』に違和感を覚えない人は、『力になる』や『なる』、あるいは『思う』に『すごい』がかかるように思われたからであろう。だが、『すごい』は『力』にかかるとみるべきである。よって、これも間違っている用法だ。

 『すごく楽しい』は、文法的に正しい。これらの事から、彼自身は「すごい」と「すごく」の用法がごちゃ混ぜになっていると推測される。

 「すごい」は、近年では『程度が並々でない。』(広辞苑)の意味で大抵使われ、一語で体言にも用言にも使えて便利だ。「甚だしい」もそうだけれど、あまり聞かない言葉であるし、しかも長い(字数が多い)。「とても」は用言にしか使えない。「大変」、「超」は、例えば「すごい寝癖」という文には使えない。「ひどい」は悪い状況にしか使えない。「非常に」はよく聞くが、「非常な」はあまり聞かない。「大変に」、「大変な」はその逆。

 「すごい」を多用して他の言葉をあまり使わないと、上手く「すごい」と「すごく」を使い分けられなくなるのかもしれない。そこの若いあなた、ちゃんと使い分けて話している?

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