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経済学科のカリキュラムの表【を開く】

 いまから200年ほど前、イギリス北部のグラスゴ−という町に、アダム・スミスという人が住んでいました。スミスはこの町の大学で「道徳哲学」という科目を教えていました。
 この町を取り巻く村々では、それまで自給自足に近い生活をしていた人々が、新しい技術と生産のありかたを土台として、自分たちの作ったものを互いに活発に交換し始め、そのための市場町も出来てきました。ところが、市場社会の発展に伴い人々の価値観が大きく変わり始めたのです。
 スミスは、新しい時代にふさわしい物の考え方を探ろうとして「何が社会の変化をもたらしたのか」、「それは人間の本姓からどのように説明できるだろうか」、と問いました。そして、社会の歴史を振り返るとともに、いま目の前に起こりつつある現象について深く考え、それらを簡単なものから複雑なものへと組み立て、『国富論』という書物を書きました。これが皆さんの学ぼうとする経済学の始まりです。
 スミスの時代と同じように、現在もまた大きな変化が起こっているように見えます。
コンピュ−タや情報通信の発達にともなって、生産・流通・消費のしくみが急激に変化しています。これらについては、いろいろな人々が様々な説明をしていますが、知れば知るほどかえって混乱してしまうでしょう。
 もしアダム・スミスが今の時代に復活したとしたら、200年前と同じように、こう言うのではないでしょうか・・…「今の変化をしっかりと観察しなさい」「古今東西の歴史を深く学びなさい」「物事は論理的・体系的に考えなさい」。経済学科は、このような学びの根本に立ち返るという経済学の伝統を比較的忠実に受け継いだ学科です。
 皆さんがこれから過ごす4年間は、だいたい次のように分けることができるでしょう。
 皆さんが入学すると、外国語・自然科学・文学・歴史など幅広い分野にわたって提供されている「教養総合科目」の中から、自分の興味や関心に沿ったメニュ−を選び、それらを総合的・学際的に学んで行きます。経済学科には後で紹介する「経済理論と歴史」コ−ス・「日本経済と世界」コ−ス・「産業消費情報」コ−スの3つのコ−スがあります。  無事3年生への進級が決まると、これらのコ−スのいずれかを選び、同時に希望者は3・4年生を対象とした「演習T(3年)」・「演習U(4年)」を選ぶことができます。選考よって最終的には、経済学科の場合半数以上の学生がこの演習に参加しています。少人数のメンバ−がテキストや関連文献・資料を読んだり、足を使って調査に出かけたりしながら調べてきたことを発表し、教員や他のメンバ−と討論します。共同論文や卒業レポ−トを課しているところもあります。つまり、学生も教員も手間暇をたっぷりかけています。それだけに成果も大きい。ぜひチャレンジして欲しいと思います。
 こうして4年間である程度系統的・持続的に学んで行くと、経済という現象が分かってきます。新聞を読み、テレビやラジオに耳を傾けていても、断片的な日々のニュ−スの背後にある日本経済や世界経済の動きを察知することができ、先を読む力もついてくるでしょう。このような学びのキャリアを財産として就職活動に向い、世の中に出ていくことができるのです。
 皆さんは、入学すると、まず日本と世界の経済がいまどうなっているかを学びながら、日本経済が直面している諸問題を知ることになります。またそれと並行して、経済学の学習に欠かせない基本的なツール(道具)を学びます。もう一つ大切なツールはコンピュータです。経済学科には、統計的な処理や分析方法、また情報処理の基本とコンピュータによる応用・実践科目が揃えてあります。さて、このような科目を履修して基礎体力をつけたうえで、専門科目を学んでゆくわけです。経済学科では、経済学の理論および経済の歴史、日本経済の現状や国際経済、企業の経営や会計、産業消費情報などを学びます。これについての説明は、以下のコース別紹介を読んでいただきたいと思います。
 経済学はアダム・スミスに始まるといわれています。スミスは、経済学者ではなく、「道徳哲学」という科目を教えていました。スミスが生きていたのは、ちょうど資本主義という新しい時代が幕を開けるときでした。そのなかで、新しい時代にふさわしい「道徳」とは何かを必死に模索するなかで、スミスは、後に経済学と呼ばれる体系を構築したわけです。現在のグローバル化、情報化に導かれた社会変化は、200年前のスミスの時代に匹敵するともいわれています。このような時代には、幅広い教養に支えられた深い専門知識が必要とされます。
 皆さんには、自分の興味や関心にしたがって、広い分野にまたがった科目を系統的に受講し、経済学という奥の深い学問を学んでいただきたいと思います。経済学科は皆さんの勉強を応援します。

表 経済学科のカリキュラム表

「経済理論と歴史」コースの紹介
 このコ−スでは、私たちが生活をしている現在の社会・経済がどのようなしくみによって出来ているのかについて学習します。社会・経済のしくみをしっかり理解するためには、2つのことが必要です。
 ひとつは、私たちの体系的な理解を助けてくれる手段として、「理論」を身につけることです。
 そしてもうひとつは、これまでの社会経済の歩みである「歴史」と、その時代に生きた人々のものの考え方である「思想」を学ぶことです。
 手段としての理論を横糸に、時代背景としての歴史と思想を縦糸にして社会・経済のしくみを立体的に学んでいくこの「経済理論と歴史」コ−スは、現代の社会・経済に対する深い洞察と、その将来に対する展望を切り拓いていく能力を高めることを目標としています。
「日本経済と世界」コースの紹介
 20世紀末の1990年代の日本経済について「失われた10年」という言い方をする人が少なくありません。否応なく進行する経済のグロ−バリゼ−ションの下で、今日の日本経済は、戦後に再出発した様々な分野の制度やシステムの限界が明らかになり、しかも21世紀へ積み残した課題は重くのしかかっています。
 このコ−スは、戦後から現代までの日本経済の変化や直面している課題について、景気変動・産業構造・金融・財政・労働などの分野を切り口として学んで行こうというものです。そしてさらに現代の日本の経済は、グロ−バル経済の波の中でどんな位置を占め、どのような評価を受けているのか。国際経済や各国・地域の経済、西欧のみならずアジア経済についての理解なしに今後の日本経済を語ることはますます不可能になっています。
 このコ−スは文字通り「日本を知り、世界に学ぶ」というコンセプトを目標にして行きます。
「産業消費情報」コースの紹介
 経済活動には、投資・生産・流通・消費という相互に密接に連関しあう部面があります。情報化、グロ−バル化が進展した現在、これらの諸領域はより高度化・複雑化・多様化しています。
 このコ−スは、経済活動の諸領域に共通する情報を切り口として、今日的課題を発見し、解決する能力を養うことを目的としています。とくに「IT(情報技術)革命」の進行は、情報の送り手と受け手との関係に「デジタル・デバイド(情報格差)」や「メディア・リテラシ−(メディアを読み解く能力)」いう言葉に表される新たな問題を惹起しています。産業・企業と消費者や投資家との間に生じる情報格差や情報共有のあり方が問われているのです。
 このコ−スは、「情報」をひとつの切り口として相互の関連を学ぶことにあります。既存の経済学、経営学、会計学を土台として、企業情報・消費社会・投資理論など幅広い知識をもとに、実践的アプロ−チも踏まえて、情報を授受しながら問題解決をはかろうとする21世紀型の新しいコ−スです。以下に示すモデルは系統履修に関わるすべての科目を掲げているわけではありません。皆さんの問題関心に沿って、もっと専門的な、あるいは幅広い履修プログラムを組み立ててみて下さい。

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