(平成18年度入学生〜)
本講義は、これから神道を学び研究する学生に対して、神道を学ぶための導入となる基礎的な科目である。神道は仏教やキリスト教のような定まった教典・教義を持たないため、その基本を理解することは難しい。それゆえ、神道の歴史全体を理解するのは容易ではない。ここでは神道の全体像を捉えるために、以下のような四つを柱として考えていく。すなわち祭りの伝統、神社史、神道古典、神道思想史である。これら四つを、神道を考えるための素材として、それぞれ概観し、もっとも重要なポイントを抽出して紹介する。最終的には学生が「神道とはなにか」を理解し、言葉化することを目標とする。
本講義は、さまざまな宗教現象を、経験的事実の範囲内で客観的に把握し考察することを目的としている。宗教現象は、ネアンデルタールやクロマニヨンなど人類の草創期から発生し、その後も人種、地域、社会制度、言語やイデオロギーの相異に拘わらず存続し続けてきた。そうした宗教現象に関する事実を広く集め、比較し、宗教現象の本質、起源、目的を解明することを本講義は目的としている。授業は講義形態で行うが、映像資料をはじめとしたAV機器を活用し、感想や考察としてのレポートの提出を求める。具体的なテーマは、諸宗教の起源、宗教の定義をめぐる諸問題、宗教に見る死生観等である。
本演習は、神道に関する基本的な文献の読解力を養うとともに、日本文化の基礎となる日本語の読み書き能力を養うことを第一義としたい。その上で、各担当教員の専門領域に応じて、神道古典・祭祀・神道史・神道思想・神社史・日本文化・比較文化・比較宗教・個別宗教などに関する基本的な文献を取上げ、その要約を学生に課し、主要な概念に関する共通認識を習得させ、さらに学生間の積極的な意見交換を促したい。このように、日本語の読み書き能力の養成と共に、神道文化・宗教文化に関する基礎知識を学ばせる科目として位置づけている。
古代から中世に至るまでの神道史に関する様々な事象についての基礎を学ぶ。神道がどのような由来・由緒に基づいて歴史と伝統を重視してきたのか、神道の歴史を輪切りにすることで、各時代の特色を考えてみることにしたい。神道史のなかで、その本質を理解するためには、古代の神道史研究は重要である。古代国家の祭祀儀礼、平安期の神社祭祀や八幡信仰など、更には、神仏関係について本地垂迹説等にも言及する。また、中世の神道家の展開、中世村落における神々の世界など、神道史に関わる問題点を論じていく。
国学とは、江戸時代の中期以降勃興した、文献考証を通してわが国古来の歴史・文学・言語・信仰等を考究し、闡明しようとした学問であり、現在の我々の神道・神社の認識にも強い影響を与えている。講義内容としては、まずは、契沖から始まり荷田春満・賀茂真淵・本居宣長・平田篤胤のいわゆる「国学の四大人」の伝記やその著述を紹介し、国学的な発展の過程を概述する。次に、明治以降の国学者たちの活動や著作や、「新国学」運動などにも言及し、「国学」とはどのような学問であるのかを受講生と共に考えてゆく。
本講義は、神道思想の歴史的展開を概観する。まず「古事記」「日本書紀」等に見られる神観念を抽出し、古代の思想を検討する。次に、奈良時代から次第に展開する神仏習合の諸相について、個々の事例を取り上げて紹介してゆく。ついで神仏習合思想を検討したのち、これに外来的要素を加味して形成された「伊勢神道」「吉田神道」における神道の意義づけ、神観念などを見ることによって、中世における代表的な神道思想についての理解を深める。さらに近世以降の橘家神道・古学神道 (国学) における神道思想の新たな自覚過程をたどり、神道思想の通史的な概要を把握する。
本講義は、世界の諸宗教に関する入門的な知識や情報を提供し考察することを目的としている。日本では「宗教」という言葉自体が誤解を招きやすい曖昧な言葉として存在する。「宗教団体」のメンバーにでもならないかぎり、自分は「宗教」とは無関係である、などと一般的に理解されてきた。「宗教」という基礎概念を見直しながら、宗教を一つの文化形態として、世界各国の文化の基礎にある宗教を探っていきたいと思っている。授業の構成は、レクチャー、定期的リーディング、ディスカッションからなっている。
本講義は、日本文化の歴史的展開と諸相を、仏教、儒教、キリスト教といった宗教文化を中心に据えながら考察することを目的としている。仏教の日本への定着過程と土着化、鎌倉新仏教の登場、神仏習合、日本的キリスト教の特徴、儒教の日本人の生活文化、日本文化の特殊性と普遍性など、幅広いテーマを扱う。また、特定の宗教宗派への言及にとどまらず、祭祀を中心とする年中行事や、人生の節目となる通過儀礼といった日本人の宗教生活・儀礼文化全般をも考察の対象とする。授業は講義形式とするが、特定の課題に関するレポートや、映像資料を見ての感想文等の提出を求める。
文献のない時代、あるいは限定された量しか文献のない時代を考察しようとすると、どうしても考古資料に頼らざるをえなくなる。本講義の目的は、この考古学資料を正確に把握できるようにし、文献史料、民俗学、神道学の成果と共に、日本の古代信仰を解明することである。授業形態は、講義を中心に行う。年度ごとに主題を設ける。主題は、時代別、地域別、遺跡形態別、主要遺物別等を組み合わせて設定する。時代としては弥生時代より飛鳥時代を中心に考え、葬送儀礼・墳丘構築の思想など時間による変化を見る。考古資料から見た死後観の相違など、あるいは鏡剣など呪術性に富む資料を扱っていく。
