東都歳事記 5冊  
  天保9(1838)年刊。神田雉子町名主の家に生まれた国学者・斎藤幸成(月岑
(げっしん))の手による。月岑は、祖父・父から受け継いだ江戸地誌の決定版『江戸名所図会』の編纂事業を完了・刊行させた人物。『東都歳事記』は江戸の年中行事を時系列順に紹介したものであるが、江戸の社寺や名所などを自ら尋ね歩いた成果であることが特筆される。絵は長谷川雪旦・雪堤。
 神社に関する神事については詳細を極め、山王宮(日枝神社)・神田社(神田神社)などの神輿渡御については、その列次や路程までもが克明に記されている。その中には、当時廃絶していた行事等も、当時のものと変わらぬ詳細さで記録しているものもあり、天保の改革以前の江戸の祭礼の歴史的変遷をも追うことのできる貴重な資料である。
 ここでは、当該書の価値を、できるだけ現資料に即したかたちで紹介するため、國學院大學神道資料館所蔵本を用い、神社に関する話題(現在神社となっている一部の仏堂を含む)が記載されている箇所とその翻刻文を、視覚的に理解しやすいかたちで掲載した。翻刻文については、漢字は適宜改めているが、送りがな等はそのまま掲載しているので、参照の際にはご注意いただきたい。また解説欄には、掲載されている主な神社の所在地を紹介しているので、あわせて御参考いただきたい。
 なお、本書については、東洋文庫・ちくま学芸文庫で活字化されている。
 ※この『東都歳事記』デジタル化作業は、國學院大學院友神職会東京支部の寄付金に
   よって実施された。この場を借りて御礼申し上げたい。