針本教授のメッセージ

エッセイヘ

 『源氏物語』は古典の言葉の宝庫である。しかし、すべての言葉が十全に認知されているわけではない。たとえば、「桐壺」巻の「野分たちてにはかに肌寒き頃」の「たちて」について、一条兼良は「たちは達也 野分のやうなる風なり立にはあらす」(『花鳥余情』)と、「野分だつ」説を述べ、萩原廣道は「たをにごりよみて野分めきてとやうに説る注はひがごとなり さてはふく風などの詞なくては聞こえぬことなり」(『源氏物語評釈』)と、「野分立ちて」を主張する。 

 学生のみなさんとともに考えていきたい