第3回公開フォーラムの成果と今後の活動への反映


 平成20年3月2日(日)の午前10時から、國學院大學渋谷キャンパスの120周年記念2号館3階2303教室で、第3回の公開フォーラム「國學院大學の環境総合教育活動の成果と展望」を開催しました。当日の参加者は、約85名で、その内訳は、國學院大學から約55名(教員10名、職員3名、特別研究員1名、大学院生2名、学生約40名)、外部から約30名(研究者約10名、実践活動に携わっている者約5名、市民や卒業生等約15名)でした。新潟県や栃木県など遠方から出席した方もおりました。当日は、第2部構成の報告がなされたのち、第3部では、外部から招いたパネリストから、本学の環境総合教育プログラムについてコメントを頂いた後、フロアーからの質問を受け、また、教育活動に参加した学生に意見を述べてもらったりして、活発にデイスカッションを行しました。その成果及び今後の事業への反映は、次の通りです。

1)実施した公開フォーラムの成果

 平成18年度の現代GPに採択されて、2年間実践してきた本取組のタイトルは、「歴史文化を踏まえた環境総合教育の拠点形成―地域と国際を結ぶフィールド実践による主体形成―」です。本取組は、平成20年3月で終了しますので、本フォーラムでは、2年間にわたる主な実践活動の成果を報告し、今後の展望について話し合いました。参加された方からは、「それぞれのご報告、聴き応えがありました」「活発な意見交換があってとてもよかった」といった感想が寄せられております。本フォーラムの内容は、以下の通りでした。

 第1部では、まず、楊棟梁氏(中国天津市の南開大学日本研究院教授)が、「中国の経済発展と環境問題」について日本語で報告されました。最新のデータを使って、現状の分析をした上で、中国政府は、2007年から環境対策を本格的に推進していることが報告されました。西俣先子(経済学部特別研究員)は、平成19年の3月に実施した「韓国での環境セミナーと交流、現地視察」について報告しました。水原市の京畿大学校におけるセミナーでの成果、また、ゴミ焼却場や電気製品のリサイクルセンターの訪問で学んだことが報告されました。ソウルでは、復元された清渓川を見学しましたが、その復元の意義についても報告されました。最後に、古沢広祐(経済学部教授)が、「タイでのフィールドリサーチと環境総合教育」について報告しました。経済学部でのカリキュラムの中でのフィールドリサーチの位置づけを説明した後に、具体的にタイで学生と共に何を学んでいるかを、報告しました。

 第2部では、根岸茂夫(文学部教授)が「いわき市での歴史学からの調査活動」について報告しました。根岸は、大学院生や学部学生と共に、夏休みに福島県いわき市三和町上三坂を訪れて、田子令直家の古文書を調査しており、その調査結果の要点が報告されました。古文書を解読することで、江戸時代から明治時代にかけての環境の変化を知ることが出来ると報告されました。柿沼秀雄(文学部教授)は、「驚きと気づきとー岩手県紫波町での間伐体験から」を報告しました。柿沼達の指導の下で夏休みに間伐体験をした学生は、その感想を文集として発表しています。柿沼は、その感想文を材料にして、「間伐体験」の世界のコンテキストとそのコンテキストの置換について分析したのです。菅井益郎(経済学部教授)は、「学生たちと不法投棄の現場を歩き続けて」というテーマで報告しました。毎年夏休みにはさまざまな現場を学生と共に訪れて、不法投棄の被害者である住民から話を聞き取っています。そのような現場での学びの意義について報告がなされました。

 第3部では、まず、パネリストの三名に話をしていただきました。澁澤寿一氏(樹木・環境ネットワーク協会理事長)からは、人工林や里山などを維持していくNPO活動の重要性が報告されました。そして、NPO活動の視点から、大学における環境教育への要望が語られました。横山正樹氏(フェリス女学院大学国際交流学部教授)は、平和学のエクスポージャー(現場生活交流体験)として、毎年学生をフィリピンに連れていって学んでいることを紹介されました。その体験を踏まえて、外国の訪問先とのコンタクトのやり方、現地でのコミュニケーションの問題点、現地での安全の確保について問題提起されました。犬井正氏(獨協大学環境共生研究所長・経済学部教授)は、獨協大学で環境共生研究所を設立した経緯とその活動内容について報告されました。また、平成19年3月に学生と共にマレーシアを訪れて、2週間、環境についての調査を実施したので、その体験についても語られました。

 第3部の後半は、パネリストからの問題提起や、フロアーからの質問を受けながら、参加者が意見を交換しました。横山正樹氏から提起された問題点については、古沢広祐が自分の体験を語りました。また、里見実(文学部名誉教授)が、「枠をはずす教育」を提言したので、それをめぐっても議論しました。増田修氏(本学の元非常勤講師)から、外国での現場体験から何を学んできたかという問いかけがなされたので、それに対しては、タイでのフィールドリサーチや韓国での環境セミナーに参加した学生から、外国で具体的にどのような気づきがあったかの発言がありました。楊棟梁氏からは、中国の民衆はまだ環境保全の意識が低いので、何よりも、その意識を高めることが大切だという発言がありました。このような活発な意見の交換が行われて、午後5時40分に散会しました。

2)今後の活動への反映

 パネリストからは、本学の取組は貴重なので、平成20年度以降も、是非協力させていただきたいとのご意見を頂きました。また、どのような形で、環境教育研究活動を継続していくのかとの質問を頂きました。本学の取組の特徴は、全学部の有志教員が自発的に参加していることであり、また、それらの教員が、毎月1回研究会を開いて、自分たちが実践している環境教育活動について意見を交換していることです。そこで、平成20年度以降も、有志教員で結成した環境教育研究プロジェクトチームは存続し、研究会活動も継続していく予定です。活動のためには、資金が必要ですが、平成20年度は、大学の補助金が認められれば、それを使って本年度の取組の主なものを継続することにしています。

 本取組の表題は、「歴史文化を踏まえた環境総合教育の拠点形成」ですが、その「拠点形成」への動きは、どのようになっているのでしょうか。最近では、環境問題の重要性の認識が高まっており、獨協大学や立教大学などのように環境問題を研究・教育するための研究所が設立されるようになっています。本学では、財政上の制限があるために、そのような研究所を設立する計画は、今のところ、存在しませんが、教育開発推進機構の設立の動きがあるので、その機構の中で、環境総合教育の拠点を形成するよう、努めてゆくつもりです。

 第2回目の公開フォーラムの時に、外国の方から指摘された「フォーラムに参加している学生は、環境問題に関心を持っているが、一般の学生に関心を持たせるにはどうしたらよいか」という課題は、今でも重みを持っています。2月に実施した付属高校からの入学生を対象とした授業では、環境問題についてのレポートを課しましたが、ある学生は「このレポートをやった國大学生だけでも、エコに気を付けるようになる様になったらいいと思います」と感想を書いていました。現在は、地球規模で環境問題が深刻化していますので、大学の授業で折に触れて環境問題について話をすれば、この学生のように「気づき」を持つことができるでしょう。國學院大學の教員は、そのような「気づき」を一人でも多くの学生に持ってもらうために、今後も努力していきます。

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