本講義は、宗教と社会の関係について、基礎的な学説を学ぶとともに、具体的な事例についての知識を深めていくことを目的とする。宗教社会学の学説についてはウェーバー、デュルケームといった古典的な学説の他、最近注目されている国内外の学説について、重点的に紹介する。具体的事例選択に当たっては、受講者の関心を聞きながら決めていく。授業は講義形態を基本とするが、受講者に発表ないしコメントの機会をもうける。教団調査、アンケート調査、あるいは地域調査といった実態調査の機会をもうけ、宗教と社会の関わりについて体験する。全体を通じて、双方向の講義となることを目指す。
比較文化学とは、複数の社会における文化的特性を比較・対照することによって、個々の文化の特殊性や普遍性を明らかにしようとする学問である。本講義では、複数の文化間の類似と差異を論じることを目的としたい。精神文化の中核としての宗教を、体系的に比較考察することには大きな意義が存在するのである。授業は講義形態で行う。随時レポートを課するなどして、学生の意欲を喚起しながら講義を進める。具体的なテーマとしては、神話の比較考察、世界の諸文化・諸宗教に見られる儀礼文化の考察、天国や地獄などのキーワードを念頭に置いた世界観の比較考察等である。
本講義は、キリスト教文化の特質を考えるために、宗教としてのキリスト教そのものの特徴を概観するとともに、アングロサクソンの文化圏におけるキリスト教に焦点を当てながら、この文化圏におけるキリスト教と社会の関係において検討することを目的としている。授業は講義形式で行う。必要に応じて、質問を受け付けたりディスカッションを行う。文明の対立を宗教文化圏の対立として考える文明論が流行している。確かに、欧米の文化圏の中核にはキリスト教があり、それが人々の価値観や生活態度に大きな影響を与えてきたことは事実であろう。こうした点を理解することはきわめて重要である。
本講義は、日本だけではなく東アジア、東南アジア、南アジア、欧米などの地域における仏教の様々な様相と、その社会的背景や文化的背景との関わりを幅広く理解することを目的としている。取り上げる内容は、仏教の歴史や教理の変遷だけではなく、各地域における社会・政治・経済と仏教の関係、仏教と仏教以外の宗教や民間信仰との関係、生活習慣と仏教の関係など多岐にわたる。授業は講義形式で行う。講義全体を通じて、仏教のみならず宗教のもっている多様性・可能性・問題性を考察する幅広い視野を培っていただきたい。また授業中には、関連したビデオなどの上映も予定している。
武道はマーシャル・アートと英訳されていることでもわかるように、外国では単なる戦いの技術とのみとらえられていて、より重要な精神文化の側面が知られていない。武道修練の目的は、術を磨きながら精神を養っていくことで、その根底には神道の禊祓の思想がある。伝統文化としての武道とは何かを、神道と武道との関連で学んでいく。授業形態としては、教室での講義のhかに、神棚のある武道場など神道文化環境の中での実習も行い、護身術を含めた武道の心得を学ぶ。
本講義は、中東地域の事例を中心に紹介し、社会人類学や比較宗教学的な観点から、イスラームの基礎的教義ならびに礼拝、巡礼、断食などの儀礼、イスラーム世界の広がりとその多様性、ムスリムの日常生活のあり方を通して、彼らの思想や価値観を考えることを目的としている。最初にアラブ・中東・イスラームの相違にふれ、日本の神観念などとの比較を通してイスラームの基本教義を説き、具体例を通してムスリムの宗教的生活の実態を紹介し、最後に近代のイスラーム世界に生じたさまざまな変動を、イスラーム復興、イスラーム主義などの用語を使って説明する。講義形式を考えているが、受講者数に応じてゼミ形式の可能性も検討する。
本講義は、日本文化・宗教の背景となる東アジアの文化と社会について、総合的に解説することを目的としている。講義の中心は中国の思想と宗教に関するものである。具体的には、東アジア全般の民族・言語・歴史・景観を俯瞰した後、中国文化の基本的な世界観を構成する「天」の信仰・祖先崇拝・土地神祭祀について古代に遡って考察する。次いで古代の世界観の中から生成した諸々の思想運動、特に儒家思想の特徴について概説し、更にそれを踏まえて中国社会において道教、仏教、民間信仰が有していた基本的な性格を考えたい。話は時間軸に沿ったものではなく、中国文化の特徴を把握するのに適当なトピックごとの講義になる。
西洋と東洋 (日本) の自然観の違いは、人間と自然 (環境) を対比するものとして捉えるか、人間も自然の一部として捉えるかにあり、それによって異なった文化と社会が形成された。本講義では、自然と共に生き、自然からの搾取と飢餓の繰り返しの中から循環型社会を築いた、わが国の先人たちの精神文化と知恵、その背景にある生活と信仰を探る。また、マクロレベルから見た地球環境の現状を、エネルギー、時間、窒素、炭素など、それぞれの視点から学び、21世紀にどの様な持続可能な社会を作り得るか、その中で東洋的な自然観と神道の果たすべき役割を議論していく。
本講義では、現代日本に特徴的な宗教性を、近年とくに進展が著しい日常的な生活環境の情報化との関係のなかでとらえ、〈癒し〉や〈自分探し〉といったキーワードでくくられる現象を視聴覚教材をまじえて紹介・整理することを目的としている。そしてこれらの現象について、人間と機械とのインターフェイスにおける意思決定、情報機器を媒介とする人間関係の形成、大衆消費文化・社会のコンテクストなどの分析視角を提供するが、そのさい学内LAN・インターネットを活用することにより反省的に考察を深める。身近な現象への観察力、研究文献の読解力、基礎的な社会統計の分析力を養う。
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